第7話 ドレッサーは宝箱
私は鼻唄混じりの上機嫌でお母さんの部屋を目指す。
んふふーん、今の私は冒険者だ。
ドアの前で気づいた。手が届かない。
クルリと引き返して自室まで戻る。自室に置いてある踏み台が必要だ。
今の私は背の低い幼児だと言うことを忘れてた訳じゃない。
ドア用の踏み台はリビングにあるものより何気に重たいので気合いを入れて運ぶ。むぁー。
さて、目的地に到着だ。
今の私が気になって仕方ないのは化粧品とアクセサリーだ。
3歳児には必要ないが気になるものは気になる。
この世界のはどんなものなのかな?
異世界独自の魔法的なアイテムだったりするのかな?
そんなわけでドレッサーがターゲットだ。
わざわざバラバラにしまうことも無いだろうし、ドレッサーにまとめてるでしょ。
ドレッサーと言えば、まずは鏡だ。
前世の姿見ほど大きな鏡は無く、A4用紙程のサイズの鏡を縦に並べている。
どの鏡も前世の鏡ほど均一ではないが常用はできそうだ。
中世ヨーロッパっぽい時代で鏡があるのか正直心配だったから良かった。
ただ、家の中で他の鏡を見かけないのでかなり高価なのかもしれない。
鏡の中に銀髪のネコミミ娘が映った。
幼女以前に幼児だけど、贔屓目に見てもすごい可愛い。
試しに微笑んでみる。
思わず撫でたりもふりたくなった。
シミ一つない真っ白な肌、ぷっくりとしたいかにも幼児な頬、つつきたくなる鼻、気持ち少し釣り目だけど可愛らしい目、ぴこぴこ動くネコミミ、ふりふり動くしっぽ。
なにこの子持って帰っていいですか。私なのでお持ち帰り済みです。
しかし、前世は平均的な容姿だっせいか、とてつもなく嬉しい反面、こんな可愛くていいんだろうかと少し気が引けてしまう。
小市民だ。
それと、自分の瞳の色は水色の碧眼だと知った。お母さんの瞳と同じ色だ。嬉しい。
他には、気持ち少し釣り目なところが前世の私に似てた。前世の私との繋がりを感じて嬉しかった。
こんな可愛らしい目ではなかったけど。
そんなわけで次はドレッサーの
ふふふ、さあ、その中身を私にさらけ出しなさい。
ガサガサ
ん?
ゴソゴソ
…………
え?
口紅っぽいやつ以外は何もないの?
化粧水すら見当たらないんだけど?
いくら異世界でも化粧品が無いなんてありえなくない?
お母さんは化粧嫌いとか何もしない人とか獣人は化粧しないとか?
いや、記憶によると、お母さんの職場の職員さんも化粧してる感じはなかったはず。お客さんもそう。
お母さんだけが特別化粧をしないわけでは無かった。
まぁお母さんはすっぴんでも全く問題ない美肌なうえにカッコ可愛い美人だからいいか。
って、すっぴんで前世のモデルが裸足で逃げ出すスペックの高さってどういうこと……。
ん? 待てよ?
そう言えばお母さんの職場には人がたくさん来るけど、職員さんやお客さん含めて見かけた女性たちは美人率が高いような気がする。お母さん程ではないけど。
少なくとも残念だと思える人は全くいなかったと思う。
みんなすっぴんで美人率が高いとか異世界すごいわ。
うーん、結構裕福な我が家でも口紅っぽいものしかないとなると、もしかしたら化粧品はすごく高いとか、貴族が使う文化なのかな?
謎だ。
とにかく、庶民に化粧品がほとんどないのは、この世界なのかこの国なのか分からないけど、そういう文化と思うほかない。
私も将来お母さん並みに綺麗になれるのなら多分問題ないはずだ。
遺伝子に期待したい。というか、すごい期待してる。
化粧品がほとんどないのは分かった。
次はアクセサリーを漁っ……確認してみよう。
えーと、ネックレスに指輪、ブローチやペンダント、あとこれは腕輪かな?
楕円や半円のようなちょっと変わった形の輪だけど何だろう?
金属製のアクセサリーは少ないけどちゃんとある。
羽や木の実を使ったエスニック風なものもあるし、飽きなくていいね。
現代日本みたいに複雑な形の物はないけど、これはこれですごく素敵!
イヤリングやピアスのように耳につけるアクセサリーは無いのかな?
まぁネコミミ動くし結構敏感だし、挟んだり穴を開けるなんてとんでもない。
それにしても楕円や半円の輪は腕輪なのかな?
両端に棒っぽいのが邪魔だし変な形だし、腕輪として使えないんじゃ……。
ん?
この両端の棒っぽいのってまさかヘアピン?
も、もしかして、これってネコミミ用のイヤリング?
耳を囲うように乗せて落ちないようにピンで止めるっぽい!?
わ、なにそれめっちゃおしゃれ!
そうだよ、あっちのも構造は同じだし、きっとネコミミ用のイヤリングなんだよ!
私も欲しい!
異世界ならではのアクセサリーすごい!
ふぅ、アクセサリーで
それはもう
私は大満足だ。
次は……もうそんなにないね。残りは櫛かな。
櫛って言っても木製なだけで、これと言って何かある訳じゃない。
当然、前世のようなプラスチック製の櫛は無い。
櫛の目は思ったほど荒くはないけど細かくもない。
職人さんの手作りだろうから、量産を考えるとこれくらいのクオリティになるのかな。仕方ないか。
ちなみに櫛は髪用としっぽ用を分けて使う。
毛質は変わんないけど気分の問題だ。
お母さんのお古だけど私も二つ持っている。
ふぅ、
私の知的好奇心は満たされた。
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