大学生になった。元カノに出会った。

狂咲 世界

元カノに出会った

プロローグ

中学生のころ、俺には付き合っていた彼女がいた。

同じ学校。同じ学年。そして同じクラス。偶然隣の席になった女の子と、俺は恋をした。


その女の子は、外見が特段可愛いわけでも、モテているわけでもなかった。

ただ、彼女の柔らかな温かさに、俺は惹かれたのだ。

一方の彼女が俺のどこを気に入ったのかは分からない。今となっては、確かめる手段もない。


奇跡とも言える出会いのおかげで、俺の中学生時代はとても楽しい、まさに「青春」と言える毎日だった。


しかし、高校が別になってしまったのが運のつきだった。

新生活の忙しさの中で、互いの優先度が少しずつ目減りしていく。


連絡の回数が一日に一回、二日に一回、一週間に一回、一ヶ月に一回……と徐々に減っていった。

そして、いつのまにか関係そのものが自然消滅してしまった。


まあ、よくある話といえばよくある話だ。


いくらインターネットが発達し、いつでもどこでも誰とでも繋がれる社会になったとはいえ、人間関係はそんな容易に繋ぎ止めておけるものではないらしい。

たとえ、人間関係の中で最も強い、恋人関係であったとしてもだ。


時折胸にぽっかりとあいた何かを探しつつも、俺は高校生活をそれなりに楽しんだ。

何人か一生ものと胸を張れる友人もできたし、定期的にあるイベントも全力で楽しんだ。


そんな俺は大学進学を期に、地元を出て東京へと出てきていた。


がつくほどではないが、俺の地元は田舎であり、俺が学びたいような学部……いわゆるコンピューターサイエンスを専門とする学部はなかったのだ。


必死で勉強した甲斐もあり、見事志望校へ合格した俺は、あっという間に1年生を消化して、2年生へと進級していた。


単位も順調に取得していて、特に卒業に困ることはない。

そして学部の特性上、ある程度の成績を持っていれば案外就職は簡単にできる。


そんな大学生としては恵まれた条件のもと、俺は学生生活をダラダラと過ごしていた。


そんなある日。コマのない時間にお昼を食べ、時間を潰す場所を探して大学の構内を彷徨っているところで、俺は一人のどこか見覚えのある女性を発見した。


色素の薄い髪。運動をやっていたのか、かなり引き締まった体つき。

彼女は、ふと何かに気がついたかのように顔をあげる。


丸顔に垂れ目といった、優しい印象を与える顔……中学生のころ、毎日のように見ていた顔。

色素の薄い長髪を、後ろに流している。


「ひ……久しぶり」

「あ、ああ。久しぶり」


俺は、元カノと再開した。

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