十字架の答え

神父猫

十字架の答え

答えの無い感情を知りたい。

誰にも分からない。

分かるはずがない。

何度だって考えた。

気が遠くなる程、考えた。

そんな事を繰り返していると、ある日を思い出した。

神様を知った日だ。

幸せや愛には、規則や答えが無いと人々は口を揃える。

何故だろうか。

答えの無い感情の答えを探し続けるのは、あまりに滑稽ではないか。

だが、答えを与えて下さる存在がいたとすれば。

それは、世界の全てだと僕は思う。

僕は、探し続ける事に飽きを感じていた。

辞めたかった。

一度、始めた物語だ。

簡単に終わらせる事はできない。

答えが見つかるまで僕の身体は鎖で縛られている。

限界状態の僕に、光を与えて下さった。

眩しくて目を向けられない。

何度も愛情深く、目を撫でられた。

次第に、光度が下がっていくのを感じた。

目の前には、壮大な草原が広がっていた。

この光景が何なのか。

何度も考えたが分からなかった。

目を閉じて考えてみた。

脳に電撃が走ったように答えが浮かんだ。

この光景は答えだ。

答えの無い感情の答えだ。

僕が追い求めていた答えだ。

幸せや愛。

又は、憎悪や怨念。

答えの無い感情を世界に描写した光景だったのだ。

限りなく無に近いが、それはそこにある。

一切、風の吹くことのない異質な草原だ。

次に目を開けると、壮大な草原はない。

聖堂の中心で祈りを捧げていた。

僕は、直ぐに気が付いた。

これは、神様の祝福だ。

感じた事の無い快楽が身体中を駆け巡る。

思わず倒れ込んでしまう程に。

これが僕の神様を知った日。

この日から欠かす事なく、聖堂で祈りを捧げた。

壮大な草原を見る事は出来なかった。

快楽を得る事も叶わなかった。

神様の祝福を忘れられない。

何度も忘れようと努めた。

忘れたくても忘れられない。

あの異質な草原をもう一度見たい。

恐ろしい程の快楽を味わいたい。

次第に、祈る事を辞めて感情を失っていた。

神様なんて初めから存在していなかった。

幻だった。

僕の存在も世界も全てが幻だった。

答えの無い感情の答えは存在しない事だった。

それは、僕も世界も。

存在するから答えを求めてしまう。

初めから感情も答えも無かった。

聖堂の十字架を抱き締めた僕は、灰となって崩れた。

世界も同時に崩れた。

初めから何も無かった。

これが僕が求め続けた本当の答えだった。

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十字架の答え 神父猫 @nyanx

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