助っ人転生者、時給1200円でラスボスを倒す。

柊 柊

第1話「ラストダンジョン『玉座の間』前」


「頼む、シェイラ……! やってくれ……」


「うぐっ、ひっく……無理です……、できません!!!」


 俺の腹部からは絶え間なく溢れる鮮血。

 これは時間の問題か……。


「これまで……、一緒に闘ってきたんですよ!!?

 京介のことを、こんなところで見捨てるなんて……!」


 シェイラの治癒魔法も間に合わない。

 天界の加護も、さっきその効力を失った。

 ラストダンジョン『玉座の間』。

 その最奥で待っていた「廻竜ウラヌス」―――――。

 俺達も決してレベルが低いわけではない。

 しかし、それを遙かに凌駕する強さ。


 パーティメンバーは、その機能を破壊される形で、撤退を余儀なくされた。

 そして、今に至る。


「そうだぞ、京介!

 我々は仲間じゃないか!!

 最後まで共に闘うぞ!!!」


「『殲滅者』なるものが、弱気とはな」


 ……キリンジ。

 ……シュバルツ。



「しかし、このままでは……ジリ貧だぞ……!」


 すると、一連の話を聞いていたシェイラがゆっくりと魔力を熾す。


「―――――


 召喚魔法の構え。

 霊獣や星獣を使役するシェイラ固有ユニーク魔法。

 充填した魔力に応じた召喚獣を呼び出す―――――。


『―――――ゲート・ボデス・アングラット・メノファ、最大魔力充填』


 シェイラの足下には、魔法陣が浮かび上がり、神性な光を放つ――――。


『お願い、現状を変える霊獣星獣よ、我の手に!!!』


 急激な魔力量の上昇、それに伴う召喚術の発動。

 魔法陣に電撃が走り、そして舞い上がる土煙。

 その中心に浮かび上がる、―――――影。





「うわ、ごほっごほっ。

 んだよこれ!?

 俺ハウスダストアレルギーなんですけど」



 不意に、その影が





 ***




 ホコリくせっ。

 土煙に紛れて鼻がかゆくなりだす。

 あー、これアレだわ。

 掃除行き届いていないタイプのダンジョンだわ。

 クソが。

 前に派遣された現場は良かったなぁ……。

 ホコリとかそういう概念がない世界だったから。


「あの……え……?」


 俺を召喚したと思われる女の子は、目をパチクリ。


「初めまして。

 日下部遙花くさかべ はるかっす」


 マニュアル通りのお辞儀を一つ。

 そして、周りを確認すると。

 女の子の他に、男が三人。

 その内一人は、腹部から出血し、もはや虫の息っぽい。

 こりゃ、手短に済ませますかね。


「あ、それじゃ始めさせていただきたいんですけど……。はどこっすか?」


「ラスボス……?」


「あ、すいません。苦戦している敵ってことっすね。何か向こうの方からすんごい力感じるんすけど……」


「廻竜ウラヌス……、このダンジョンの最終殲滅対象だ」


 あー、やっぱそうか。


「じゃあ、取りかからせてもらいますね」


「「「……?」」」


 ツカツカと、強い力の方へ歩みを進める。

 その間に、この世界の確認。

 脳内に流れ込んでくる戦闘に必要な情報の数々。


 ステータス画面、あり。

 レベル制、あり。

 魔力、あり。


 うん、……RPGだな。

 使用魔法も一般的なものに留まる。


 よしゃ、いけそう。


『―――――武具確認』


 俺の声に合わせ、脳内に浮かぶイメージ。

 えぇと、何々?

『……聖剣ヴォルフガング』。

 魔力量を際限なく増幅し、放つ聖剣、か。

 廻竜ウラヌスの固有ユニークスキルは、全魔法解除キャンセル

 ……なるほどな。

 魔法じゃなく、で応戦する感じね。


「ちょっと……、あの、待ってください……!」


「あ……、えっと、どうしたんですか?」


「私の召喚がしてしまい、貴方をこんなところへと呼び出してしまいました!! 本当に、ごめんなさいっ」


「……?」


 この子は、何を言って……。


「一時撤退します。安全な中継地点まで戻りますから、ついてきてください」


 金髪の女の子は、別に冗談を言っているわけじゃなさそうだった。


「えーと……」


 どうしたもんかな……。




「とりあえず、廻竜ウラヌスとやらをので、……見ててくれます?」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る