スノボ旅行16.最後の夜
麻婆豆腐は黒いのが好き。
「意外とスズっち辛いのいくよね~」
「激辛は無理だけど辛いの好きです!」
丸いテーブルの真ん中に回る丸い板のやつ。
こんな中華料理初めて。
横は静香さんで、静香さんの向こう側は竹内リョウマさん。
反対隣にれんちゃんで、少し遅れてきたこーきは遠く円卓の対岸だった。
「スーたん焼売食う?」
れんちゃんの向こう側から神田さんが手を伸ばし、焼売をお皿に置いてくれた。
「俺焼売はあんま好きじゃないから」
「やった~」
「よかったねスズちゃん」
「焼売大好き~」
「私を飛び越えてスズっちにやるってヒドくない?」
「だってJKの方が可愛いし~」
アハハハハ
「しずちゃん俺の焼売やろっか?」
「いらん、ビールをお注ぎ」
「静香さん私が注いであげる!」
「あぁズルい!スーたん俺も!」
今日は瓶のビールだった。
「スズっちオレンジ頼もっか?」
「あ、私もうお水がいいです」
「オッケー」
楽しかった。
こーきが横にいなくても、みんな私とも仲良くしてくれるから。
「私もビーールーー」
ドズコイ
って、私の椅子に半ケツ乗ってきたのは
「さなえさん!私がお注ぎします!」
「えーーースズっちがーー?」
ん、ってグラスを突き出す。
コポコポコポ
「泡ばっかじゃん!」
「あれーーおかしいな、さっきは出来たのに」
「朝霧くん!教育がなってないわよ!
責任持って飲んでよね!」
「はぁ?…ったく」
泡ばっかりのグラスが真ん中の丸い板に乗せられて
クルクルクル
「ついでにスズっちが残した魚も~」
クルクル
「便利~」
アハハハハ
楽しいな
楽しすぎて時間があっという間。
もう21時か。
「私そろそろ…」
「あ、スズちゃん部屋戻る?」
「はい」
「スズっち一人で大丈夫?」
「全然大丈夫です!」
「じゃあおやすみ~」
今日は時間制限もないし、ゆっくり飲むのかもしれない。
明日は帰るんだしね。
バッグを持って席を立ち
「あとでラインする」
こーきがそう言って、私は手を振りテーブルを後にした。
「スーたん待って」
店を出たとこで神田さんに呼び止められた。
「またトイレですか~?」
「トイレのついで」
「めちゃ遠回り
一人で帰れますよ~」アハハ
「んじゃ男子トイレまで送って貰おうかな」
「やだ~」アハハ
「スズ!」
あ、こーきだ~
「こーきもトイレ?」
「お手」
「わん!」
お手はそのまま手を繋がれた。
「神田ごめんな、俺送るから」
「トイレに行くだけだっちゃ」
「だっちゃって何~」アハハハ
「え、知らない?」
「知らない~」
「昨日も送ってくれたんだろ?
ごめんな、サンキュ」
「……」
なんか時が止まった。
見つめ合うこーきと神田さん。
「俺が送るから」
ていうか
「私一人で帰れるから
二人とも来なくて大丈夫だよ」
「「……」」
「こーき、神田さんのことトイレまで送ってあげて」
心配性だな~
全然大丈夫なのに。
気にしないで飲んでていいのに。
「じゃーね、おやすみ!」
今日こそは晴れやかな気持ちで大人ごっこしながら寝れそうだった。
部屋に戻り、「ふ~疲れたわ」って大人ぶって言いながらベッドに転がり、でもわくわく感が治まらず、買ってもらったバッグをまたベッドの上でひっくり返して詰め直してみたりした。
部屋に戻ってからそう何十分も経ってなかった。
コンコン
ドアが鳴った。
「スズちゃ~ん」
「スズっち~」
やって来たのは静香さんとれんちゃん。
「スイッチ持ってきてたでしょ?」
「こっちの部屋でやろ~」
2日目の夜は、これにさなえさんとマドカさんもいて、女子だけのゲーム大会になった。
「スズっち初回解禁終わったら報告ね」
さなえさんがバナナの皮を華麗に後方の走者に投げながら
「でもスズっちさ
何にも知らずに挑んでいいの?」
その皮をまんまと踏みながられんちゃんが
「え、予習した方がいいんですか?」
「どこまでやったの?ちゅー?」
「興味ある~朝霧さんのテクニック」
「マドカちゃんキャラ変の仕方がひどい」
マドカさんはビールごくごく。
「おっぱいは触ったって下田情報」
「えぇ!!こーき言っちゃったんですか?!」
恥ずかしいじゃん!
「なんだ、触り済みだったんだ」
「あの男はね、簡単に乗せられて口滑らすのよ」
「下田くんに乗せられるレベルとか
幻滅なんですけど」
「そこまでってことは
じゃあ見てはないわけだ~」
「え、何をですか?」
「ナニを」
「マドカちゃんピー入れなきゃいけなくなるから」
「こんなキャラだったんだ…」
「肉食です」
「うそ私も肉食~」
肉食?
「じゃあ私も肉食です!」
「意味違うから」
「でも案外肉食かもよ
こんな何も知りませんって純粋な子に限って」
「ありえる~
一度知ってしまったらね~」
「スズちゃん
この会話は朝霧に報告しないでいいからね」
「そうだった、この子何でも喋るんだった」
って話をしながら交代でマリオカートを走らせて、夜は更けていった。
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