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「今回はうまくいってるみたいだね」
真っ暗な空間
人の輪郭もできない暗闇の中からそう声が響いた。
声は男性とも女性とも判断できない中性的な声。
もちろんこんな暗闇ではその人物の容姿を窺うことはできない。
だが、そんな人物の言葉に返答をする声はいつまでたっても聞こえてこない。
どうやらこの空間にいる人物は一人のようだった。
「にしても、こんなに不幸のど真ん中にいる人間は初めて見たかもしれない。しかも、幾度やり直しても幸せになれないなんて彼は呪われていたりするんだろうか?」
その人物はずっと何かを見ながらひとりごとをささやいている。
しかし、こんな暗闇の中でその人物は一体何を見ているというのか。
やはりわからない。
「今回はなんだかうまくいきそうな気がするんだよね。今まで膨大な回数彼の人生を見てきたけど、ここまで彼が生きているのは珍しい。まだ、100回そこらしかなかったルートだったかな?」
何を言っているのかわからない。
唯一わかることがあるとするならその人物が見ている何かについての話だろうか。
「う~ん。やっぱり彼にとって人生の分岐点となりえるのはあの少女の存在なのかな?確かに彼はあの子と出会ってから自殺をしたことは一度もなかった気がする。まあ、自殺しなくても結局事故で死んだり病気で死んだり誰かに殺されたりと一回も幸せな人生は過ごしてないんだけどね」
ははっとその人物は軽快に笑っていた。
内容的にどう考えても笑えるような内容ではなかったと思う。
いや、もしかしたらこの人物に人間の常識など通用しないのかもしれない。
「さて、これから先彼の人生はどう分岐してどのような結末にたどり着くのか。楽しみで仕方がないな~。そろそろハッピーエンドが見たいころあいなんだよね。なにせ、彼の人生は既に何千何万という数のバッドエンドを歩んできているんだからさ。さすがに飽きてくるよね~。でも、こっちからは干渉できないっていうのがまたもどかしい。人間でいう創作物みたいな感じかな?」
悩まし気な声をあげているが、発言的にこの人物は人間ではないのかもしれない。
神か悪魔か。
又はそれに準ずる何かなのだろう存在は暗闇の中で永遠と独り言を言っていた。
「まあ、これからに期待かな?そろそろ転換期だろうし、その分岐次第ではすべてが台無しになってまた一からやり直し。うまくいけばやっと幸せなハッピーエンドにたどり着けるだろう。さぁて見物だね」
けらけら笑いながらその人物の気配はどこかに消えていった。
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