親から見捨てられました。自力で生き抜いてみせます。
まるねこ
第1話 プロローグ
再掲載です。
現在パルシィ様にてコミカライズ中!原作をよかったら見ていってください⭐︎
よろしくお願いします!
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その昔ザラン大陸には魔王と呼ばれる存在が居た。魔王は瘴気を操り多くの魔物を生み出し、森に住む動物や人間たちを滅ぼそうとしていた。魔王を倒すべく立ち上がった人間に森に住む妖精や神は力を与え、長きに亘る戦闘の末、魔王を滅ぼす事ができた。
魔王という脅威は去ったが、瘴気や魔物たちは残る世界となってしまった。
神は人々が魔物達によって滅ぼされぬように人間が一定の年齢に達するとスキルを発現させ、魔物からの脅威に対抗する
神から与えられるスキルは当初住んでいた土地に由来したスキルが生まれてくる事が多いと言われていたが、魔王が居なくなって久しい今では人間たちはそのスキルは血筋に由来するとの教えを信じるようになった。
そして近年では貴族達はスキルの優劣を争う事件があって以降、人前では自分のスキル名を隠すような風潮となってきていた。
四方を森に囲まれたラスタール国。首都ラカンは森の都と呼ばれていた。そして今日、今まさに一組の家族が神殿にてスキルの確認に訪れていた。
「アーダム・ヘルクヴィスト伯爵、並びにファルマご息女。こちらへどうぞ」
神官に案内されてファルマはドキドキしながらも神の像の前に案内された。像の前には1つの石板が置かれていた。
「さあ、ファルマ。手をかざしてきなさい」
「はい。お父様」
私は目の前にいる神官様に一礼をしてから石板に手を乗せた。すると石板から不思議な文字が浮かび上がり、神官はそれを紙に写しとっている。
「おや、これは珍しいですな。ヘルクヴィスト家は代々血筋から精霊召喚のスキルを得る事が多いのですが・・・」
「神官様、娘はどんなスキルを得たのですかな?」
「ご息女の得意とする魔法は生活魔法。魔力量はまぁ多い方でしょう。そして、スキルですが、『蟲使い』となっております」
父はその言葉を聞き、目を見開き、驚いた様子。
「神官様、そ、それは本当ですかな?」
「ええ。間違いございません。ご息女は蟲使いです」
「そんな・・・。馬鹿な・・・。我が家から蟲使いが出た、だと。認められない。そんなもの要らない」
父はフラフラと後ずさったあと、出口へと歩き始めた。
私は父の様子を見て泣きたくなる気持ちと涙を堪えながら神官様へ一礼をしてから走って父の後を追った。
子供ながらに自分のスキルは駄目なスキルだったのだと感じた。きっと父は、家族は、私を捨ててしまうのではないかと怖くて怖くて無言の父に自分のスキルの事が聞けないでいる。無言で馬車に乗り込む父の姿に声を掛ける事が出来なかった。
馬車は何事もないようにそのまま邸の入口へと入っていった。
「おかえりなさいませ。旦那様。ファルマ様。」
玄関では父の執事であるセバスチャンと私に付いている侍女のネスが微笑みながら帰りを待ってくれていたようだが、父の様子を見て顔色を変えた。
「ネス、ファルマを部屋へ。セバスチャン、今から執務室へ。ペトロネラとシーラを呼ぶように」
「かしこまりました」
私は父に言われるがままネスと一緒に部屋へと入った。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
ネスは何事も無かったように着替えを手伝ってくれている。きっと今から父たちは私の判明したスキルの事を家族で話し合うのね。私は部屋着に着替えるとネスに話をする。
「ねぇ、ネス」
「なんでごさいましょう?」
「きっと今からお父様達は私を捨てるための話し合いをするのだと思うわ」
「どうしてでしょうか?」
「だって、お父様は神殿で私のスキルを聞いた後、ああなってしまったんだもの。要らな
いって言っていたわ。きっと私の事はもう要らないのよ。きっと私のスキルは駄目なんだわ」
「今まで可愛がってきたのにいきなり捨てるなんて話にはなりませんよ。きっと」
ネスは私が不安そうにしているのを励ますかのように話をしてくれる。けれど、神殿から父の行動はおかしい。
きっと私は駄目な子なのかもしれない。
でも、信じきれないでいる自分がいる。
「ネス、私、ちょっとお父様の所に行ってくる」
「お嬢様、部屋で待っているように言われております」
「ちょっとだけよ、すぐ戻ってくるわ!」
私はネスの言葉を無視するように部屋を出て父の執務室の前へとやってきた。ドアをノックしようとした時に部屋の中から声が聞こえ、ノックをやめて鍵穴からそっと覗く事にした。
執務室では父と涙している母、不満顔の姉が見える。
「なんということでしょう。ファルマが蟲使いだなんて!!我が家の恥ですわ!前代未聞。使える魔法も生活魔法だなんて・・・。恥ずかしい限りですわ」
私は恥ずかしい存在・・・?
「お父様、本当なの?ファルマが蟲使いなのって。私は嫌よ?学院で妹の話を振られて蟲使いだなんて話したくないわ。それに生活魔法って平民が使う魔法でしょ?お友達に恥ずかしくて言えないわ」
今朝まではとても家族仲良くて、ギュッと抱きしめて、いってらっしゃいと送り出してくれた母からの言葉。信じたくなかった。姉からも恥ずかしいと言われている。
私の存在すべてを否定された気がした。
「神殿の判定は確かだ。我が家は代々高貴な精霊使いのスキルを持つ者を輩出してきた。ファルマはきっと我が子ではないのだ。虫なんて地を這う生き物ではないか。下等な生物を支配するなど嫌われて当然だ。あってはならない。それに生活魔法など貴族にはいらぬものだ」
「ファルマをどうするのですか?」
母は虫を見るかのように酷く歪んだ顔で父を見ている。私はただただ、声を上げることも出来ずその様子を息を殺して見ているしか出来なかった。
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