第36話 新たな舞台への扉

発表会から数日後、柚月たちは再びピアノ室に集まっていた。静けさの中、柚月は鍵盤にそっと手を置き、あの日の舞台で感じた熱気を思い返していた。観客の拍手、ホールに響いた音、そして三人の音がひとつに溶け合った感覚。それは、彼女にとってかけがえのない瞬間だった。


柚月(心の声)

「発表会は終わったけれど、まだ私たちの音楽の旅は続いている。この音をもっと遠くまで届けたい。」


その時、佐伯先生が教室に入ってきた。手には一通の封筒が握られている。先生は三人の前に立つと、微笑みながらその封筒を差し出した。


佐伯先生

「みんなに新しい挑戦の機会が訪れたわ。これ、地方大会への推薦状よ。」


三人は驚きながら顔を見合わせた。アキが真っ先に声を上げる。


アキ

「地方大会って…あの大きなホールでやるやつですか!?それに出られるなんて、本当ですか?」


翔も冷静な表情を保ちながらも、目の奥に興奮が隠せない。


「俺たちが、あの舞台に立てるのか…?」


柚月は封筒を見つめながら、胸の奥に少しずつ緊張と期待が広がっていくのを感じていた。


柚月

「先生、私たちで本当に大丈夫なんでしょうか?」


佐伯先生は優しく頷きながら答えた。


佐伯先生

「あなたたちは、発表会で『星の迷宮』を通して自分たちの音楽を表現したわ。それが人々の心に響いた証拠よ。地方大会では、さらにその先を目指してほしい。」


三人はしばらく沈黙していたが、それぞれの目には挑戦への決意が浮かんでいた。アキがチェロを手に立ち上がり、笑顔で言った。


アキ

「やるしかないでしょ!私たちの音楽をもっと大きな舞台で響かせよう!」


翔も立ち上がり、バイオリンの弓を軽く振りながら応じた。


「ああ、挑戦しない理由なんてないよな。次の舞台を目指そう。」


柚月は二人を見つめ、胸の中に湧き上がる不安を押し込みながら頷いた。


柚月

「うん。私たちならきっとできる。地方大会で、私たちの音を届けよう。」


佐伯先生は満足そうに微笑み、三人に言葉をかけた。


佐伯先生

「地方大会では、もっと多くの人があなたたちの音楽を聴くことになるわ。そのために、今から新しい曲に挑戦しましょう。」


三人は新しい楽譜を手渡され、それぞれがその楽譜に目を通した。そこに書かれていたのは、「光の航路」というタイトルの曲だった。


柚月(心の声)

「『光の航路』…。また新しい旅が始まるんだ。」


柚月は楽譜を見つめながら、心の中で新たな決意を固めた。


カット:ピアノ室の窓から差し込む夕陽が、三人の姿を静かに照らしている。その光の中で、新しい楽譜を手にする三人の背中には、次なる挑戦への期待と緊張が感じられる。


次回予告

地方大会に向けた新しい楽曲「光の航路」に挑む柚月たち。しかし、曲の難易度はこれまで以上に高く、三人は再び葛藤を抱えることになる――音楽の旅路はさらなる試練を迎える。

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