第7話 老猫

 Uさんは30代の男性。彼から聞いた短い話をふたつ続けて紹介する。


 Uさんは結婚してしばらくの間、子供ができなかったそうだ。

 奥さんと二人で長崎の壱岐を旅行した際、子宝縁結びで有名な賽(さい)神社をお参りした。

 それまでにも外出先や旅行先で神社があると、二人でよくお参りをさせてもらっていた。


 境内に入ると、一匹の野良猫がいた。 

 神社で猫に出会うことは珍しいことではないが、かなり高齢のヨレヨレの猫だった。

 Uさんは奥さんと外出先でこのように猫と出くわすと、普段は必ずと言っていいほど猫はUさんの方に寄ってくるらしい。

 ボク猫に好かれるんです、と言ってUさんが笑う。


 ところがこの日は違った。

 ヨレヨレの老猫は真っ直ぐ一直線に奥さんに近寄ってきて、足元にスリスリしてきた。

 珍しいこともあるものだ。

 

 その瞬間奥さんは確信したそうだ。


「赤ちゃんを授かった」


 翌年、元気な女の子が生まれた。

 今年4歳になる。

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