蚯蚓

梅田 乙矢

第1話

 「そういえば、こんな話を知っている

 かい?」

着物を着た40代くらいの男が二人、日本家屋の客間で座卓を挟み話している。


「ほら、以前K町に住んでいた男女の話」


『あー、夫婦でもなく恋人というにも何

 だか違う、妙な雰囲気の二人がいるっ

 て聞いたことはあるが』


「そうそう、その二人。

 まあ、あくまでも噂なんだけど…」


『まあた、君はそんな話持ち出して。

 噂話の好きな男だな』


「いやいや、聞いてくれよ。

 これがまた本当だったら中々の話

 で…」


『だから、噂なんだろう?

 そんな話はいいさ。

 それより、S町で起こった紙芝居屋の事 

 件、あの奇妙な事件の話をしようじゃ

 ないか』


「ちょっと待ってくれ。

 その事件も気になるが、とにかく俺の

 話を聞いてくれよ」


僕はあきれた顔で溜息をつくと仕方しかたなく友人の話に耳をかたむけることにした。

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