ピアノ下ピア子

@sasetu

第1話

9月もあと残り一週間、やっと暑さも収まった。ユイはピアノレッスンの帰りだ。秋の発表会に向けて、猛練習、猛特訓。でも、いつも同じところで引っかかる。練習が足りないのよと発表会のドレスを選びながら母親がつぶやく。もう4年生だし、ピンクや黄色のパステルカラーは止めてほしいとスマホを見ている背中につぶやき返す。昨日のことだ。ユイは派手派手な歳に合わないドレスで登場した挙げ句、引っかかり止まってしまうメロディーを想像して息が苦しくなる。


先生の家のグランドピアノはいつもピカピカで、そこに座ることさえ緊張する。口角を上げて優しい物言いで教えてくれるのだが、流石に毎回同じミスをするユイに小さく小さくため息をついた。


ユイは思い出して深く深くため息をつく。

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