スズと静香の出会い
最後に会ったあの始発から7日経過。
「明日休みなんでしょ?」
助手席で化粧直してる静香が、変な顔で口紅を塗る。
「あ、海行けばいいじゃん!
海しかない街に住んでるんだから」
「明日ゴルフ」
「でしたね~」
「海は暑いから嫌」
「マリアちゃんの水着!」
み…水着?!
「何百もの女体を見てきた男が
JKの水着くらいで何うろたえてんの」
「誤解を招くような言い方すんな
何百も見てねえし」
「どうでもいいけどお腹空いた~」
「なんか食って戻るか」
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ラインが。
「あ!絶対マリアちゃん!」
「勝手に見るな!」
ドリンクホルダーに挿していたスマホを盗られる。
「朝霧ツメ伸びてない?見せて?」
「は?ツメ?ん」
左手をだすと親指をもぎ取られ、何か触れたと思ったら
「お前なにすんだよ!」
「返信送っといてあげるから
真っ直ぐ前みな」
『すぐ戻るから会社の裏で待ってて
美味しいランチのお店があるの』既読
オカマか俺は
え…
えーーー!
「待て、なんて来たんだよ!」
「お腹空いた~今から帰る~って」
「お前勝手に…」
「会いたかったんでしょ?いいじゃん
ちゃちゃっとランチして戻って来なよ」
「だって静香昼飯は?」
「一緒に行っていいの?!」
「嫌」
「社食でも行くわよ」
郊外の方にいたから、会社に戻るまで少しかかった。
会社の前の交差点は右折するのにだいぶ時間がかかるから、いつも大体裏通りの細い道から戻っていた。
裏道をいくつか曲がると社用車を停めてる駐車場のある通りに出る。
「あ」
「いたー!」
大通りから来ると思ってるらしく、向こうを一生懸命見てるセーラー服の後ろ姿。
「朝霧、顔」
「へ?」
「でれーっとしちゃって」
「してねえ」
ピピッ!
「わ、何してんだよ危ねえな!」
助手席からクラクション押す女。
パッと振り返るスズが
パッと笑う。
やっと会えた。
「嬉しそうマリアちゃん」
会いたかったんだ、その笑った顔に。
屈託のない
素直な
少しの陰りもない
その顔が向けられる瞬間が好きだ。
「あんたもね」クスクス
駐車場に車をいれると、スズは歩道からすぐそばの輪留めに立って嬉しそうにこっちを見た。
「運転してる彼氏とかたまらんのよ、あの年頃」
「は?運転?」
「これで5回くらい切り返したら笑うわー」
「切り替えさんわ」
ちゃんと1回でいけた。
エンジンを切る。
やべ…緊張してきた。
「まさか緊張してない?」
「してねぇし」
スマホを入れ、後部座席から鞄を取り
「印鑑」
「あぁそうだった」
車使用者の表に印鑑。
いざ出陣
「こんにちわ~!」
早っ!
「ちょ~可愛い~!」
すごい勢いで行った静香に、スズは驚いたり困ったりするようなこともなく
「こんにちは!」
ニコニコ笑って頭を下げた。
学校みたいに
静香が教師みたいに。
「ヤバいめっちゃ可愛いじゃん!
なにこの肌つや!
やわ~いちっさ~い白~い」
頬をムニムニ
頭を撫で抱きしめ
「あ、朝霧お先に」
勝ち誇った顔でこっちを振り向いた。
さすがにそこは妬けない。
「スズ、帰らないで大丈夫だった?」
「はい!嬉しい!」
静香の腕の中からこっちを見た。
無抵抗。
「この前、花火大会にいた人」
「あ、この前の!」
やっぱ気づいてなかった。
「静香、離してやれよ
困ってんだろ」
「だって~」
静香がスズから手を離すと
「スズです!よろしくお願いします!」
また元気いっぱいご挨拶した。
だから先生か。
「すごいな~綺麗だな~」
羨望の眼差しで静香を見る。
「え、そぉお?」
「はい!お化粧もすごい綺麗だし
スタイルいいし憧れます!」
静香、鼻高高。
折ってやりたいその鼻。
「マリアちゃんだって可愛いよ~!」
「マリアちゃん?」
「あいつに嫌なことされたら言ってね
しばき倒して闇に葬ってやるからね
女心全国模試Dランクだから」
「そうなんですか~」アハハハハハ
ちゃんと喋れるんだな、こういう場面で。
人見知りタイプではないとは思ったけど。
静香がスマホを出す。
女同士はそれで通じるのかスズも出す。
「なにやってんだよ」
「え、わかんなかった?今友達になったの」
二人がラインを交換した。
「じゃ、スズちゃん
一緒にランチしてやってね
パワー切れで使い物になんないからよろしくね」
「パワー切れ?」
「静香、余計なこと言うなよ」
フフンって悪い笑みを浮かべた静香が
「ちょ…なに言ってんだよ!」
スズにコソコソと耳打ちした。
「じゃっあね~」
静香は俺の手から荷物を取って会社に戻っていった。
残されたスズは顔真っ赤。
「なに言われた…?」
ぽーーー
「スズちゃん…?」
「な…なんでもないの!」
何でもあるだろそれ
あの女…何言いやがった…
「スズ、何食べたい?」
「何でもいいですか?」
「あんま時間ないからこの辺だけど」
なんかケチャップ系あったっけな。
喜びそうなカフェ。
「今来るときにね
あっちにねうどん屋さんがあったの」
あっちのうどん屋?
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