悪役になるまでの物語

@effort0099

第1話 絶縁

「いくら王宮に悪く扱われていたとしても市民を犠牲にする必要はないだろ!」

弱った魔王を前にして口論が始まっていた。

「やっとここまで来たんだ、少数の人々を犠牲にして魔王を倒すことができるんだ、何故俺たちと争うんだ、シアン!」

勇者たちは今、魔王を拳1つで倒すことができるが、代わりに王宮がある街「メートル」が魔王の呪いによって破壊されてしまうという状況になっていた。

「別の方法を探すという選択肢はないのか!?」

「チッ」

 首に一瞬だけとてつもない痛みが走った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「っ!?気絶してた?」

「気づいたか」

 目が覚めるとそこには我々がよく会話し、遊び、喧嘩し、思い出のある木ととてつもなく大きい穴があった。

「まさか、お前ら!」

「こうするしか無かった。他に選択肢は無かったんだ。」

穴は1つの街だけでなく、自分の故郷も無くなっていた。


 絶望した。


 それからはその仲間とは一度も顔を合わせていない。噂によれば、その穴は魔王が最後の悪あがきで破壊し、勇者たちはその隙を狙い魔王を倒したということになっているらしい。そして今では第2の都市、「グラム」で勇者の歴史を語っているらしいが私の名前は無いそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る