3x3にハマった私たちの物語

とねてつVer2

第1話 プロローグ

夏休みの早朝

はぁ・・・・はぁ・・・・・・はっ・・・・んっふっ・・・


江田千聖は土手の上をランニングしていた。

「ああーーーあっついいいい!!!!!」

あまりの暑さに、土手の草むらに寝っ転がり仰向けになってあおい空を眺めている。

(もっと頑張らないと!レギュラーにはなれない)


彼女は一息つくと、河原に降りてダッシュを始めた。何度も何度も繰り返す。

彼女の親友であり同じ部活の大久保沙耶も合流して一緒に汗を流している。

「千聖、ずいぶん早くなったよね。香美さんと同じレベルだし」

「まだまだだよ、レギュラメンバーにはまだ成れない」


江田千聖も大久保沙耶も県立霞ヶ丘高校女子バスケットボール部に所属している、

高校1年生だ。すでにその長身と手足の長さを存分に駆使してレギュラーメンバー

入りしている沙耶とちがって、小柄だけれど脚力だけは自信のある千聖は

まだ沙耶のレベルには追い付いていないから、スピードだけは誰にも負けたくない!

そう思って毎朝ランニングやダッシュを繰り返していたのだった。


ある日

河原の運動場にあるバスケコートでシュート練習をしている二人、

「最近の千聖はさ、シュートがよく入るようになったよね」

「そう?でもさ、沙耶のレベルにはまだまだだよ」

何度も何回も練習を繰り返している二人の傍へ一人の少女がやってきた。


「どいて」

「えっ?」

「どいてって言ってんの」

「え、いやぁ、交代でやればいいのでは?」

「どいて!」

どうする?って沙耶が目で聞いているけど、千聖は理不尽な要求を拒否した。

「だから交代でやれば?って言ってますけど」

「どいてって日本語解らない?」


その子は見た目、ハーフ?と思えるような金髪碧眼。

沙耶と同じかやや大きい長身、190近くあるんじゃないかっていうほど。

「マトモにやったら相手にならないよ、今日は帰ろ千聖」

と沙耶は帰ろうとしたけれど、横柄な態度が気に食わない千聖は

「じゃあ私と1on1 5本勝負よ。うちが勝ったらあんたは帰りな」

「ふん!いいわやってあげるよ。どうせ私が勝つんだしw」


手足の長さと長身はバスケプレイヤーにとって最大の武器だ。

先攻は千聖。ドリブルで突破しようとしたけど、すぐにスティールされる。

今度は相手の攻撃、素早いフェイクで千聖を交わして速攻からレイアップ!


その後も千聖の攻撃はことごとく封じられ・・・


「はぁはぁ・・・くっそ!」

「もう終わり?お嬢ちゃん?」

「まだまだだ!」

すでに4本決められている。あと1本決められたら負けだ!


「じゃあ行くよ!」

腰を落としチェック体制に入った相手は、その長い手をフルに生かして

激しくチェックしてくるから、いかにスピードのある千聖でも交わせない。


「私の番ね、止めを刺してあげるわ」


ダム、ダム、バン

相手のハーフ女子は千聖を誘っているのか、ゆっくりと動き出した、

そしてチェックに入ろうとしたその刹那・・・またもや鋭いフェイクで交わされ

キュッキュッ・・・ダム・・・ガゴン!!


目の前でダンクシュートを叩きこまれた。


「私の勝ちね。じゃあどいてもらおうかしら?」


悔しいという衝動だけが千聖を突き動かしていた、

背負っていたリュックを叩きつけ、

「もう一回やろう!今度負けたら、うちらはもうここには来ない」

と言いつつ、赤いヘアバンドをしてハーフ女子に立ち向かった。

(千聖が本気を出した!)


だが・・・

あっさり3本とられた。

もう後がない(やつの長い手足を交わすには・・・)じっと考える千聖。

ボールをつきながら、じっくり考える。

(沙耶とのプレイを思い出せば・・・)

沙耶は横の動きは素早く、長い手と合わさって、突破しようとする千聖を封じる。


だが縦の動きなら?


行くよ!

ボールをつきながら、徐々に前に進む千聖、ゆっくり後退するハーフ女子。

その目は、どう料理してやろうかといった料理人そのものだ。


いきなりスピードを上げ突破を試みようとした。それに合わせて動くハーフ女子

しかしそこで千聖は動きを止めた、ハーフ女子は対応できず、千聖の突破を許した。


ズサッ!

「やった千聖!いいよ!この調子!」


「まぐれよ、二度目はないわ」

今度は千聖がディフェンスに回る。

絶対シュートは打たせない!という覚悟が千聖の顔に表情として出ていた。

高さでは敵わないからスピードと圧力をかけることでミスを誘う作戦に出る千聖。


激しいプレスに苦しむハーフ女子。


苦し紛れのシュートは外れた。

「あなたは私を本気にさせた」ハーフ女子が言うけれど、

千聖はこの子には負けない自信がついていた。


やがて3:3に追い付いた。


千聖がオフェンスに「じゃあ行くよ」

ハーフ女子は縦の攻撃に対応するべく、若干、千聖との距離を開けた。

(よし!いまだ!)

そのままフルスピードのドライブで突破し、レイアップシュートを決めた。

「あと1本!その調子よ千聖!」


速攻で勝負を決めようとしたハーフ女子に、重厚な圧力をかけ動きを封じる。

右サイドからゴール下に切れ込もうとしたものの、プレスとスピードに翻弄され

シュートミスを犯すなど、1回目とはまるで違う様相を見せてきた対戦。


「今度は私が止めを刺す番ね」

ハーフ女子は千聖のスピードと豊富な運動量に、その体力の大部分を削がれていた。


「はぁはぁ・・・は・・・ふぅ・・・」

「あらぁ、もう息が上がってるのね」

「まだよ!これから・・・」


またもハーフ女子は千聖の突進を防ぐべく、千聖の目の前で警戒していた。

千聖は腰を落とし、目線は目前のハーフ女子ではなく後方のリングを見ている、

その目は狙撃手のようだ


ダムダムダム・・・キュッ・・・

左サイドを突破しようとした千聖を止めようと動いたハーフ女子

だがそれは千聖が仕掛けた罠だった。その場でストップ、クィックネスな動きで

すかさず反転しがら空きとなった、右サイドからドライブ突破し見事レイアップ!


「やった!千聖!すごいよ!」


両手で膝をつき、勝利の余韻に浸る千聖に

「凄いね、私に勝つなんて、いままで私に勝った女子は居なかったわ

 あなたが初めてよ」と手を差し出し握手を求めてきた。


「私の名前は小野田ジャンヌ・アルナルディよ。よろしくね」

「江田千聖って言います。こちらは大久保沙耶さん。こちらこそよろしく」


笑顔で別れた二組のバスケ女子。



千聖と沙耶の帰り道

「お腹空いたね」

「何か食べようか」


大通りにあるサイ〇リア

「あの子さぁ、どこの高校だろうね。同い年位に見えたけどさ」

「そうだねうちらの学校では見たこと無いよね」

「またあそこ行けば会えるかもね」


会いたいけれど、正直千聖は会いたくないと思っていた。

また1on1やらされるかと思うと気が重い

「大丈夫よ、あなたの実力を思い知っただろうしさ」

「そうかなぁ・・・」



翌日

いつものバスケコートへ行くと、

すでにジャンヌが来ていてシュートを繰り返している様子が見えた。

(あっ・・・またやるのかぁ・・・ダルいなぁ)

「千聖、今日も来てんじゃん、あの子」

「うーん会いたくないなぁ」

「まぁそう言わずに・・・おはよう!ジャンヌ!」


ジャンヌは大きく手を振り、こっちを満開の笑顔で見ている。

河原へ降りる階段を二人で降りていく。

今日のジャンヌは見慣れないユニフォームを着ている。


それが彼女たちを”沼”に引き込む原因の一つになるとは・・・


第1話 プロローグ 完






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