【短編小説】ガチMAX Ga地底人

バーボンサム

序章 イケメンおじいちゃんの夢

えっ!何だって?地底人だって?


〜そうさ、縦横無尽に巨大な通路が張り巡らされて、何万メートル、いや何十万メートル規模、いや違うもっとだな〜 


とてつも無い規模の移動空間が縦横に走り、数々の世界が存在している。地表の地球人だけではないし、宇宙からの飛来者も実は住んでいるんだよ〜ってね。ワーオー!そんなこと言われたら、マジでぶっ飛んじゃいますよね。〜ありえませーん〜ノーノーでえ〜す〜


まあ!そうは言うけどいいじゃないの。まだまだ世の中知らない事が多すぎるんだから!地上の事だって大して知らないんだからね。ようするに、う〜ん!甘いトマトがココにありますね。皮の部分しか知らないコガネムシって、中味がどうなっているか知らないわけですよ… (アレっ)


〜アンタ何言ってるの?

〜ですから〜いいですか?

ワタシ変ですか?〜

〜そんな事言われたって、

知らないものは知らないんだよ〜


まあ!地底人っていたら面白いし、いなくてもそれなりに夢があるよ。SFでもファンタジーでも、それ以外のストーリーでもいいんですよ。人間って何かしら信じて生きていくものだからね。みなさんのご想像にお任せいたしますよ。


オイ!おじいちゃん大丈夫か?起きてんのか?


という事で…

東京の夏はジリジリする。

特に今年はそうだ。

そう言えば、今年はセミが鳴いてないな!


とある東京下町の小学校。

時刻は午後2時をまわったところだ。


「先生!ちょっといいですか?」

廊下でヨシオは担任の先生に声を掛け、

右手をあげた。


「なあ〜に、ヨシオくん」

「この前うちのおじいちゃん、

 変な夢みたって言うんですけど、

 ちょっと聞いてもらっていいですか?」


先生はヨシオの頭を撫でながら優しくうなずいた。


「おじいちゃんは身の丈300メートル以上ある巨大な生き物から声をかけられたって言うんですよ、それも地下に住んでいる生き物らしいです。どうも信じられないけど、でも、嘘言っているようには思えないんですよ」 


「300メートル?」


ヨシオは先生をジーッと見ていた。


「ヨシオくん詳しく聞かせて!」


今年赴任したばかりの女の先生は、真面目な顔をして周囲に人がいないか確認していた。誰もいない教室はシーンとしている。窓の外は風も無いのに、ユーカリの葉が「なぜか」揺れていた。


ヨシオは続きを話し始めた。時計の針はちょうど午後3時を過ぎたところだ。


先生は笑ったりうなずいたり、興味を持ってくれた。でもかなり変わったおじいちゃんと思ったらしく、最後は同情してくれたようだ。



一方、おじいちゃんは、地底人から聞いた内容を、毎日のように近所の元マドンナたちにアナウンスしていた。イケメンならではのパフォーマンスだ。


「地底人なんて信じられないだろう?べっぴんさんたちよ!ヤツらは普段は地下にいるからね。まあ人間に見つかる事はないけど。この世界は地上だけじゃないんだよ!わかるかい?地下世界があるんだよ!地底人沢山いるんだよ!おい聞いてるのか、そこの婆さ…いけね、御嬢さん!」



相変わらず調子の良いイケメン爺さんに、元マドンナ達はホトホト疲れていた。でも大半が時間通りに集合してしまう悲しい事実。やはり歳とってもイケメンは人気があった。かつてのイケメンは懲りずに、近所の元マドンナ達に毎日のように話し続けるのであった。



おじいちゃんが言うには、

地底人は心に響く低い声らしき波動で、おじいちゃんの心に話しかけてきたらしい。庭の穴も掘ったことのないおじいちゃんにとって、地下に世界があるなんて信じられるはずも無かった… でも夢の内容が強烈だったらしく一気にモードが変わってしまった。



ヨシオは学校をあとにした。


近所の駄菓子屋の前で、まだ熱弁を振るってるおじいちゃんを尻目に、早々に家に帰っていった。


〜さすがおじいちゃんだ〜


ヨシオは妙に嬉しくなった。

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