第7話

 わたしたちは犯人と思われる狼男を追うことにし、集会を後にした。はじめの一歩としてアナベルの足跡を辿る。


「なにか知らないか。妻だったんだろう」

「わたしは嫌われていたんだ。知るわけないだろう」

「そうか」


 それから伯爵は取り繕うように今日は月が綺麗だとか風が涼しいだとかを言い募った。わたしが嫌われていることなんて周知の事実で誰も気にしないのに。


 とりあえずアナベルの部屋に行ってなにか手がかりを探ろうと思い立った時、それは起こった。


カツン。

カツンカツン。

 小石が転がるような音。


振り向くとそこには酔っ払いが3人たむろしていた。そしてこちらに……伯爵に憎悪の視線を向けていた。


「化け物!」

「化け物は出て行け!」


 伯爵は何も言わず、ただ前を向いて歩いている。


「貴様ら誰に向かってそんな口を!」


 わたしが止めに入ろうとすると。


「いいんだ」


 伯爵は手で制した。


「ふん」


 わたしは気に入らなかったが伯爵がいいならと隣を歩いた。


「嫌われ者同士だな」


 伯爵はそんな軽口を言った。わたしは今日で一番愉快な気持ちになった。


 その日は結局何も見つからず、夜明け前に伯爵は帰って行った。わたしはメイドに起こさないよう言いつけて眠りについた。

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