第15話 影の支配者
霜花(そうか)は戦場の真ん中で巻物をしっかりと抱えながら、目の前の黒装束の男と対峙していた。廉明(れんめい)皇帝は激しい戦いの中で次々と敵を倒していったが、敵の数は多く、彼もまた疲弊していた。
巻物の異変
霜花の手に握られている巻物は、不気味な力を増していた。彼女はその力が暴走するのを感じながらも、何とかそれを押さえ込んでいた。
「この巻物は、あまりにも危険だ……!」
霜花は内心でそう思いながらも、決して手放すことはできなかった。もし敵に奪われれば、この国全体が崩壊する可能性がある。
黒装束の男の正体
「お前にはまだわかっていないようだな……この巻物の真の力が。」
黒装束の男は冷たい笑みを浮かべながら、再び霜花に向かって歩み寄ってきた。彼の動きは油断のないものであり、その目には確信が宿っていた。
「お前は誰だ……?なぜこの巻物を狙っている?」
霜花は剣を構え、男に問いかけた。
「私の名を知る必要はない。ただ、お前に告げるのは一つ。私は、この国の新たな支配者となるべき存在だ。この巻物がその鍵だ。」
男の言葉に、霜花の心臓が高鳴った。麗華(れいか)に続く新たな脅威がこの後宮に潜んでいた。彼はただの反乱者ではなく、もっと大きな力を持っているように見えた。
「お前が麗華の背後にいた者なのか?」
霜花は男を睨みつけたが、彼はただ冷たい笑みを浮かべるだけだった。
「麗華様の計画は私のために動いていた。彼女が倒れても、我々の目的は変わらない。この国を真に統治する者は、禁忌の力を持つ者だ。」
その言葉に、霜花は再び身を引き締めた。
「私は決してこの巻物を渡さない……!」
霜花は剣を振り上げ、男に向かって突進した。だが、男は軽々とその攻撃を避け、逆に素早い動きで霜花に反撃を加えた。
戦いの激化
男の剣技は驚くべきものだった。霜花は防御に回りつつも、次第に押されていった。彼の攻撃は正確で力強く、彼女にとっては格上の敵であることが明らかだった。
「これで終わりだ、霜花。」
男が最後の一撃を振り下ろそうとした瞬間、突然、巻物が再び強い風を巻き起こした。その風に巻かれ、男は一瞬動きを止めた。
「な……何だ?」
男は驚きの表情を浮かべたが、その隙に霜花は彼から距離を取った。
「この巻物……まるで自分を守っているようだ……」
霜花は巻物に秘められた力が何かに反応していることを感じた。彼女は巻物を強く抱きしめながら、この異変が敵に対する唯一の希望であることを直感した。
援軍の到着
その時、遠くから近衛兵たちの足音が聞こえてきた。彼らは廉明の命を受け、ついに戦場へと駆けつけてきたのだった。数十人の近衛兵が駆け込み、黒装束の者たちに立ち向かった。
「陛下!」
近衛兵のリーダーが声を上げ、すぐに廉明の側に立った。
「よく来た。全力でこの敵を討て!」
廉明は力強く命じた。
戦局は一気に変わり始め、黒装束の者たちは次々と押し返されていった。しかし、黒装束の男は未だ霜花を睨んでおり、その瞳には揺るぎない野心が宿っていた。
「お前たちが何人来ようと、私の計画は止められぬ……!」
男は一度後退しながら、巻物を手に入れる機会を伺っていた。
謎の黒装束の男の撤退
戦局が不利だと判断した黒装束の男は、ゆっくりと後退し始めた。彼の冷たい視線は巻物から決して離れなかったが、すでに近衛兵たちが優勢になりつつあるのを察知していた。
「これで終わりではない……この巻物は必ず手に入れる。次は逃げられぬぞ、霜花。」
そう言い残すと、男は黒装束の者たちを率いて姿を消した。
「陛下、彼らは……?」
霜花は近くに来た廉明に問いかけたが、彼もまた男の正体を完全には掴んでいない様子だった。
「おそらく、麗華が背後にいた反乱勢力の一部だ。しかし、彼の言葉にあった“支配者”という言葉が気になる。もしかすると、さらに強大な勢力が存在するのかもしれない。」
廉明は剣を収め、静かに息をついた。
新たな伏線:背後に潜む影
戦いは終わったものの、霜花の胸にはまだ多くの疑問が残されていた。黒装束の男の言葉、そして巻物が持つ禁忌の力。すべてが繋がっているようでありながら、まだ何か大きな謎が隠されているように感じた。
「この巻物……封印すべきなのか?」
霜花は巻物を見つめながら、自分がこの力をどうすべきかを悩んでいた。
「お前には、もう一度後宮内を調査してもらいたい。」
廉明は彼女に向かって静かに言った。「麗華の背後にいた勢力が、この巻物を手に入れるために動いていることは明らかだ。だが、その全貌を掴むにはまだ手がかりが足りぬ。」
霜花は深く頷いた。「はい、陛下。必ずこの陰謀の全貌を突き止めてみせます。」
新たな任務
霜花は巻物を手にしたまま、再び後宮の奥深くへと足を運ぶ決意を固めた。彼女は黒装束の男が語った「支配者」という言葉が頭から離れなかった。それは単なる反乱ではなく、帝国全体を揺るがす巨大な陰謀の始まりであるかもしれない——。
「私は、この国を守らなければならない……」
霜花は自らにそう言い聞かせながら、次なる任務に向けて動き始めた。
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