ラプラス変換
「神様、ラプラス変換ってなんですか?」
「おまえ、どこでそんな言葉覚えたの?」
「いや、ネットで好きなアニメの情報を検索しようと思ったら、キーワードを打ち間違えて、たまたま出てきたんです」
「それってラ〇プラスか? ラ〇プラスだろ?」
「は、はい……」
「アニヲタが悪いとは言わんが、てめえはとりま、働けよな?」
「す、すみません……」
「まあ、いいか。ラプラス変換な。微分方程式を解くための手法のひとつで、電気回路の制御設計とかなんかで大切になってくるやり方だわな」
「び、びぶん……」
「微分って聞いただけでもうめまいだろ。ま、微分自体についてはまたあとでちゃんと教えてやるからさ。微分方程式は微分が入ってる方程式程度の認識でオーケーだ」
「どんなものなんですか?」
「条件を満たした微分方程式が、そのままじゃ解くのが難しいって場合に、一度簡単な代数方程式に変換してやって、それをちょこっといじってやってから、またもとに戻す。するとあら不思議、微分方程式の解になるって寸法よ」
「それって逆に手間がかかってるんじゃ」
「急がば回れってやつだよ。人間の人生と同じだ。おめえはペースがほとんど止まってるがな」
「あはは……」
「ま、それはともかくだ。このラプラス変換のイメージはまさに異世界転生なんだ。順番に説明するから、よく聞いてろよ」
「は、はい」
「まず、異世界転生ものだと、とりま異世界へチートとして転生するだろ? これが第1段階。微分方程式にラプラス変換をかけたところとしよう。するとさっき言ったように、四則演算だけで解ける代数方程式に形が変わる。異世界転生ものだと、チート転生後は無双して、その世界を攻略するだろ? これが第2段階。ラプラス変換をかけた代数方程式をちょちょいと解いてやる。で、最後の第3段階。異世界で最強でなった主人公は現実世界へ戻り、幸せに暮らしましたとさのとこだ。解いた代数方程式に、ラプラス逆変換ってのをかけてやると、もとの微分方程式の解になるってわけだ。今回はたとえやすくていいな」
「うーん、しかし……」
「なんだよ? なんか言いたいことあるの?」
「その異世界転生のパターンは古典的なテンプレであって、最近のな〇う系は――」
「そこっ!? そこなの!? 説明するためにたとえもわかりやすくしてやってんじゃん! ああ、腹立つ! やっぱてめえは消す!」
「わ、わ、わ! 待ってください神様! すみません! 謝りますから!」
「はーあ、わかりゃいいんだよ。ったく、クズが」
「で、自分はいつ、転生させてもらえるんですかね……?」
「……」
「……」
「……おめえな、ぶんをわきまえろよ? てめえにメシウマくれてやるくらいだったらよ、クソにたかるハエでも助けてやったほうがマシだぜ?」
「……はは」
「バカは死んでも治らねえか、はーあ」
「あはは……」
こうしていったいどちらが悪なのかよくわからない流れは、延々と続くのであった。
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