第5話 風呂

「うひょーベッドだー!」


「ちょww大石騒ぎすぎだろー」


「いや無理もねーだろー、だってこっちの世界に来て初日の寝場所が大広間の硬い床で全員で雑魚寝だぜ?そりゃ騒ぐだろ」


「それな、ホント酷い目にあったわ。もう2度とあんな国行きたくねぇな」


「取り敢えず今は休もうぜ、風呂もあるみてぇだけどこのベッドふかふか過ぎてダメになるやつ…だ…」


「大石のやつ寝るのはぇーな、まぁむりもねーか。おし!お前らはどうする?」


「そうですね、拙者達は先にお風呂を頂いきたいと思います。」


「そうでござるな、まずは体を流してスッキリしたいでござる」


「了解、じゃあ二組にわかれて順番に風呂行くか。お前ら着替えとタオル持って先に風呂入って来いよ、俺ら待ってるからさ。あ、帰った時俺等が寝てたら起こしてくれ」


「わかりました、ではお先にお風呂いただきます」


「あぁ、行って来い」


一方女子部屋…


「いい人に出会えたみたいで本当に良かったですね…」


「そうだねー、あーし襲われた時とか死ぬと思ったもん」


「それな、何より生き残ってもあの豚の妾になるかもしれないっていうクソみたいな状況ではなくなったねー」


「そうそう、クロイワさんと源さんには頭上がらないなー」


「感謝、感謝」


「まぁ色々とあるけど取り敢えず皆でお風呂行かない?」


「はい、昨日召喚されてからお風呂入ってないから早く体洗いたいです」


「それー、しかも今日日差しも酷くて汗でベトベトだよ」


「そうですね、不知火さんと前園さんの言う通り、私もスッキリして頭切り替えたいですし」

「じゃあけってーい、着替えとタオル持ってお風呂へー?」


「「「「Let's Go!」」」」


「…それじゃあお風呂の扉開けますよ」


「うん!」


「早く早く!」


各々興奮を抑えられないといった面持ちでゴクリと唾を飲む。


そして扉が開かれると、

「…なにこれ凄っ」

「ひ、広い」

女子全員が絶句した


そこにはそこら辺の旅館よりも豪華なのではないかと思う程の立派な大浴場が広がっていた。


立派な大理石のタイル、仄かに薫る杉の香り、木材で囲われた湯船からは煙が立ち込めている、そして湯船に流れ出す温泉と思われる白濁色のお湯

その余りにも現実離れした光景に皆目を見張る


「そ、それじゃあまずシャワーから浴びましょう。体の汚れを洗い流さないと…」


「う、うん」


そしてシャワーを浴び始めるが

「わ、凄いシャンプーとボディーソープだけじゃなくてリンスも洗顔用の泡まである…」


「そ、それより早くシャワー浴びて湯船入ろ!湯船!」


体を洗い終えいよいよ湯船に浸かるが…


「あ…」


「これダメになるやつ…」


「生き…帰る…」


「力…抜け…る…」


この2日間意味も分からず異世界に呼び出され、いつ来るか分からないことが死に怯え続けてストレスが溜まり心身共に疲労の溜まっていた少女達にとってようやく落ち着くことができた瞬間だった。


そうして風呂を浴びサッパリして部屋に戻る途中でこれから風呂へと向かうであろう大石達と出会う。


「お、お前ら風呂上がりか?」


「えぇ、そっちは今からかしら?」


「あぁ男子は二組に分かれて行くことになって今松本達が帰って来たからな」


「そう、お風呂凄かったわよ。あなた達も堪能してきなさい」


「おう!そうするぜ!」


そうして男風呂へ向かった大石達は…


「うひょー、ひれぇー」


「やっべぇテンション上がるわ!」


「見ろよこれ!クロール!」


「ばっかでぇ」


風情の欠片もないが風呂を楽しんでいた


その後…


「皆、夜ご飯の時間だから公民館へ向かうよ。着いてきて。」


源に呼ばれ公民館へ向かうとそこには机と椅子が置かれそれぞれの席にお盆に乗った定食が運ばれてきた。


「今日の夜ご飯は焼き魚定食だよ。美味しいから食べてごらん」


「「「「はい!いただきます!!」」」」


「召し上がれ」


「う、うめぇ~、この魚の塩加減も抜群で米が進む〜って、うぉ!松本、お前泣いてんの?」


「えぇ、少し感動してしまいまして。拙者達の読むライトノベルで多くの転生者、転移者がそのうち当たる問題、異世界での米の普及率が乏しい為『米を食べるのに苦労する問題』があるにも関わらずまさか最初から食ることが出来るなんて!」


「はは、確かにクロイワさんが村を使った時はお米を食べることができなかったらしいけど穀物を育てている地方を見つけてそのお米を元に品種改良を加えて日本のお米に近づけたらしいよ。このお米もこの村で採れたものなんだ。」


「ではこのお味噌汁のお味噌も…」


「いや、こっちは転生者の中に日本で元々味噌を作っていた人がいてその人のおかげ、大豆に似たものが元々この世界にあってそれを使っているから正確には味噌もどきだね。」


「でも、すげぇ」


「そうですね、まさかこの世界で日本食を食べれるなんて思ってもみませんでした」


「あのクソみたいな城で出された飯もパン1つだったからな」


「そーだね、ホント夢みたい」


「「「「ごちそーさまでした!!」」」」


「この村の食事はどうだったかな?」


「はい!とっても美味しかったです!ありがうございました!」


「そう言って貰えると嬉しいな。後で料理長にも伝えて置くよ。彼もきっと喜ぶはずだ」



「それじゃあ今日はもう休んでもらって構わないけどどうする?クラスで話し合いたいならここ使ってもらっても大丈夫だよ」


「あ、ありがとうございます。それじゃあ少し話し合いがしたいのでもう少しお借りしてもいいですか?」


「そっか、それじゃあ僕は先に休ませて貰うよあ、出る時に電気だけ消して貰えるかな。あそこにスイッチがあるから」


「分かりました。ありがうございます」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る