第十一話 攻城戦

俺たちは敵の軍が完全に通過するのを待って、馬に飛び乗り迂回路を通って大急ぎでフルデリ城へと向かった


「数は300は居たな」

ハンターに問いかけると彼は深く頷いて記憶を反芻する様に指折り数える仕草をした


「あぁ、間違いない。騎兵100に歩兵200だ。治安維持に必要な最低限の兵を残して出陣したらしい」

あの城の兵は概算で350。そこから更に兵が減ったとなればあの城には50も残っているか怪しい

「これで勝利は間違い無いですね」

セシルの言葉にさも当然の様に頷いてみせるが俺もまさかここまで策がしっかりとハマるとは思わず。驚きを隠せないでいた。


城へ戻り、父に結果を報告すると父は「でかした!」とだけ叫び、臨戦態勢で用意させてあった部隊を即座に動かした


俺たちは休むよう勧められたが、初陣も済ませておこうと言うことで無理を言って参陣し最後尾の歩兵の戦列の更に後ろから3人で馬に乗り行軍について行った



数日前に訪れた様に呑気に検問をしていた門番たちは俺たちの軍勢を見て慌てて城の門を閉じようとしたが父の率いる騎兵30騎が検問の列に突っ込んだ


戦闘で検問中だった門番は慌てて槍を握り直して抵抗しようとするが次の瞬間、父の振り抜いた大剣に胴と頭が綺麗に分断されてしまっていた


俺を蹴飛ばしてくれやがった隊長格が慌てて詰所から出て来て剣を抜くが後続のナタリーの長槍に貫かれ持ち上げられて絶命した

いい気味だ。


詰所の兵士を殲滅したことによって守兵のいなくなった門は閉まることなく大きな口を開けたままになっていた。

「ゆけ!民間人には手出し無用!抵抗してくる奴らのみを殺せ!目指すは城館のみぞ!進め!」

父の言葉に兵士たちが威勢のいい掛け声をあげて城下街へと雪崩れ込んでいく


道を歩く数少ない平民も慌てて家の中に逃げ込んで俺たちが城館へ一目散に向かっていくのを恐る恐る見ているだけだった

そのまま道中に点在していた衛兵の詰所を無力化しながら城館への道を急いだ


「ナタリー!ベートン家の軍はこのまま北門の制圧に向かってくれ!いつここの主人が戻ってくるかわからないからな!」

俺が叫ぶとナタリーは怪訝そうな顔をしながら頷き、ベートン家の軍200を率いて北門へと向かって行った

俺たちはそのまま父の部隊に続いて城館へと傾れ込む


城館には兵士が30人ほどおり隊列を組み、槍を構えて俺たちを待ち構えていた

父は馬を止めて敵兵に向かって叫んだ

「貴様ら!既に北門と東門は押さえた!この城は我らの物、無駄な死者は出したくない!キースとか言う簒奪者の利権をそうまでして守りたいか!今、抵抗を止めれば貴様らは我らの軍で雇うと約束しよう!」


父の口上に兵士たちは顔を見合わせて数秒の逡巡はあったものの一人また一人と槍を手放し両手を上げてその場に立ち尽くした

父が目配せすると配下の兵たちは急いで槍を回収し、降伏した兵士達を一箇所に集めて座らせて無力化した


「歩兵100はここに残り捕虜の監視にあたれ!残りは城館の占領だ!ついて来い」

父は既に遮るものがなくなった道を悠々と馬で進み無傷の城館へと入った

その後、北門へと向かわせたナタリーの隊からもつつがなく制圧を完了させたとの報告が上がった。


ここに、キャラハン家によるルカント城の制圧は完全に成ったのである

だが、勝利の余韻に浸る間もなく即座に城の防備を固める為に兵を城門や各詰所、民への説明のために分散させた。

なぜならキースの部隊はまだ300近い軍勢を連れている。気配を察してこちらに戻ってくれば今度は城を盾に守戦をしなければならなくなる。

同数の城攻めは定石ではないとはいえ、後に引けなくなった人間が何をするかは想像できないので備蓄状況や防衛設備の有無の確認。領民の懐柔は急務であった


俺たち3人はそのまま領民への説明に当たることになった

彼らもそう主君がコロコロ変わっては困惑するだろうと思い一先ず街の有力者と思しき者たちを集めた

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