第53話 平岩砂子 2
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「鮎川くん、だっけ?」と織豊竜馬が聴く。「鮎川くん、賀藤がきみを探っていたのはこの同盟に加入するかどうかだったんだよ」
「こんなふうに取り囲まれたら、とても勧誘とは思えないな」
洋二は声を未だ張れていた。
とても人間が走るような動作でなく、超高速のベルトコンベアに乗っているように動き、巨大な爪が洋二とハヤテに迫る。
振り上げられる巨大な爪!
豊島がその装備からライフルと呼ばれるように、忍者が使う鉤爪を10倍も巨大にしたような鉄の歯を5枚づつ両手に装備した伊都のコードネームはクロー、である。
「今の動き、ひょっとして」と発するハヤテのブレザーは伊都のクローで引き裂かれている。
「ジャンプや俊足じゃない、飛んだ、のか!?」とこちらも学生服を破かれた洋二。
「おい!竜馬さんよー!コイツら上着の下にチャカ隠してやがるぜー!オレらも勧誘じゃなければ、コイツらも入会と和解なんて考えてない証拠だ!」
伊都が「だ」と云っている最中に、ハヤテはショットガンを、洋二はサブマシンガンを相手のエンマコンマたちに乱射した。
音矢が同盟参加前に集めたコレクションで、織豊竜馬が以前ショットガンで治癒能力が効かないケガを負わせたので、効力があると思い、二人に託したのだ。
そして、スケートボードも。
だが、一発も当たらなかった。
何故なら、6体のエンマコンマは空を飛んで急場を逃れたからだ。
追加オプションや掴んで使う武器と違い、12体のエンマコンマを実験体にして、一体型に改造したエンマコンマは全員、カトラ・アーマーを標準装備し、背中のウィング、腰部の排煙ファン、そしてエンマコンマのボディ自体をエンジンとして飛べるのだ。
そして、マインレイヤーのコードネームを持つ大沢康安が頭上から機雷を、ライフル=豊島が洋二とハヤテを狙う。
ハヤテが、飛ぶことを予期できたのは、豊島が着陸したのを見たからだ。
全員飛ぶのもギリギリ想定内だった。
そこで白燐弾を撃ち込み、その閃光と白煙で、スキを作り、背中に背負ったスケードボードで洋二と共に、戦場を変える。
煙を抜けた時に早くも豊島のライフル・アーマーによる弾丸が洋二とハヤテが並んで走る間の地面に着弾した。
エンマコンマの索敵システムならば、発射されれば、その弾道を感知はできるが、それは感知してから当然かわさねばならず、それが複数になればなる程、回避は厄介となる。
その厄介は弾丸ではなく、ビームだった。
―まさか!レーザー・ビーム・キャノンは高出力で、とてもアタッチメントには向かず、巨大な搭乗式のユニットになったんだぞ!小型化と標準装備に成功したか!?
ハヤテの推理は当たっていた。
ビームにえぐられた地面を見ると、レーザー・ビーム・キャノン・ユニット程ではなく、一体型のレーザー・ビーム・キャノン・アーマーは出力を落とすことで標準装備を実現化した。
撃つは今、都庁のテラスから二人を狙うデイヴィドソン・エプスタイン。
豊島は第一生命ビルから放っている。
位置は発射角度から洋二とハヤテにも判っているが、多勢に追われる身ではムダな情報だ。
スケードボードは市販のものである。
だからエンマコンマの運動量には耐えきれない。
その上、マインレイヤーの機雷が地雷の役目をして地面に転がる。
二人とも潔くスケードボードを捨て、その場を離れるためのジャンプする。
これは正解だった。
大澤は自分の意思で撒いた機雷を爆発できる。
目視できた瞬間に着火する予定だったが、その前に洋二とハヤテは二手に分かれた。
「この野郎!」
大澤は空中に飛び上がり、近い方のターゲットに機雷の雨を降らす予定だったが、その腰部のマインレイヤーを音矢が乗るレーザー・ビーム・キャノン・ユニットの一条の閃光が貫いた。
「ほえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!」
爆薬の宝庫であるその部分をビームで打ち抜かれたということは下半身が粉微塵になったということだ。
そもそも一人乗りのレーザー・ビーム・キャノン・ユニットであるが、ムリすりゃ、三人乗れる。
音矢は二人を乗せると直ぐにユニット内にあるレーザー・カッター・アタッチメントを渡した。
「斥侯を一体倒しただけだ。豊島とエプスタイン、狙撃手は二人いる!」と音矢。
「ああ、伊都は巨大な鉤爪、竜馬は性格から考えてヤッパだろう。山内と胡桃沢は何を使うか?」とハヤテ。
「ちょっと待て!ありゃ、何だ!?敵は6人だったハズ!?」と洋二。
体長150㎝程の物体、有機体めくがセラミックやプラスチックで構成されている。
左肩にレーザー・ビーム・アーマー、右腕にレーザー・カッター・アーマーを装備。
それが8体も!
レーザー・ビームを一斉発射!
音矢はユニットをなんとか操縦し、ユニットのレーザー・ビーム・キャノンを8体に放つ!
―ちょこまかと動きやがる!
これは山内群馬のボディの脳内に取り付けられたコントロール・デバイスで動く〈キット〉という装備でいっぺんに8体は楽勝で操ることが可能。
洋二も以前はエンマコンマの掌握力で市販のドローンを使っていたが、一体がエンマコンマとさほど変わらないキットと比べたら、象と蟻である。
ユニットの高度を下げて音矢が叫ぶ。「コイツらはオレが引きつける!散れ!」
洋二は右へ!ハヤテは左へ!それぞれ跳ぶ!
そして洋二の落下地点には既にクローの伊都とドリルの胡桃沢が待ち構えているのだ。
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