カクヨムまで来て転生かよ
@hope37564
第1話嫌いなんだよ、メタが
「同じような話ばっかで馬鹿なんじゃねぇの」
神を名乗る女は苦笑していた。
俺の名前はササラウキョウ、巷にあふれる異世界転生モノを読みながら、つい口に出してしまう。
いまや見たくなくてもネット、本屋、挙句の果てには図書室にまである。
そして、それらの話は基本的に同じような展開をする。
俺は何も流行っているものを嫌っているわけではない。
あまりにも同じような話が多すぎる、と言っているのだ。
できることなら有名な本、三つくらいにしてほしい。
異世界転生モノなら、これとこれと……、これって感じで。
そうしたほうが作家にも利益が集中するし、新しいジャンルを書いてみようかという気持ちが沸き上がるのではないだろうか。
まあ、流行っているということは、何か理由があるのだろう。
今日は学校の宿題がある。
帰ろう。
本棚に立ち読みしていたモノを返し、踵を返す。
その時だった。
天からは大きな石が降り、目の前の自動ドアからはトラックが突っ込んできた。
「あれ、これどこかで見たような……。」
目が覚めるとそこは城の前であった。
噴水にもたれかかる様にして倒れていたようだ。
「……お目覚めですか?」
やたらと乳のでかい女性……、いや、痴女が目の前にいた。
胸元が開いた服でなぜかこちらに話しかけている。
「ああ……、俺ですか?」
「はい!」
まぶしい笑顔に眩暈がする。
脳に損傷が……?
「私は、あなたたちの世界で言う……。」
「待て!」
右手を伸ばし痴女を制止する。
どこかで見た展開だ。
「偶像崇拝は禁止されている。」
「……?」
驚いている。
きょとん、という擬音が聞こえてきそうだ。
「全世界で活躍したいなら、そういう配慮も必要だぜ。」
よし、なかなかにキマった。
みんなも眠る前に一日を振り返って、布団の中で悶えたりするよね?
「……なにか不備があったようですが、説明させていただきますね。私は……。」
「あなたに、異世界で暮らしていただきたいのです。」
こうして俺は冒頭のセリフを言う。
「同じような話ばっかで馬鹿なんじゃねぇの」
「え……、同じ、ですか……?」
「ああ。」
「担当編集は?」
「えっと……、私を創造したものに聞いてください。」
しまった、万葉集の世界観だ。
「どうせ拒否感はないんだろ?」
「えぇ……、基本的には。このまま命が尽きるのを待つのこともできますが……。」
「まあいい。じゃあさっさと転生させてくれ。」
「……わかりました。それでは、よき異世界ライフを!」
ライフとか言って世界観を乱すんじゃねぇ……!
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