雛ちゃん. Be reborn。〜冥探偵な女子高生〜

猫野 尻尾

第1話・彷徨える魂。

菱餅 雛ひしもち ひな」17歳・高校二年生。


ひなちゃんは高校に入学する時、奇妙な病気にかかった・・・あまり前例のない難病で

患者数も少ないため専門治療の方法もほとんど見つかってないってことだった。

だから病気の治療に入退院を繰り返しながら高校に通った。


体が不自由なこともあってか雛ちゃんは勘だけは鋭かった・・・あと霊感が

人一倍強く、死んだ人と話が出来ると言う不思議な能力を持っていた。

なんでそれが分かったかと言うと亡くなった自分の祖父と会話をした経験が

あるからだ。


そのことを知って理解してくれたのは雛ちゃんの母親だけだった。

母も霊感が強かったみたいだ。


よく目が不自由な人は聴覚が発達するって・・・それと同じようなものかも

しれなかった。


雛ちゃんは普通の女子と同じような楽しい高校生活を心から送れないまま

素敵な恋愛も経験することなく病気治療の闘病生活の末、治療虚しく最後は

心肺停止で若い命をこの世に散らせた・・・と家族も医者も思っていた。

だけど雛ちゃんは心臓が一時的に止まっていただけで実は仮死状態のまま

だったのだ。


このあとのことを思うと雛ちゃんは亡くなっていたほうがよかったかも

しれない。

いやいや死んでいい人なんかいないんだ、たとえ何があっても。



さてこちらは《上野 壮介うえの そうすけ》高校二年生。


壮介は郊外のマンションで母親と二人暮らし、母親はパートで壮介はバイト

裕福ではなかったが優しくて大地母神のような母親とふたり幸せに暮らしていた。


母親もあまり体が丈夫なほうじゃなかったが壮介も心臓に疾患を抱えていた。

だから激しい運動や精神的負担は避けるよう医者から言われていた。


折しも壮介は雛が仮死状態になった同じ時刻、偶然にも彼女が入院していた

病院に来ていた。


と言うのも壮介の母親がパート先で倒れで救急車で運ばれて学校に知らせが

来て壮介はすぐに病院へ駆けつけた・・・だけど時すでに遅く壮介は母親の

死に目には会えず言葉を交わすことなく悲しい別れになった。


「なんで、俺ひとり残して逝ったんだよ・・・ひどいよお母さん」


壮介は突然の母親の死を受け入れられず悲しみに打ちひしがれた。

母親の死因は過労による突然死と判断された・・。

壮介は最近母親が痩せてきてると感じていた、だから心配はしていた。

無理しないでねってねぎらう前に母親は逝ってしまった。


二度と目を覚ますことのない母親の遺体のそばで壮介は一晩中泣き続けた。

いくら泣いても母親は帰ってこない・・・そう考えると余計身を引き裂かれる

思いだった。

あまりに悲しみが深すぎた壮介は、動機と息切れが激しくなって自分の体に異変

を感じた。


「胸が痛い・・・体が浮くみたいだ・・・だめだ、なにかおかしい」

「お母さん・・・助けて・・・」


壮介は立っても座ってもいられず病室の床に倒れこんだ。


「俺はこのまま死ぬのか?」


そして壮介は少しづつ意識を失って行った。

しばらくして意識が戻った壮介は自分の目線の下、床に寝転がってる自分の

姿を見た。


「なにこれ?・・・あれ俺だよな・・・俺、やっぱり死んだのか?・・・体から

魂が抜けてるからこんな風に見えるのか?」


壮介は母親の死に耐えられずショックで心臓が停止して死んでしまったのだ。


「俺、死んじゃったんだ・・・突然死ってやつか?」

「死ぬってこう言うことなんだ」

「俺の魂はこのまま病院の天井を抜けてあの世に行っちゃうのかな?」


「いえいえ、あんたはまだ寿命じゃないですよ、上野 壮介さん・・・」


誰かがそう言った・・・そう言った人は倒れてる自分の体のそばに立って魂に

なった壮介を見上げていた。

その人は中年のサラリーマンみたいなオヤジで、小太りで頭はハゲていて、

会社にいたらいかにもセクハラ上司って感じのオヤジだった」


「なに、あんた・・・誰?・・・いきなりどこから入って来たんですか?」


「申し遅れましたけど・・・私、死神です」

異死神 善次郎いしがみ ぜんじろうって言います」

「あ、死神に年齢はありませんから・・・」


「し、しにがみ?・・・死神なんて本当にいるのか?・・・」

「で?その死神がなんの用だよ・・・俺の魂を持って行こうとやって来たのか?」


つづく。


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