親友が先生と付き合っている

@mizu888

第1話 凜は私の親友で先生の恋人?

私、知ってるんだ。

雨宮凛(あまみやりん)が付き合ってる相手を―――

 みんなが先輩の誰々くんかっこいいとか、イケメンを見つけて盛り上がってる時も、楽しそうに会話に混じってるふりをしながら、きっと凛はそんな会話に興味なんてなかったんだよね・・・




「・・・紗良」


 凛の声がする―――







私、坂田紗良と、凛が仲良くなったのは中学生の頃だ。



「黒のストレートいいなぁ……めちゃめちゃ、きれいな髪」


 同じクラスになって、いきなりそう言って話しかけて来たのが、凛との出会いで、よく覚えている。

初対面の相手の髪を躊躇なくサラサラと触られたのを、ビックリはしたけれど、意外に私は不快に思わなかった。 私が彼女の行動に不快さを感じなかったのは、彼女の言葉にわざとらしさが無く、素直に私の髪を褒め触れる仕草がきれいだったからだ。

彼女は、人の警戒という鍵を開けてしまえるタイプの人だ。彼女の、表情でそう感じた。

そんな行動をして私がビックリして少し引いているのに全く気にもとめてない。彼女は少しもおかしいことをしたと思っていないんだ。彼女の表情に一瞬にして、とがめようという気も失せるものだった。



「ありがとう」


 上手く会話を返すことも出来ずにそれだけ言った記憶がある。

彼女のふわふわの柔らかそうな髪は、色素が薄くて、明るい雰囲気の彼女をより明るい雰囲気にしていてとてもいいと思った。それを私も伝えればよかったけれど、私には初対面の相手にそんなことを言える勇気はなかった。

それから同じクラスで話すうちに、気付けば凛とは一番仲のいい友達になった。それはひとえに、凜がよく話しかけてくれたからだ。だから、私はクラスで一番凜に気を許して、凜の傍に私の方からよく近づくようになった。


 高校も示し合わせたわけでもないけれど近くの同じ高校に行くと知った。





「・・・紗良、聞こえてる?」


「・・・え、なに?」


呼ばれていることに気づいて、ハッとして返事をする。高校入学して1年生も凛と同じクラスになれた。今ごろ高校生活にも慣れてきてもっと楽しんでいるはずだったのに。


「次移動教室だけど、行かないの?」


「あっ、・・・・・・ごめん、そうだった。ボーとしてた」


「大丈夫・・・・・・?」


「うん、すぐ用意するから!」


「お昼食べたら眠くなっちゃった?」


「うーーん、もしかしたら無意識に寝てたのかも?」


 冗談、と笑いながら言うと、凜も笑った。

  次の授業は生物学で、講義室に移動する。生物の授業は自由な席に座っていい。私がぼーっとしていたせいで2人並んで座れる席の選択肢はほとんどない。チラホラ空いてる間の席に、後から来て入り込むなんてのは少し難しい。一番前か一番後か選択肢はその2つだった。


「凜、ごめん。席、前か後どうする?」


「……前にしようか」


「うん、ありがとう」


 気分的には後ろの方がいいけど、一番後ろになってしまうと少し見えにくい。眼鏡をかけるほどでもないかと今も裸眼だけれど、視聴覚室の後ろの方からだと少し見づらかった。あれなんて書いてあるって凛に聞いたりすることもよくあった。

『見えにくいし前にしようか』と後ろの席では、見えにくいことに気を使ってくれた凜に、ありがとうと言ったけれど、どうなんだろう・・・本当のところは、凜自身がが一番前の席が良かったからかもしれない。

・・・だって、凜の付き合ってる相手は生物の先生、笹本愛海先生なのだから―――


 正確には『付き合っていると思われる』だけれど、私には確実に付き合っているんだと確信する出来事を知っていた。



だから、こんなに気になってしょうがないんだろうか……







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