雨乞い

ユウゲショウ




 海辺の道路を走る赤色の自動車の後部座席から外の景色を眺める少年がいた。5,6歳という外見だが,外国の血統が混じっているのか,明るい髪色と灰色の目が美しく輝いている。少年の目に,裸足で歩く金髪の濡れた男性と水色のランドセルを背負った大きな靴を履く女の子が写った。たった一瞬しか見えなかったがその2人は晴天だというのにビニール傘を差して2人歩いていた。少年はどうしようもない感情に揺さぶられて静かに泣き出した。

 少年の啜り泣く後ろ姿に隣に座っていた,少年と似た容姿の女の子が声を掛ける。

「アメちゃん,泣いてるの…?」



 祖母から買ってもらった新品の靴が,靴箱から無くなっていた。学校中探しても見つからなくて,靴下のままバス停まで歩く。悲しくて,悔しくて涙が溢れてくる。足の裏も暑いし,痛くて涙が止まらない。海沿いの歩道を歩いていると,金色に輝く髪の男の人が私の目の前にしゃがみ込んだら、目を合わせて話しかけてきた。

「今日は土砂降りだな〜」

その人は晴れているのに全身濡れていて,片手には透明の傘を持っている。その人は自分の履いていた靴を脱いで私に履かせると,傘を開いて,まるで雨が降っているのかのように私の歩幅に合わせて一緒にバス停まで歩いた。

何も話さずにベンチに座って,ただバスが来るのを待っていた。

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雨乞い @yuzuho0110

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