「プリミタリアン(Primitarian)」という詭弁
前回書いた「貝食主義」や最近読んでいる「意識はなぜ生まれたか」という本の注意スキーマ理論に基づき、こんな詭弁を展開してみます。(なお、これは手の込んだ冗談なので本気にしないでください。私はプリミタリアンでもなんでもない、ただの雑食主義です、あしからず)
◎プリミタリアン食事論:意識に基づく新しい食事倫理
・意識の階層構造と痛覚・痛みの区別
現代の食事倫理を根本から見直すため、まず意識の階層構造を明確にする必要がある。脊椎動物の「視蓋」は原始的意識の基盤となり、鳥類・哺乳類の「大脳皮質」はより高次の意識と潜在的注意を発達させているが、無脊椎動物や植物はそもそも意識を持たない存在である。ここで重要なのは痛覚と痛みの区別で、痛覚とは侵害刺激への生理学的反応(反射的回避行動)に過ぎず、痛みとは意識による不快な主観的体験である。つまり、意識がなければ痛覚があっても痛みは存在しないのである。
・従来の食事倫理への疑問
この前提に基づけば、従来の食事倫理には重大な疑問が生じる。第一に、意識のない存在に人間の倫理や痛みの概念を当てはめるのは、単に人間が他の生物に「感情移入しているだけ」ではないだろうか。第二に、意識がない動物は痛覚があっても痛みを感じていない可能性が高く、それならば倫理的配慮の必要性があるのだろうか。
・論理的結論と功利主義の矛盾
"The question is not, Can they reason? nor, Can they talk? but, Can they suffer?"
Jeremy Bentham
この論理を突き詰めると、意識がない生物を殺すことが問題だとするなら、昆虫を殺すことは植物を殺すことと道徳的に同等であり、魚を殺すことは野菜を収穫することと意識の有無という点で変わらないという結論に至る。さらに、ベンサムの功利主義が現代ヴィーガニズムの源流となっているが、功利主義の前提である「幸福の総量を最大化し、苦痛を最小化する」という考え方は、意識がなければ幸福も苦痛も存在しないという現実と矛盾している。つまり、意識のない存在への配慮は功利計算に含める根拠が全くないのである。
・実証的観察による理論の裏付け
実証的観察もこの理論を裏付けている。例えば、カブトムシはカラスに腹部を食べられても動き続けるが、人間なら激痛でショック死するような状況でも平然と行動することは、痛みという主観的体験が存在しない証拠である。同様に、カエルや魚の「意識」も基本的には高度な反射システムに過ぎず、特定の視覚パターンに対して決まった運動プログラムを実行するだけで、「今ハエを食べたい」「危険で怖い」といった主観的体験は存在しない可能性が高い。
・人間の擬人化傾向の問題
この問題の根底にあるのは人間の擬人化傾向である。人間は石や海、山に感情を投影し、植物に「生命」を感じ、虫や魚に「痛み」を投影するが、これらは全て同じ擬人化の現象である。石・海については誰も本気で意識があるとは思わず、植物については「生きてる」と言いながら切り花を買い、昆虫・魚については「痛がってる」と言いながらも実際には擬人化に過ぎず、真に意識的体験を持つ可能性があるのは哺乳類・鳥類だけである。問題は、レベル1〜3は意識の有無という点で本質的に同じなのに、道徳的扱いが異なることである。
・プリミタリアンという新しい食事スタイル
そこで提案するのが「プリミタリアン」という新しい食事スタイルである。これは意識を持たない、または原始的意識レベルの生物のみを食べる食事法で、具体的には無脊椎動物(昆虫、貝、甲殻類、イカやタコを除く軟体動物)、原始的脊椎動物(魚、両生類、爬虫類)、そして全ての植物を食べて良いとし、大脳皮質による高次意識を持つ哺乳類と鳥類は食べないというものである。この食事法の意外な利点として、昆虫は完全タンパク質・B12・鉄分が豊富で、魚はオメガ3・DHA/EPAが完璧、貝類は亜鉛・鉄分・B12の宝庫であるため、結果的にヴィーガンより栄養不足になりにくいという栄養面での優秀さがある。
・核心的主張と社会への問いかけ
この理論の核心的主張は、虫や魚を食べることが本質的に野菜を食べることと意識の有無という点において大差ないということである。現代の食事倫理の多くは科学的根拠よりも感情や文化的慣習に基づいており、真に論理的・科学的な食事倫理を追求するなら「プリミタリアン」が最も合理的である。社会への問いかけとして、「虫に共感するなら、なぜ石に共感しないのか?どちらも意識がないのに」という疑問を投げかけることができる。
・結論
意識の有無を基準とした食事倫理なら、哺乳類・鳥類以外は何を食べても倫理的に問題ない。これは感情的な擬人化を排した、最も科学的で論理的な食事スタイルなのである。
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