眼鏡をかけてて何が悪い===眼鏡をかけている者が侮られるなら見返してやりますわ===

水無月 遊夜

第1話

 マドロン・C・ラシーヌは生まれてこの方、非常に視力が悪かった。そして、生まれた時代と国も悪かった。

 眼鏡をかけなければまともに物も見えないというのに、眼鏡をかけていると「蒙昧な方なのねぇ」とあざ笑われる。それでは眼鏡をかけずに魔法で視力矯正をすれば、今度はそれはそれで、「視覚補正しか使えないなんて、貴女、蒙昧の人なのね!」と鼻で笑われる。

 ああ、どちらにしても嗤われるのであれば、ならば私は眼鏡の価値をこの世界に証明してやる、とマドロンが固く決意したのは、7歳になったばかりの頃だった。

 それからのマドロンの努力は涙ぐましいものであった。テーブルマナーやダンスレッスンなどの基本的な淑女教育だけに留まらず、歴史や古典などの基礎教育から領地経営学、ダンジョン学、魔法学、実践魔法学、魔法工学と、様々な物を、合格基準よりも遙かに超えて、一流と誰からも絶賛されるようになるまで身につけた。

 幸い、見目も美しく育った。王都の学園入学前の貴族の子息令嬢を集めた社交界では、良くも悪くも注目を浴びた。

 煌びやかに着飾った子息が、その親や代理人とともにホールに一人、また一人と足を踏み入れる。

 先に入っていた者達は新たに訪れた者達を一瞥し、あの方はどこそこの、あのドレスは今流行りのデザイナーの作品の、と品定めをしている。

 様々な人々の視線が行きかう中、マドロンが父親とともにその場に足を踏み入れると――ざわりと、どよめきが起きた。

 腰上まで緩やかにウェーブを描くピンクブロンドの髪は、王都でも名の知れた宝石商から取り寄せた最新のブローチ。胸元を飾る赤いネックレスは、母から譲り受けたものだが古臭さは感じさせず、ふわりと身を包むドレスを静かに彩っていた。整った顔つきには自信が満ち溢れており、青紫の両の目は、銀縁の眼鏡にはめられたレンズを通して真っ直ぐに社交場を見つめている。

一歩、また一歩と父とその中へ入っていく。硬さを感じさせず、しかし、自然と真っ直ぐに伸びた姿勢にほう、と 感心の息が漏れる音が聞こえた。同時に、ひそひそと、あの方は、と、マドロンの素性を探るような言葉も。

 耳に届く言葉の中の殆どは、「あれほど美しいのに眼鏡なんて物をかけて。蒙昧の方の考えることはわからないわ」なんて、そんな台詞が殆どだったが、マドロンは堂々と胸を張っていた。そんな言葉、眼鏡をかけ始めてから12年、さんざ言われてきている。右から左に流しながら、マドロンはまっすぐに歩き、一人の子息ににこりと挨拶をした。

 半年ほど前、マドロンの父と相手方の父とで決まった婚約者。礼装に刺繍された紋章から、相手がそうであるとわかっている。相手もそうだろう。

「こうしてお会いするのは初めましてですわね。マドロン・C・ラシーヌです」

 マドロンがドレスの裾を軽くあげ、少しだけ頭を下げる。緊張の欠片もない所作に、近くにいた見ず知らずの貴族方が少しばかり、目を丸くした。蒙昧の者でも礼儀はあるらしい、とぽとりと落とされた。

 さて、相手の令息の名前はたしか、とマドロンが名前と相手の顔を結びつけようとしっかり相手の顔を見つめたとき、その乾燥した目つきから、マドロンはこれから起きることをすべて察した。

「そうか。お前が例の『蒙昧のマドロン』か。本当に眼鏡をかけているとはな。悪いが、眼鏡をかけているならお前との婚約は破棄させてもらう」

 全く興味のないといった冷淡な眼差しとともに、そんな言葉を向けられたマドロンは、相手の名前を忘れることにした。斜め後ろで、父が落胆しているのを気配で感じ取ったが、これももう何度目か。マドロンの父も相手方の父に目配せしたかと思うと、仕方ない、とばかりに一つ、息をついた。

 正式な契約破棄は、この後、マドロンの心情関係なく両家で行われるのであろう。否、マドロンとしても、相手の目を見たときからこの婚約は無くなると察していた。

 だからこそ、それは負け惜しみでも何でもなく、ただの、マドロンの本心であった。

「あら、眼鏡をかけているだけで蒙昧だなんて。結構。私としても見る目のない男性はお断りさせていただきますわ」

 そうして、マドロンは身を翻し、ホールの、令嬢が集まるエリアに足を向けた。マドロンが近づくと、まるで近寄りたくないとばかりに人が左右に分かれていく。人混みの中を歩かなくてちょうどよい、とマドロンはそのまま壁際の花となる。さっと、目線をホール内に走らせる。

 今日、この場に集まった者の殆どは数ヶ月後には王都の学園に入学することになっている。

(さあ、学園生活でどのように見せつけてやりましょうか)

 マドロンは、この先の学園生活を思い描きながら、小さく口端をつり上げた。

その微細な変化がどういった心情から描かれている物か、心情を知ることができたのはマドロンの父ただ一人。それ以外の人々は、衆目の中婚約破棄をされたというのに、余裕そうに微笑んでいるマドロンを、ただ、『眼鏡をかけているから道理もわからぬ蒙昧の者』と。そういう評を下して、数分のうちにマドロンのことなど忘れてしまった。

 壁の花となったマドロンは、そのまま誰にもダンスに誘われることなく、その日の社交を終えた。父がどこかの家系の者と何かしら話しているところを、あるいは、ホールで子息令嬢がたどたどしくダンスを踊る様子を、マドロンは見るともなしに見つめていた。

 そんなマドロンを、興味深そうに見つめていた視線が、一つ。けれど、マドロンが気づく前にその持ち主はそっとその場を後にした。




 マドロンが父と社交場から帰宅した時、屋敷の入り口で出迎えてくれた執事と母親は、どうでしたか、と質問を投げかけた。父は「また破棄だ」と一言。執事は「次のお相手をお捜しします」と一礼をし、母はやはり、と肩を落とした。

「やはり、社交界デビューの時だけでも眼鏡は外していった方がよかったんじゃないかしら」

「あら、お母様ったら変なことをおっしゃる。社交場では魔法は禁止。魔法を禁止されては、私、周囲の物など禄に見えませんもの。きっとダンスを踊っても余計な恥を掻くだけですわ。そちらの方がラシーヌ家としてはよろしくないでしょう」

「対面的に魔法は禁止されているだけで、視覚補正や感覚強化などは内々に認められているといったでしょう。ああ、もう……」

 母がレースの美しい扇で口元を隠し、大きくため息をついた。

「フォンテーヌ家は偏見少ないと聞いていましたのに……」

「噂は所詮噂ですわ。ご安心を。少なくともノエルの縁談は纏まっているのですから、ラシーヌ家が途絶えるということもありませんわ」

「バシュラール家の長男でしょう! 子宝に恵まれなければなりませんし、そもそもノエルがおとなしく貴族の家庭に収まるものですか」

「――ノエルはまたダンジョン探索か」

「ええ、ええ。それも街の傭兵団と!」

「あら、新しい探索品はあるかしら。魔法道具研究も進めたい頃合いですし、ノエルが戻ってきたら教えてくださいな」

「もう!貴方たちがそんなだから、せめて縁談ぐらいはと思っているのですよ。少しは前向きに、そして妥協をして相手に合わせるということもしなさい」

「お母様も妥協をしていらっしゃるのかしら」

「結婚をして、それ以上に愛すればよいだけでしてよ」

「まあ、お父様との婚約の時に一目惚れしたと幼少の頃にお話ししてくださったじゃありませんか。それではお母様はお父様に惚れ込んでいるということですわね。よかったですわね、お父様?」

「んっ、んん……まあ、うん。我々貴族の婚姻は義務であり責務だが、互いに納得いくのであればそれに越したことはないからな。まあ、学園で結婚相手を見つける公爵や辺境伯もいるぐらいなんだ。焦らずともいいだろう」

「あなた!あなたがそんな風に甘やかすからですね、マドロンだけではなく、近頃はアレクサンドルまで社交を疎かにし始めているのですよ!ノエルだってそもそもは……!」

 両親の言い合いを後ろに、マドロンは自室へ向かう。マドロン付きの侍女がその後ろからついてきて、マドロンが社交場へ出ていた間のことを軽く話してくれた。

 二つ下の妹であるノエルが、最近、発見されたダンジョンの探索に向かったこと――もちろん、ノエルの"護衛"はいる――アレクサンドルの温室で、ダンジョン産の植物が一つ根付いたこと、それから、母であるロザリーは結果を聞くまで今日の縁談がうまくいくことを本当に心配していたこと。

「お母様ほどではないけれど、私も評判が本当であればフォンテーヌ家の方と婚約をしてもいいとは思っていたのですけれどね」

「マドロンお嬢様を袖になさるなんて、一体何をされたのですか?」

「開口一番、眼鏡をかけているから嫌、ですってよ」

「まあ、見る目のないお方」

「そんな方とはお付き合いなさるだけ時間の無駄ですよ。マドロンお嬢様には公爵家か、いっそ王族ぐらいでないと!」

「ふふっ、ありがとう」

自室に戻りつくなり、侍女に手伝ってもらい装飾品を外していく。湯浴みはいつ頃にされるか尋ねられたので、できるだけ早めにとマドロンは答えた。

侍女二人は恭しく一礼をすると、浴室の準備を始めた。

窓の外はすっかり暗くなっており、星々が輝いている。月は煌々と光り、夜の闇の中柔らかな光のカーテンを下ろしている。マドロンはしばしぼんやりと窓の外を眺めていた。窓に微かに映るのは、柔らかなウェーブを描くピンクブロンドの髪、青い瞳。それから――銀縁の眼鏡。マドロンは右手の人差し指をまっすぐに伸ばし、その指先に小さなろうそく大の炎を点した。魔力で燃える炎は揺れることなく真っ直ぐに、周りを照らしている。マドロンが眼鏡をそっと外すと、世界は途端に輪郭を融かし、光と色が曖昧に混ざる。窓に映っていた自身の姿も滲んだ世界に消え去った。一度、ゆっくりと瞬きをして口の中でいくつかの呪文を唱える。そうしてもう一度、窓を見る。今度は、眼鏡をかけていたのと同じぐらいの解像度で、窓に映る自分を確認できる。けれど、そこに眼鏡はなく、指先に点した炎も消えてしまった。

 マドロンは、一度手の中の眼鏡を見つめて――、ふっと、微笑んだ。

(何を言われようとも――こんな便利で素敵な物、手放すはずがないでしょう?)

 そぅ、と眼鏡をかけ直す。明瞭な世界がマドロンの前に広がっている。

 夜の帳、月の光に濃い闇を落とす木々。瞬く星々。屋敷の陰から陰へと移動する小動物の影。窓のガラスに反射する自身と、明るく照らされた室内の装飾。そっと控えている侍従の顔。

「マドロンお嬢様、支度が調いました」

「ありがとう。済んだらすぐに眠ってしまうわ」

「かしこまりました。それと、明日ですが――」

「聞いているわ。学園の寮に入りますからね。自分で身支度を済ませますわ」

「はい。何かお困りでしたらすぐにお申し付けください」

「ええ」

 そうして、マドロンの一日は終わった。

 柔らかなベッドの中で、マドロンは今日の社交界で顔を見た貴族達を思い返す。誰も彼も、同じような表情をしていた彼ら。数ヶ月後には、王都の学園でしばし同じ時を過ごす彼ら。――マドロンには、自信があった。数ヶ月後の学園で、彼らをあっと言わせる自信。それは、すぐにではないかもしれない。けれど、確実に、蒙昧の者だの、眼鏡をかけているから、なんて言われなくなるほどの、何かを起こせると。

(いえ、油断はいけないわ。先生にも言われたでしょう。『眼鏡をかけるからには、何もかも一流になってようやく並と捉えられる』のだと。ええ、研鑽を怠るつもりはありませんとも。けれど――)

マドロンはベッドの天蓋を見つめ、ふっと微笑んだ。

(ようやく、あっと言わせられそうなのだもの。そこでようやくスタート。眼鏡だからと嗤われるようなこの社会の価値観――塗り替えてみせるわ。何年かかっても)

長年の、けれど新たな決意を胸に、マドロンはゆっくりと眠りについていった。





 ダンスレッスンと経営学の授業を終え、昼食も終えたマドロンは魔法の訓練をしようと騎士団の訓練所に向かっていた。と、歩くマドロンの後ろの方から、貴族とは思えないほど大きく、元気に声をかけられてマドロンはやれやれ、と振り返る。

「おかえりなさい、ノエル」

「ただいま帰りました、マドロン姉様」

 軽鎧にパンツスタイル。腰には短剣を二つを携えている少女は、ダンジョンから帰ってきたばかりなのだろう、まだ土埃もついたままだった。けれど、ホワイトグレーの髪はキラキラと陽光を受けて輝いている。マドロンのものよりも紫がかった瞳は、眼鏡の奥からでも興味深い物が見つかったと如実に訴えている。

 縁の太い、レンズ面も大きな少し武骨な眼鏡を、ノエルはかけ直し、軽くほこりを払いマドロンと正対する。

「成果があったようね」

「ええ、もちろん。マドロン姉様が提案してくれた術式もうまくいきましたし、アレクサンドルが喜びそうな新種のヒカリゴケも見つかりましたし――そうそう、姉様にはこちらを」

 マジックポシェットから取り出されたのは、うっすらとそれ自身が光を帯びた鳥の羽だった。黄色の羽毛は毛先がパサつくこともなく、一本一本がピンと毛を立たせている。差し出されたそれに、まさか、と思いつつもマドロンは受け取る。柔らかなさわり心地に、うっすらと魔力も感じられる。受け取ったとき、少しばかりピリリとした静電気がマドロンの肌の上を走った。

「まさか、サンダーバードの?」

「ええ、尾羽です。今回のダンジョンの主でした。一つ分けてもらえないか尋ねたら、生え替わりの物をいただけました。姉様の趣味に合いますか?」

「――もちろん」

 マドロンはそれを汚さないよう、侍女から受け取ったハンカチーフでそっと包んだ。

「まったく、貴女がダンジョンに潜るようになってから、私は大助かり。ありがとう、ノエル」

 素直に褒めると、ノエルも素直に喜んだ。と、二人が話しているところに、頭一つ分小さな男子がそっと横から入ってきた。

「お帰りなさい、マドロン姉様、ノエル姉様」

 エメラルドグリーンの瞳が、マドロンとノエルを見上げる。太陽を溶かしたような髪は、日の光を受けより一層キラキラと輝いている。彼もまた、ノエルやマドロンと同じく眼鏡をかけている。

「アレクサンドル。ただいま。ダンジョン産の植物が根付いたと聞きましたよ」

「ただいま。これ、お土産のヒカリゴケ!」

 ノエルからヒカリゴケの入ったシャーレを受け取りながら、アレクサンドルはマドロンに今度見に来てくださいとにこやかに答えた。

 そのまま談笑を始めそうな三人だったが、アレクサンドルの従者がもう少しでティータイムだからと、いったんその場は解散となった。マドロンは、騎士団のところに向かおうとしていた足を翻し、自室に戻るとノエルから頂戴したサンダーバードの尾羽を保管容器にそうと差し込んだ。蓋をして、戸棚に置けば、パチリと小さな雷光が走った。その雷光に遭わせて、側に置いていたダンジョン産の物品が反応を返したので、傍に置いておくとよくないか、とマドロンはサンダーバードの尾羽が入った瓶を他の物から離れた場所に置き直した。

 それから、今度は庭園へ向かう。庭園にはすでにアレクサンドルが席に着き、紅茶を味わっていた。やや遅れて、身を整え簡易なドレスに着替えたノエルもやってきた。

 姉弟三人、それぞれいつもの席に着くと、紅茶の友にと甘味が差し出された。今日はマカロンらしい。パステルカラーの小ぶりな菓子が皿に綺麗に並べられていた。

 さっそく、とノエルが一つ、二つと摘まむ。ニコニコと微笑みながら、アレクサンドルも一つ。それから、マドロンも一つ、口にした。

「そういえば、マドロン姉様。昨日はどうでしたか」

「相手の見る目がなかったと聞いているのではなくて?」

「やだなぁ、それ以外のところですよ」

「そうね……数人とは仲良くなれそうだったわ」

 あはっ、とアレクサンドルが笑い、ノエルはふうんと関心のなさそうな声を上げた。

「眼鏡、便利なのにね」

「ノエル姉様の"便利"はまたベクトルが違うと思うけど、まあ、同意かな」

やれやれ、とアレクサンドルは肩を竦めながら眼鏡のブリッジを指で押し上げた。

アレクサンドルもノエルも、それ以上は昨日のことは聞いてこようとせず、むしろ話題としてはノエルの昨日の探索の結果のことになった。ダンジョンとしては小規模だったが、ダンジョンの主がサンダーバードだったことと、それにちなんで雷属性を帯びた結晶が多かったこと、ヒカリゴケも見たことのない光り方をしていたとノエルが語る。また、父様への報告書が分厚くなりそうだねとアレクサンドルが笑うと、ノエルは最近はようやく書くのにも慣れてきたけど、億劫だなぁとノエルが唇を尖らせた。義務の一環だからやるけど、と、ノエルはまたマカロンを一つ口に放り込んだ。

ふと、地面に伸びるノエルの影がうごめいた。そこから、ぬるりと現れた、白銀のオオカミのような姿をした四足の獣は、ノエルの傍によると何かを訴えるように鼻を鳴らした。ノエルは勝手知ったるかのように、マカロンを一つ手に取ると、その獣に与える。

「聖獣もずいぶん慣れてきましたわね」

「うん。影から出てきたってことは遊びたいのかも。ちょっと騎士団の訓練所いって遊ばせてくる」

「いってらっしゃい」

ノエルを見送り、マドロンとアレクサンドルはそのまま茶会を続けるつもりだったが――そこへ、どこか慌てた様子の父、フェリクスが足早にマドロンのところにやってきた。その手には一通の手紙がある。

「マドロン、お前宛の手紙なんだが――」

差し出されたそれをうけとり、マドロンは表裏と確かめる。封蝋に押印された紋章は王家の物。封書の裏にもうっすらと王家の手紙を表す刻印がある。

ナゼール・E・エルヴェシスと差出人の名前が端に添えられていた。

「エルヴェシス王家の第二王子……」

「心当たりは?」

「ありませんわ。ここで確認しても?」

「ああ」

 メイドからペーパーナイフを受け取り、マドロンは封を切った。中の文章に目を通していく。冒頭は季節の挨拶などもあった格式張った物。本題まで軽く読み飛ばし、マドロンは要件を確かめた。――そのマドロンの目が、丸く開かれた。

「なんと?」

 父がマドロンの様子をうかがうように尋ねる。マドロンは、手紙を父に差し出し、そして、自らの口でも手紙の中身を伝えた。

「私を――婚約者として迎え入れたいと」

内容に、その場にいたアレクサンドルも、手紙を手にした父もマドロンと同じように、目を丸くするのであった。






続く

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