第55話 ヴァタウ 19
「リキミニ……私もいいかげん辛抱たまらんのだが……」
あれから半月ほど、アイゼは徐々にオルクスの祝福を我が物としてきた。衝動は抑えられていき、短い時間で正気を取り戻すようになってきた。
「まだ動いてはなりませんよ、アイゼ様」
「はい……わかっております……」
そう言いながらも、アイゼは目の前で切なそうな顔をしていた。
先ほどからアイゼが覆い被さり、繋がったままリキミニに待ったを掛けられていたのだ。何をかというと、当然ベッドの上での話だ。昨日はエイリスが殿を務めていたが、その際、アイゼへの指導としてリキミニが同席する場で二人は交わっていた。
最後、リキミニが部屋を出た際に覗いてみると、アイゼと共に眠りについたエイリスは、それはもう満足そうな顔をしていた。だからどれほどのことが行われたのかと期待していたのだが……。
私から触れることと口付けが許されていただけで、アイゼからは何もしてはならないと言われていた。それもかなり長い時間だ。いつもであれば、アイゼによって翻弄された私が尽き果てている頃だ。
「……いや、リキミニ、もういいだろう。アイゼも辛そうだ」
「なりませんよ。これはアイゼ様のためなのです」
アイゼもそうだが私も我慢がしきれず、もじもじと身体を捻っていた。
「……私は普段通りで十分幸せなのだが……」
「ええ、ヴァタウ様はそうでしょう。ですが今のままではヴァタウ様の体力が先に無くなり、アイゼ様は消耗されないままです」
「……しかし……」
「言い訳は無用。ヴァタウ様は目の前の夫に集中しなさい」
そうはいうものの、じっとしていることもあって欲求だけが私の中で大きく狂い踊っていた。
「――母は病み上がりで体力が無いとき、地母神様の秘儀に伝わるこの方法で交わったといいます」
いや、病み上がりなら素直に寝てろよ――とは思ったが、口に出す余裕がなかった。
「アイゼ様はヴァタウ様の体力を維持しながら、自身がより大きく達する方法を学ぶ必要があるのです。
言われて見れば、アイゼから主導権を取ることは難しい。常にアイゼの掌で踊らされるだけなのだ。それを考えれば確かに私の方が体力の消耗は大きいだろう。今更アイゼの強壮さを侮ることなど無いが、相変わらずこの体のどこにそれだけの精力が隠れているのか。
◇◇◇◇◇
「では、アイゼ様が下になってください。そのまま動かないように」
「いや、だがリキミニ……」
長い時間を我慢させられ、ようやくリキミニは次の指示を出した。
「ヴァタウ様は恥ずかしがっていないで上へ」
「いや……」
「上へ」
……私はしぶしぶアイゼに跨り――
「アイゼ様、ヴァタウ様の筋肉の動きが伝わるでしょう? これはヴァタウ様がアイゼ様の形をなぞった際の感情がそのまま伝わっているのですよ。そう感じてごらんなさい。そうすればヴァタウ様の気持ちをさらに知ることができますよ」
――などとリキミニはアイゼに話しかけていたが、私はそれどころではなかった。押し留められていた欲求が、自由になった途端爆発していたのだ! 擦り付けるような動きが止められなくなり、ひたすらにアイゼを求めていた。他の誰だろうと気にもしないはずが、アイゼの前ではこんな姿さえ晒すのが恥ずかしい!
アイゼは半身を起こして尻に触れ、筋肉の収縮を感じていた。動かないようにと抑えているはずの、アイゼの指先の僅かな動きが普段の何倍にも感じられ、さらに私の感情が尻の筋肉を通じてアイゼの手に返っていく。
「アイゼ様、そろそろ限界ですか?」
「は……はい……」
アイゼの様子を感じ取ったリキミニは――
「では、動いて宜し――」
バタン――と私は引っ張られ、アイゼに向かって伏せた。手ではない。手で引っ張られたのではなかった。私は体の中から引っ張られたのだ。
そこからのアイゼは凄まじかった。
――何だこれは、天界の神々が争っているのか?
そう思われるほどに私は翻弄された。普段のアイゼよりも激しいだけではなく、アイゼ自身も苦しそうだった。
――ああ、そんな顔をしないでおくれ。私が解放してあげるから……。
私は残った力を振り絞り、アイゼを締め上げた。
やがて激しい奔流が、いつ止まるとも知れない長い長い脈動と共に溢れんばかりに吐き出された。
アイゼの腋に頭を添えると、いつになく消耗した様子で深く息をしているのがわかった。肌が滑るほどに汗をかき、上下させている胸に手をやると、アイゼは片手もたげてそっと頭を撫でてくれた。その手の動きはいつものような慣れた手つきではなく、疲れ果てた身体でなおも
――アイゼもこんなに感じてくれたのだな……。
ぐったりとした身体を横たえ、お互いが共に果てると言う至極の眠りについたのだった。
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またスロー叡智布教をする作者!
中から引っ張って伏せさせるやつって、女の子側からするとどんな感じなのですかね。引っ張られたから何となく伏せてしまったという感じなのでしょうか。
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