第6話 俺の最終目標
「よし。今日も買い物に行くぞ」
「うん。本当ありがとね冬真さん」
「だから気にするなよ。せっかくだし今日も何か欲しいものがあれば言えよ。マジで変な遠慮とかいらないから」
「わかってるよ。私もさすがにここまで念を押されたら遠慮なんてしないし。むしろ冬真さんこそ私がたかりすぎて困んないでよね!」
「それは恐ろしいな。できるものならやってみてくれ」
どうやら、秋奈も少しは慣れてくれたようで自然な笑みを浮かべてくれている。そのことに少し安心しながらも一体何をたかられるのかと不安にもなった。
まあ、金はそれなりにあるから心配はしてないんだけど。
「そういえば秋奈はどこから来たのか聞いてきてもいいのか?」
「え?いいよ~。私は九州のほうから来たの。だから移動費で所持金が無くなったってわけよ」
「本当無計画にもほどがあるよな。少しは眠る場所とか考えなかったのか?」
「うん。ともかくあそこから離れることに夢中でそんなことは全く考えてなかったかな」
「そうだったのか」
どうやら想像していた以上に環境が悪かったらしい。
これ以上聞いてしまうと何か良くない気がしたので必死に話題を変えようと試みる。
「秋奈は誕生日いつなんだ?」
「どしたのいきなり」
「いや、秋奈が十八になれば多少は通報のリスクが減るかと。何より未成年じゃなくなるから通報されても罪に問われないだろうし」
「まさかっ、未成年じゃなくなった瞬間に冬真さんがオオカミに!?きゃ~」
「お前な~本当そういうノリばっかりしてるとマジで追い出すぞ?」
こいつはあったときからずっとなぜか俺のことを変態かオオカミにさせたがる節がある。
そのたびにほんの少し昔のことを思い出してしまうのでやめてほしい。
何気に心が少しづづ摩耗していく。
「ごめんなさい。もう言わないからゆるして~。」
「はいはい。別にいいからとっととスマホ買いに行くぞ」
「は~い」
そうして俺たちは昨日も言ったショッピングモールに足を運びすぐにスマホ売り場に向かった。
後は秋奈が好きなスマホを選んで俺が契約の手続きを終わらせた。
結構早く手続きが終わって時刻は12時ちょうどお昼時だった。
「結構時間かからなかったな」
「だね。あと、ありがと」
「気にすんな。俺もお前と連絡つかないと困るしお前に何かあったら駆けつけれない」
「うん。でも、ありがとう。こんなに高いものを買ってくれて」
「いいよ。有効活用してくれればそれで」
明日から俺は仕事だからこいつとずっといることはできない。
正直仕事なんかしなくても暮らしていけるくらいには金はあるけど、仕事をしてないと周囲の目が痛いし何より仕事をしてなかったら何もすることが無い。
だから仕事をしているんだが、正直やめてもいいのかもしれない。
だって秋奈が自立したら俺は死ぬ予定だ。
なら、こいつがやりたいことを見つけるまで一緒にいてこいつがそれを見つけたら俺はそれで死ぬ。
なら、仕事を辞めてもいいか。
「冬真さん?どうしたのそんなに暗い顔してさ」
「いや、少し考え事をな。それよりお前はこれから先どうするか考えたか?」
「どういうこと?」
「言ったはずだぞ。俺はお前がやりたいことを見つけて自立するまでは面倒を見るって。今やりたい事とかあるか?」
「なんでいきなりそんなことを聞くの?もしかしてやっぱり私って邪魔だったかな」
俯いて秋奈はそんなことを言い出す。
不味ったな。
確かに今の聞き方だと秋奈が邪魔だから早く消えてほしいという風に聞こえなくもない。
虐待を受けてたならなおさらだ。
自分の配慮の足りなさに反吐が出る。
「違う。俺の言い方が悪かった。そういう事じゃなくてな。俺は単純に秋奈は何かやりたいことが無いのか聞いてるだけであって秋奈が居たいっていうならいつでも居てくれていいんだ。俺はそれを迷惑なんて思わない」
秋奈が自立をしたら死ぬ。
それが俺の最終目標だ。
だから、秋奈がいつまでもここにいたいっていうなら俺はそれでいい。
目標は達成できないだろうけど秋奈を見捨てるくらいなら俺は目標を達成できなくたって構わない。
思っていたよりも俺は秋奈に感情移入していたらしい。
もしくは、過去の自分と秋奈を重ねているのかもしれない。
虐待なんて受けたことないけど、俺も周りの大切な人から散々裏切られてきた。
だから、両親に裏切られた秋奈を放っておけないのだろうと思う。
「ふふっ。少し意地悪するつもりだったんだけど冬真さん焦りすぎじゃない?」
にやにや笑いながら秋奈が横腹をつついてくる。
「お前、、、まあいいや。でもそういうからかいはやめてくれ。本当に秋奈によくないことをしたのかと思って焦るから」
「うん。ごめんなさい。私も良くなかった」
素直に謝ってくる。
こういう所があるから憎めない。
「まあ、そんなわけだからやりたいことが見つかったら何でも言ってくれ。協力するから」
「わかった!ありがとね」
にこっと笑みをうかべて秋奈は俺の腕に抱き着いてくる。
なんだか犬のような奴だな。
「はいはい。どうする?もう昼だけどなんか食べてから帰るか?」
「う~んじゃあ食材だけ買って帰ろうよ!」
「ん?別に構わないけど俺料理なんかできないぞ?」
「知ってる。私が作るの!」
「お前、家事出来るのか?」
「まあね~家では私が全部やってたからさ」
「なるほど、お手並み拝見と行こうじゃないか?」
「ふふん。冬真さんの胃袋がっちりつかんでやるんだから!」
そうして俺たちは食材を買って家に帰った。
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