悪役になるまでの物語

山端 エマ

第1話 絶縁

「いくら王宮に悪く扱われていたとしても市民を犠牲にする必要はないだろ!」

弱った魔王を前にして口論が始まっていた。

「やっとここまで来たんだ、少数の人々を犠牲にして魔王を倒すことができるんだ、何故俺たちと争うんだ、シアン!」

勇者たちは今、魔王を拳1つで倒すことができるが、代わりに王宮がある街「メートル」が魔王の呪いによって破壊されてしまうという状況になっていた。

「別の方法を探すという選択肢はないのか!?」

「チッ」

 首に一瞬だけとてつもない痛みが走った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「っ!?気絶してた?」

「気づいたか」

 目が覚めるとそこには我々がよく会話し、遊び、喧嘩し、思い出のある木ととてつもなく大きい穴があった。

「まさか、お前ら!」

「こうするしか無かった。他に選択肢は無かったんだ。」

穴は1つの街だけでなく、自分の故郷も無くなっていた。


 絶望した。


 それからはその仲間とは一度も顔を合わせていない。噂によれば、その穴は魔王が最後の悪あがきで破壊し、勇者たちはその隙を狙い魔王を倒したということになっているらしい。そして今では第2の都市、「グラム」で勇者の歴史を語っているらしいが私の名前は無いそうだ。

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