『ファンレター』

やましん(テンパー)

『ファンレター』 上 『全3話』


 何かの拍子に、右足を骨折して入院した。年なんか取りたくないものである。


 お金もないし、4人部屋に収まっていた。なかなか、ユニークな人達ばかりである。


 ある日、不可思議なファンレターが届いた。


 どうやって、ぼくの病院が分かったのかは、さっぱり分からない。


 しごにち、ほっておいたら、なんと、ある放送局から、苦情の電話が掛かったてきた。


 『はいはい、やますんです。』


 『ああ。やますんさん。こちら、タイナミ放送の、ハッピープレイズエブリデイという番組です。ご存知?』


 『えーと。聴いたことありますかね。たぶん。』


 『あそ。ファンレター読みましたか?』


 『いやあ。ぼくは、入院中でして、すみません、まだでした。』


 『あそう。あれは、あなたが、わが放送局のサイトに書いたミニ小説に対する、とあるファンからの熱烈なファンレターです。はやく、読んでください。返事がこない、と、かなり、いらいらなさっていて。あなた、ほかに、ファンからの手紙がきますか?』


 『いえ、唯一無二でした。』


 『なら、早く読みなさいまし。期限はあと2時間です。ガチゃ。』


 『はあ〰️〰️〰️、ファンレターとは、厳しいなあ。』


 そこで、その、分厚いレターを取り出した。


 足は痛いし、気分は悪いし、最悪の状態である。


 封筒を開いてみて、またまた、びっくりしたのである。


 確かに日本語らしい。


 しかし、どうにも、読めないのである。


 文字であることは間違いないが、ほとんど、宇宙語みたいに見える。うねうねした文字が、空中に浮き上がってくるみたいだ。


 なんとなく、ラブレターに近いような雰囲気はあるらしい。


 70歳近くになって、初めてもらった、ラブレターというわけか。


 『……おひなし、よみますたし。いたく、勘当したくおもひ、してましすが、このようなすばらしいおはすは、かつてに、朝が尾が、二羽に、最低いらいにおもうのでし。なんといふ、おそろしい、おひたなしです。ぜひ、あなたさまにおめにかかりたくべく、血の底から佐下部のようなものにござりましすがらして、お返座。おひたしにして、小稲が、鵜もの、なので、あらましす。………小林某 かしこ』


 『ううん。ビミョーだなあ。たしかに、ぼくが書いたおはなしに、似ているような気もするし。て、どう、お返事をいたしますか。さてさて?🌠』


 それはもう、ほっておいたのは、非常に不味かったと思う。


 人生における、唯一無二にして、人跡未踏のファンレターなのだから。


 痛み止め薬は、これまた、ビミョーに、効いているようではある。文字を読めないわけではない。


 ただし、なんで、歩いていただけで、ふいに骨折したのかも分からないから、やや、イライラはしているが。


 医師は、おそらくは、体重を支えきれなかったのだろう、と言うのである。


 今は、まあ、いささか、痒い気がする位である。


 しかし、悩んでいるうちに、事態はあっと言うまに、圧倒的な展開を示したのだ。


 看護師さんがやってきて、ぼくに告げたのである。


 『間も無く、あなたの、公開裁判が始まります。中央ホールです。すでに、裁判員さんたちが集まってきています。』


 『はあ? 公開裁判? なんだそりゃ。』



      👩‍⚖️








 


 


 

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