第81話 魔女のレンタルと都市同盟
「じゃあね、ディケー。しっかりやるのよ」
「はい。ナタリア様もお気をつけて」
国境の町ヴィーナから3日をかけ、公国の西岸の守りの要所、城塞都市デサロに到着後。
翌日にはデサロの総督を公国から代々任されている公爵様との話し合いが実施され、その任にはヴィーナの御領主様の代理として奥様のナタリア様が当たられた。
『必ずやヴィーナ領主の主人に
デサロとヴィーナの良き関係が築けますよう、今後とも尽力する所存です』
話し合いと言っても、ヴィーナ家付きの冒険者である私をデサロ総督のお嬢様の家庭教師として短期で貸し出す、という書面にサインをするくらいだったんだけど。
ナタリア様曰く、
『それは飽くまでも建前。
実際はヴィーナとデサロの今後の協力関係構築やらを水面下で始める口実。
いい、ディケー。
貴女の働きにヴィーナの未来がかかっている事を、
との事らしい。
……ただの家庭教師の代理バイトだと思ってたんだけど、これかなり責任重大なのでは?
幸い、ナタリア様は実家が商家のお嬢様って事もあって交渉事は大得意で、デサロ側に貸しを作りつつ「ヴィーナに何かあった時は支援をよろしく!」って感じの約束事もこの場で取り決めてしまった。
……やり手過ぎない?
いわゆる都市同盟ってやつかしら?
レジェグラの舞台になってる公国って結構広いから、それぞれの都市を治めてる首長同士の連携や繋がりって重要みたいなのよね。
『とりあえず、糸口は掴めたわね。
あとは家庭教師の仕事を成功させて、とにかく好印象を相手に与えるだけ。
ディケー、頼むわよ』
……なーんてナタリア様、いかにも"御領主様の代理として
『絶対ここに住むもん……。
私専用のおっぱいだもん……。
誰にも渡さないもん……』
とか言いながら、またも私を抱き枕代わりにして、おっぱいに顔を
「(馬車に乗ってる最中もずーっと私と手を繋ごうしたり、頭を私の身体に擦り寄せてたし、ナタリア様って意外と甘えたがりなトコロあるのよね……)」
デサロに着く前に道中でナタリア様から首筋に付けられたキスマークが全部消えてホント良かった。
あんなの誰かに見られたら、私しばらく人前に出るの恐怖症になりそうだったからね!
……まあでも昨夜、
『ちゅっ、あむっ、ちゅうぅ……。
……ね、ここならバレないでしょ?』
とか言って、おっぱいの辺りに吸い付かれちゃいましてね……。
新しくキスマーク付けられちゃったんだけど……しかも、また複数!
ナタリア様本人は「これは不倫なんかじゃない」って言ってるけど、もうギリギリ一歩手前の所まで来てませんかね、私達……。
フツーは護衛の女の子を部屋に連れ込んでですね、一緒のベッドで寝たりはしないんですよ、フツーはね……。
「(拒否しない辺り、私も私で押しに弱いと言うか……)」
ナタリア様ってば、あんな澄ました顔してるのに独占欲強いんだから……。
でも意地張ってるのか、決して私に向かって「好き」とか「側に居て」とか言ったりしないのよね……
(サラさんはダイレクトに「心からお慕い申しております」って言ってくれるし、そこはちょっと寂しい)。
「ねえ、ホントに迎えに来なくていいのね?」
「はい、お気遣いなく。
私、一度行った事のある場所なら、
自由に行き来が出来る方法がありますので」
「……そう」
「(そんな顔しないでよ~!)」
ナタリア様的には、帰りの馬車でも私と一緒が良かったんだろうなあ……。
私に見送られながら公爵様のお屋敷を後にするナタリア様の後ろ姿は、何処と無く寂しげだった。
****
「(ナタリア様の事は一旦置いといて、仕事に集中しなきゃ)」
この後、公爵様のお嬢様と面会予定だしね。
筆記の方は問題ないけど実技の成績が落ち込み気味って話だし、まずは色々と話を聞いてみないと(ついでに魔術学校の様子とか授業内容とかもそれとなく)。
魔術って精神状態の影響を受けやすいから、レジェグラの世界の思春期の子は割とそういう悩みに陥りやすいって、設定資料集にも書いてあったし。
上手く私がアドバイスして成績を上げられればいいんだけど……ライアとユティにいつも"魔女見習い"の鍛練をしてあげてるし、同じ感じで行けば何とかなる……かな?
それに何だかんだで、
「(実はちょっと家庭教師って興味あったのよね!)」
サモ◯ナイト3のアティ先生とかね!
あれは憧れるでしょう!
あと、あんなえっちい格好した縦ニット姿の先生とマンツーマンで授業とかしたら絶対性癖歪んでしまいますやんか!!
PSP版で遊んだわぁ……ロードの度に中のディスクがシャカシャカ鳴りまくるのだけは勘弁だったけども!!!
「(さすがに公爵家のお嬢様の家庭教師だし、
普段の極星のローブでのノースリーブ姿はマズイと思って、今回はちょっと衣装を新調してみたのよね)」
何しろ武家のお嬢様に実技で勉強を教える訳だし、なるべく動きやすい格好の方がいいと思って。
かと言って先生らしさも加えたかったので、季節ももうすぐ冬だったりデサロは海の側の都市って事もあり、白のコートを羽織って下は黒のベストで決めて、あと伊達だけど、メガネもかけてみた。
これなら先生っぽいでしょう。
元の世界でも大学生の頃、夏休みに近所の塾で講師のバイトしてた事あるし、あの時の経験が活かせればいいんだけど……。
「それでは、お嬢様のお部屋に御案内いたします」
「はい。お願いします」
さーて。
果たして、鬼が出るか、蛇が出るか。
……出るのはお嬢様か
(これアグバログの時にも言った気がする)。
本来ならミア姉様が家庭教師をする予定だったお嬢様と、ご対面と行きましょうか。
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