バックファイヤーウォーズ

マサキノブヒロ

第1話

1場

〇東京コミコン会場内


興奮気味に話をしている真田と清水

小島、二人に後ろから声をかける。小島も興奮している様子

三人を遠巻きに、品定めをするように眺める影山


小島「お待たせしました!」


映画『21ジャンプストリート』のようなハンドシェイクをする小島と清水


清水「どうでした? 最高以外無くないですか?」


と言って手を差し出す


小島「最高でした!」


と言って握手しようとするが、直前で気がつく


小島「いやいやいやいや! たった今、ヘイデン・クリステンセンに、いや、アナキンスカイウォーカーに握手をして貰ったとこなのに、何ですぐにおじさんで上書きしないといけないんですか! 危なかったわー」

清水「バレたかー!」

小島「え、握手して貰いましたよね? 逆におじさんで上書きして良かったんですか?」

清水「(ブツブツと呟くように)おじさんと握手をしたくなる。おじさんと握手をしたくなる。おじさんと握手を…」

小島「いや、マインドトリックしようとしても無駄ですから!」


真田、清水の手に吸い寄せられていく


小島「(真田を引き剥がしながら)いやいや、なにしてるんですか!」


真田、ハッとする小芝居をしてから


真田「あぶなー 止めてくれないかと思いましたよ!」

小島「止めなかったらどうするつもりだったんですか!?」

真田「握手してたよね」

小島「なんでそんなこと出来るんですか!? チケット代の28000円をドブに捨てる気ですか!?」


笑っている真田と清水

影山、三人組に近づいて、声をかける


影山「やっと見つけたー! もーどこ行ってたのー?」


お互いの顔を見合わせる3人


影山「(小声で)さっきから怪しい男につけられてるの。少しでいいから友達のフリをしてかくまって?」


再び顔を見合わせる3人


清水「ほんとに? どれ?」

影山「えっ…と…ほら! あれ! あのまるでジャワ族みたいに目深にフードを被ってるひと。助けて、あなたたちだけが頼りなの」


三度見合って、大きくうなずく3人


清水「いやーごめんごめん! ちょっとトイレにいってて」

真田「そうそう連れしょん連れしょん」

影山「もーそれならそうと言っといてよねー随分探しちゃったじゃん」

小島「伝えておくべきでしたよね。すいませんでした」

影山「ほんとにー気を付けてー」


ジャワ風のパーカー男が通り過ぎるのを感じて


影山「ふぅ助かった。ありがとうございます。このあと時間ありますか? もしよかったら飲みに行きませんか? 助けてくれたお礼に奢らせて下さい」

清水「ほんとで…」

小島「いえいえ、大したことはしてませんから。なぁ?」

真田「いやぁまぁ」

影山「遠慮していただかなくても大丈夫ですから。ほんと、皆さんには助けていただいたので、お礼をさせてください」

真田「そこまで言われちゃったらなぁ」

清水「だよなぁ。じゃあいつもみんなで行ってるBarがあるのでそこにしましょう」

影山「行きつけのバーがあるんですね! 皆さんオシャレですね。すごーい!」


真田と小島、どこだそれ? という感じで顔を見合わせる


2場

〇オシャレなBar


バーテンダーがシェイカーを振っている


清水「おれバーに来るのなんて初めてなんだけど…」

真田「じゃあなんで連れてきたんだよ!」

清水「かっこつけたくて…」

小島「おい!」

清水「どうしよう。とても生を頼める感じじゃない…」

真田「角ハイあるかな…」

影山「なに飲みますか?」

小島「えっと、じゃあ…カルーアミルクをひとつ…」

清水「いやいや、そんな女子が頼むようなものじゃなくて、もっと男らしいものを頼まないと!」

小島「じゃあなにがいいんだよ!」

清水「ええっと…アーディースを」

真田「おぉい! 落ち着いて! それはオビワン・ケノービが、エピソードⅡで殺し屋の情報を探るために入った食堂で頼んだやつです。地球の酒場にわかるやつはいない! 僕にいい案があります。(咳払いをした後、良い声でバーテンに向かって)ウォッカマティーニをくれ。ステアではなくシェイクで」

清水・小島「それだ! ウォッカマティーニを一つ! ステアじゃなくシェイクで!」

影山「じゃあ私はカルーアミルクを一つ」


うなずくバーテンダー

バーテンダー四人にお酒を提供する


真田「コミコンに乾…」

清水・小島「と~! 先生の新作出版にかんぱーい!」

真田「おぉ! ありがとうございます!」

影山「先生? なんの先生なんですか?」

清水「この人は小説家の先生なんだ」

小島「先生、サインお願いします」


小島と清水、カバンから小説を取り出す


真田「買ってくれたんですか!?」

小島「当たり前でしょう」

真田「なんだプレゼントしようと持ってきたのに」


真田、カバンから2冊本を取り出す


真田「せっかく持ってきたのに、余っちゃったな。あ、じゃあせっかくなんでこれあげます」


真田、影山に本をプレゼント手渡す


影山「えぇいいんですか~? なんだかすいません」

真田「いえいえ、これもきっとフォースの導きでしょうから。じゃあ改めまして、乾杯!」


初めてマティーニを飲む三人

思っていたよりアルコール度数が高くて、顔を歪める


影山「で、えーっと…(本の表紙を見て)真田さんは作家先生でしょ? あ、これってペンネームですか?」

真田「いえ、本名です。」

影山「真田さんは作家先生で…お二人は?」

清水「あ、じゃあ自己紹介タイムにしましょうか。俺は哲也。清水哲也。五菱商事で働いています」

影山「え! 五菱商事って言ったら超大手じゃないですか! え~すご~い!」

清水「ま、まぁね」

小島「小島です。区役所で働いています。よろしくお願います」

影山「それはそれは、いつもお世話になってます。私の番ですね。影山って言います。丸の内のお花屋さんで働いています。よろしくお願いします」

清水「丸の内ってうちのオフィスと同じじゃん! 今度買いにいってみようかな?」

影山「お花のある職場、素敵だと思います! お待ちしてますね! 皆さんお仕事バラバラですけども、どういったご関係なんですか?」

小島「我々は言うならばSTARWARS同好会です。STARWARS好きの3人が集まって、今日みたいに東京コミコンに行ったり、鑑賞会をして語り合ったりしているわけです」

影山「へぇ~いいですね~私もSTARWARS大好きなんですけど、周りに好きな人がいなくて、今日も一人でコミコンに行ってたんです」

真田「今度影山さんも来ますか?」

小島「いや。それはちょっと…」

影山「いいんですか!?」

真田「もちろんです!」

小島「いやいやいや…」

影山「ありがとうございます!わー仲間が出来て嬉しいです~」


急に大きな物音が聞こえ、音のする方を見てみると、酔っぱらった清水がいる


真田「えぇ!? 大丈夫ですか!?」

小島「こいつ、飲みなれないお酒のせいで…」

真田「バカヤロウ…無理しやがって…」

小島「かっこつけやがって…」

真田「すいません。こいつこんなんなっちゃったんで、今日のところは…」

影山「そうですね。今日はありがとうございました」

真田「いえいえ、こちらこそごちそうさまでした」

小島「おい、タクシー捕まえたから」

真田「ありがとう! じゃあ、また」

影山「あ、連絡先を…」

真田「じゃあこれを…」


名刺を渡す真田


真田「じゃあまた!」

影山「気を付けて!」


清水の肩を支え去っていく二人

一人残された影山、貰った本の表紙を眺める


影山「真田先生か…聞いたことないな」


スマートフォンで検索する影山


影山「ふーん、3冊だしてるんだ。けど知ってるのはないな。映像化されてるのがあるわけじゃないし、受賞作があるわけでもないと」


影山、「自分自身は多少、考古学には個人的興味がある為、考古学関連の内容は特に面白く拝見した」「楽しい話の中に、切なさの残る作品で良い時間が過ごせました」「話の筋が通って無さ過ぎ。無理がある」「清水先生の今日発売の新作楽しみすぎる」などのSNSの評価を目にする


影山「あ、でもSNSの評価はいいじゃん。せっかくだから読んでみるか。なにかに役立つかもしれないし」

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