嗚呼! 合コン!
崔 梨遙(再)
第1話 合コンのセッティング!
合コンのセッティングを頼まれることが多い時期がありました。特に30代の頃。
きっかけは弾き語りが多かった。夜の繁華街で歌っていたら足を止められて、話し込んで、恋愛の話になるのがいつもの流れ。そして、
「崔さん、合コンのセッティングしてくださいよ」
と、頼まれるのだ。それで、“恋人がいない女性が意外に多い”ということに気付かされる。勿論、そんな面倒臭いことは断るのだが、こういう時、結構、女性陣は粘るのだ。押しの強さに負け、合コンのセッティングを約束する。
その時は、大手企業のOL2人組から依頼された。麻紀と杏子。麻紀は年下、杏子は年上。はそこで、僕が以前つとめていた会社のイケメン先輩の竜也さんを呼んだ。僕より5歳ほど年上。もう1人呼びたかったのだが、その時は他の知人の都合が悪くて竜也さんしか呼べなかった。事前に麻紀ちゃんに電話で聞いてみた。
「土曜でセッティングできましたか? 崔さん」
「いやぁ、それなんやけど、土曜やったらイケメン1人しか来られへんねん。どうする? 延期する?」
「崔さんがいるじゃないですか」
「僕は彼女がいるからアカンって言うたやろ。せやから、実質、こっちはイケメン1人、そっちは2人、どないする?」
「イケメンさんに早く会いたいから予定通り今度の土曜日で」
「わかった」
で、土曜日になった。夕方の待ち合わせ。みんな時間通りに集合した。そして、ちょっとだけ雰囲気の良い居酒屋へ。
女性陣は、竜也さんがイケメン過ぎて大喜びだった。しかも、竜也さんは大企業に勤めている。僕は目立たないように控え目にしつつ、竜也さんを立てて盛り上げた。そして自然な流れで連絡先の交換。
その夜、麻紀からも杏子からもお礼のメールが届いた。
「竜也さん、めっちゃイケメン! 崔さん、ありがとうございます!」
「よくぞ竜也さんを連れてきてくれました! 今日の合コン、大満足です」
僕は、自分の役目は終わったと思い、ホッとした。そして、竜也さんは麻紀とデートしたらしい。僕は、そうなるだろうと思っていた。麻紀の方が杏子よりもビジュアルに恵まれていたからだ。だが、それでは杏子がかわいそうだと思い、杏子に別の男性を紹介しようと連絡したら“拒否”されていて、連絡が取れなかった。“あらあら、杏子さんってわかりやすいタイプなのね”と思った。麻紀からは連絡があった。“明日、竜也さんとデートです!”、“竜也さんとのデート、楽しかったです!”。
ところが、竜也さんと麻紀は付き合うほど親しくはならなかったらしい。どんなデートを重ねたのかは知らない。それでは、麻紀に別の男性を、と思って麻紀に連絡したら“拒否”されていた。麻紀もわかりやすい女性だった。どうでもいいのだが、少し寂しかった。“そんな性格やからフラれるんやろ”と思った。
また、ある時は工場勤務の女性2人組から合コンのセッティングを頼まれた。里子と靖子。2人とも僕より年下。里子はスレンダー、靖子は少しぽっちゃり。金曜の夜は、断った。土曜の夜も断った。そして日曜の夜、僕が根負けした。今度は竜也さんが長期出張だったので、別の知人を紹介することにした。元々、都合が合えば麻紀達の時にも呼ぶ予定だった男性だ。名前は俊樹。僕より少しだけ年上。だが、また後1人が集まらない。それで、里子に電話したら、里子から誘われた。
「食事しながら打ち合わせしよう!」
夕方、里子と待ち合わせて何が食べたいか? と聞いたら“お寿司”と言われた。なので、回らない寿司屋に連れて行ったら喜ばれた。で、結局、早く合コンを実現したいから予定通り次の土曜日に決行することになった。“何のための打ち合わせだったのか?”わからなかった。が、別れ際に里子の目的がわかった。
「え! ホテル行かへんの?」
「え! 行かへんよ。僕、彼女がいるって言うたやんか。浮気はせえへんよ」
「なんや、てっきりホテルに行くと思ったのに。彼女がいたとしても」
「行かへん、行かへん。ほな、土曜日でよろしく」
土曜日、合コンは盛り上がらなかった。特に俊樹さんのテンションが低かった。居酒屋での食事を終えて、女性陣は、
「次はカラオケ-!」
と盛り上がっていたが、俊樹さんは悪酔いして道端で吐いていた。里子と靖子は、吐いている俊樹さんの腕を引っ張ってカラオケに行こうとした。僕は引いた。なので、そこで、
「今日は解散!」
ということにして、遊び足りなさそうな女性陣を帰らせた。女性陣が立ち去ると、俊樹さんはスグに復活した。俊樹さんは2次会に行きたくなくて吐いていたらしい。それもスゴイな! と思った。
ということで、合コンはなかなか上手くいかない。
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