第49話 母親発見?
俺の母親が見つかった。
その衝撃的なニュースが飛び込んできたのは伊月さんとイチャイチャしながら二人で蕎麦を打っている時だった。
伊月さんはあれ以来俺にベッタリ甘えてくるようになった。
あまりに露骨だ。
具体的に言うと前まで「あ、拓真君」だったのが今は「あ♡拓真くぅん♡」になった感じだ。
常連さんや美月からは「こいつらヤッたな」とでも思われていることだろう。
少し恥ずかしい。
でも慣れないと。
常連さんからのお出かけのお誘いも多く貰うようになった。
伊月さんは低身長ながら脅威の胸囲100cmで、この日本の価値観だと女性的魅力は低いらしい。
だから常連さんからもワンチャン私もいけるのでは?と思われてるみたいだ。
しかし流石にそうポンポン作る訳にもいかないし、こちらにも心の準備というものがある。
それに現状養育費を稼ぐ手段がない。
養育費が子供1人あたり月5万円として、俺の月給はまだ毎日の精子提供の50万円ほどしかない。1人で生きていく分には問題ないが、千幸様からは5人作るように言われている。そうなると自分の生活費も残らない。長尾チャンネルの臨時収入などもあったが、もっと安定的に収入を得る手段が欲しい。そういえば諏訪ちゃんねるの収益はどれくらいになったのだろうか?あれも一応出演料とか出るらしいけど、よく知らない。
「拓真君・・・」
伊月さんは半泣きだった。
きっと俺が真田から出てしまうと思ったのだろう。
しかし案ずることはない。
100パー偽物だから。
我が親愛なる母、川相雅枝はきっと今も関東の実家でのんびり過ごしていることだろう。いや俺が行方不明になって多少は慌てているか?
「大丈夫ですよ伊月さん。俺はここにいますから」
「でも拓真君・・・」
「心配しないで下さい」
俺は伊月さんを優しく撫でる。
彼女は震えていた。
「あー 拓真君?そろそろお話してええか?」
「ええどうぞ」
久々に来た水蓮さんだ。
圭とは今でもしょっちゅう会って遊ぶけど、水蓮さんに会うのは久しぶりだった。
「それで、その自称母親の名前は?」
「川相やす子さんやって。北条で非登録の男子をこっそり育ててたらしいんやけど、ある日突然子供が行方不明になってしもたって」
「北条ってことは関東でしょう?」
「せや。常磐のあたりやて」
「そこから信州までどうやって歩いてきたんすか・・・」
徒歩なら何日かかるんだここまで。
恐らく1日2日じゃ無理だろう。
「車で攫われたんじゃないかって言うとるで」
「犯人が俺を信州に捨てた理由は?」
「それは分からんて。ただ攫われたのは間違いないって言うとる」
なんじゃそりゃ。
さてどうしたものか。
10000パーセント偽物なんだが、どう対処するのが正しいのだろう?
恐らく貴重な男子を真田から自領に奪い取るのが目的だろう。
それともこの間のペンギンとアメンボ親子の仕返し?
どちらにしてもロクでもない案件であることは間違いない。
「それで拓真君はどうしたいん?」
「できれば会いたくないですね・・・」
「でも母さんに会えるかもしれんのやで?」
「それはないでしょう。どうせ偽物です」
とは言えどうしたもんか。
「もしかして俺が断ってもしつこく言って来たりします?」
「せやろなあ。真田が拓真君を幽閉してるとか・・・。もしかしたら誘拐した犯人は真田家の者とか言ってくるかもしれへんな」
「そうですか」
それならば仕方がない。
「そいつらに会いましょう。そこで私は真田の人間であるとハッキリと言えばいいでしょう」
「・・・ご主人本気ですか?」
菊花が驚いていた。
「本気だよ。まあなんとかなるだろう」
「・・・・・そう上手くいくと良いんですけど」
菊花は心配そうにしている。
「それでそいつらはこちらに来るんですか?」
俺は自由に北条領に行くことはできないのだ。
「ああ明後日に拓真君の母親が真田に来るらしいで」
「自称母親ですよ水蓮さん」
さて嘘を吐いて自領に男子を取り込もうとする連中だ。
どんな面の皮をしているかじっくり拝見しましょうか。
―――――――――――――――――――――――
というわけで本日は自称母親とやらが来る日。
俺は上田城まで来ていた。
確か元の日本では真田が対上杉を見据えて徳川の金で作ったんだっけ。
それで結局徳川としか戦わなかったというのだから凄い。
この上田城は果たして元の上田城と同じ場所に建っているのだろうか?
流石に上田城の正確な場所までは分からない。
その上田城の大広間で俺は北条の人達を待っていた。
左右には圭と美月、後ろには菊花が控えている。
心細かったので無理言って付いて来てもらったのだ。
「なあ圭よ」
「お、どしたタク」
「なんで俺は上田城まで来ているんだ?」
てっきり近所の高島城で面会するもんだと思っていた。
地味に遠いな上田。
「そりゃ千幸様だって話し合いに参加したいに決まってるじゃん。それに毎回毎回千幸様を諏訪まで呼ぶわけにはいかないでしょ?」
「それは確かに」
「それにタクはいま真田で最重要人物だからね。絶対に身元を渡すわけにはいかないんだよ」
まあ俺とて北条に行く気なんぞない。
来週も試合があるんだ。観に行かないと。
「ご主人。来たみたいですよ」
菊花が俺の袖をちょんちょんしてきた。
「分かるのか?」
「足音がします。これは千幸様と母様と水蓮様と・・・あと2人」
「2人?」
すると襖が開いた。
正座したまま彼女達を出迎える。
「ああ・・・!!拓真ちゃん!会いたかった!」
知らんおばさんがこちらに向かって走って来た。
菊花は迷う。万が一俺の母親だとすると無理に止めるのもためらわれたのだろう。
だから俺がやるしかない。抱き着こうとしてきたおばさんを座ったままスルリと躱すと立ち上がった。
「いきなり誰ですか?私はあなたに見覚えがありませんが?」
「拓真ちゃん・・・!私のこと覚えていないの?」
そのおばさんは案の定俺の全然知らない人だった。良かった。万が一川相雅枝が現れたらどうしようかと思った。まああの人は俺のこと拓真ちゃんなんて気色悪い呼び方しないけど。
「一切覚えていません。話を聞いていなかったんですか?私の記憶が無いことはすでに話に聞いていると思いますが」
キッと睨みつける。
「そう・・・そうね。それならまずは思い出してもらわないとね」
おばさんはおずおずと後ろの方に下がって行った。
抱き着いたままの勢いでなし崩し的に俺に親だと認めさせるつもりだったのだろう。冗談ではない。
「あらあらアナタが拓真さん?すみませんねえ彼女興奮しちゃったみたいで」
おほほと笑いながら知らんおばさんが入って来た。
圭が慌てて平伏して、それに美月と菊花が倣う。が、敢えて俺は倣わない。名乗ってもいない相手に下げる頭は持っていない。
「ええまったく。いきなり男子に抱き着くなんて場合によっては犯罪ではないでしょうか?気を付けて頂かないと」
「おほほ。息子に久しぶりに会ったんですもの。そりゃあ抱き着きたくもなるでしょうよ」
誰だこのおばさん?
圭がすぐに平伏したあたり北条の偉い人間か?
「拓真君。ご紹介するわ」
後ろから千幸様が紹介してくれる。この間の諏訪スタの時と比べると元気がない。化粧がいつもより濃い気がする。顔色が悪いのを隠しているのだろうか?寝不足なのかもしれない。
「こちら北条慈雲。北条家の現当主よ」
「よろしく拓真さん」
北条慈雲は優雅に微笑んだ。
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