第11話

電車の中、二人は揺れる車内で肩を寄せ合っていた。外の風景が静かに流れる中、花音がふいに小さく呟く。


花音

「キスしたいなら、良いよ。」


その言葉に舞香は、すぐに落ち着いた声で返す。


舞香

「大丈夫です。」


花音

「えー、ほんとに?…ん、ちょっと期待してたんじゃない?」


舞香

「まあ、少し。」


花音は笑みを浮かべ、軽く肩をすくめる。


花音

「でも、中学卒業までには…」


舞香

「え、なにが?」


花音

「気にしなくていいよ!こっちの話だから、笑。」


舞香は微笑む。


舞香

「ふむ?」


花音

「うむ?」


舞香

「なぬむ?」


花音

「なぬぬ?」


二人はまるで合言葉のような言葉をやり取りしながら、次第に顔を見合わせ、声を出して笑い出した。お互いの瞳の奥にある温かさを感じながら、電車の揺れに身を任せていた。


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