シリーズ短編 Devilの教えver

サプリシリーズ

鬼のような悪魔


「ねえ、アスマ。ちょっと聞きたい事があるんだけど」


「断る」


「恋する乙女的に非常に気になる事なんだけど」


「断るっつってんだろ」


「何が何でも答えて欲しいんだけど」


「答えねえよ」


「女子のどんな仕草にドキッとする?」


「ああ?」


「この雑誌に『男性が女性にドキッとする仕草』って特集が載ってるんだけど、アスマは女子のどんな仕草にドキッとするのかなあって思って」


「しねえよ」


「え? しないって何が?」


「ドキッとした事なんざ一度もねえ」


「ええ!? 愕然とするほど女遊びが激しいのに!?」


「それは関係ねえだろ」


「否定しないんだ!?」


「あん?」


「まあ、出来ないよね……激しくしてんもんね……」


「ああん?」


「でも本当にない? 一回も? 髪をかき上げる仕草とか、服をちょんちょんって引っ張ってくる仕草とかにドキッて――」


「ねえよ」


「じゃあ何でアスマは不特定多数の女の人とエッチな事すんの?」


「ヤりてえからに決まってんだろ」


「けど誰でもいいって訳じゃないでしょ? 誰でもいいならあたしでもいいんだし、だったら今すぐにでも――」


「無理」


「何でいっつも無理って言うの!?」


「お前じゃヤる気になんねえんだから仕方ねえだろ」


「何で!? こんなにも女子なのに!」


「文句はチンコに言え」


「チンコって! チンコって! アスマ、卑猥!」


「夜中にでけえ声でチンコチンコ言ってんじゃねえよ。どっちが卑猥だ」


「じゃ、じゃあさ? ヤる気になるって事は、興奮するって事でしょ? だったら、興奮する仕草ってない? ヤる気満々になるような仕草」


「まあ、あるって言や、ある」


「どんなの!? どんな仕草!?」


「素っ裸で股開いた女が、自分の指で割れ目開いて――」


「いい! もういい! それ以上は言わなくていい! 色んな意味でもう結構!」


「お前が言えっつーから教えてやったんだろ」


「違うの! 聞きたかったのはそういうんじゃないの! あたしはアスマがドキッとする仕草したいから聞いたの! なのに、シモネタのオンパレードになっちゃってるじゃん!」


「お前の目論見なんか知るかよ」


「もういい! 寝る! どう頑張っても素っ裸でお股開けるなんて出来ないし!」


「引くからすんな」


「引く!? 何で!? 興奮するって言ったじゃん!」


「お前がやったら引くっつーんだよ」


「傷付いた! 今の凄く傷付いた! ショックで死ぬ! ショック死する!」


「死ぬようなタマじゃねえだろ」


「ダメ! 凄いショック! だから、アスマのベッドで寝たい!」


「ふざけんな」


「だって床で寝てたら体痛いんだもん! ゴリゴリしてんだもん!」


「文句あんなら帰れ」


「ちょっとそっち行くね」


「来んな」


「ちょっと詰めて――あっ、詰めて――ね、詰めて――」


「おい、コラ! 無理矢理入ってくんじゃねえよ!」


「ちょっと――うん、まあ――よいしょ」


「おい! 入ってくんなって言ってんだよ!」


「だって傷付いちゃってんだもん! さっきの素っ裸でお股開くって話もリアルに想像出来ちゃって、本当はすっごい傷付いてて悪夢見そうなんだよ」


「…………」


「魘されるかもしれないから腕枕してね。腕、こっちに――そう。ここ」


「…………」


「うん。まあ、これでちょっとはマシかな。ちょっとだけね。本当は凄く傷付いてて、ショック死寸前だけどね。やっぱり分かってても聞いちゃうとね。うん。本当は泣きそうなんだけどね。はあ、ツライ。けど――」


「ヤってねえよ」


「へ?」


「最近、女とヤってねえっつってんだよ」


「あっ、うん。知ってる」


「ああ?」


「スガ先輩が、『最近アスマさん、女と会ってないみたいなんだよなあ、体調悪いのかなあ』って言ってたから。いひひひ」


「おま――」


「はい、おやすみ」


「ベッドから出ろ、てめえ!」


「もう寝てます」


「ふざけんな!」


「ぐうぐう」


「おい! 抱き付いてくんじゃねえよ!」


「あっ、そうだ。寝言で言うけど、寝込み襲っていいよ?」


「寝言はマジ寝してから言え!」


「心の準備は出来てるから!」


「一度たりともお前の心の加減なんか聞いてねえんだよ」


「いつでもオッケー」


「うるせえ」


「アスマ大好き」


「おい! 足!」


「本当に大好き」


「お前の足が俺の股間に当たってんだよ!」


「だから、その気になったら襲ってくれていいからね」


「股間を膝で擦ってくんじゃねえ!」


「早くその気になってね」


「やめろっつってんだろ!」


「あれ? 何か膝の辺りがちょっとコリコリしてき――え!? もしかしてその気になってきちゃった!?」


「不可抗力に決まってんだろうが!」





 鬼のような悪魔 完

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