第十一話 ニョロ
武器選定会から一夜明けた。
昨日は色々とあって疲れたから家に着いて夕食を取った後すぐに寝た。
箱を閉めていても中からガタガタ動いて煩かったから危うく反射的に箱を窓から投げ捨てそうになったが父に買ってもらった物だし我慢した。
そして今日、やっと箱を開けた。
すると待っていたと言わんばかりに中から飛び出し俺の部屋の中をグルグルと飛び回った。
『やっと開けたんかい!
ほんま自分、年長者はもっと敬わなあかんで!』
「ごめんて。箱を開ける心の準備が中々できなくてついそのまま寝てしまって…」
『絶対嘘やろ!?』
「まぁまぁ、っていうかその話し方、頭に直接響いてきて頭が痛くなるから普通に声を出すのはできないん?」
「これでええか?こんなもん風魔法で簡単や」
「あぁ、やっぱり魔法使えるんだね?
さっき部屋の中飛び回ったから使えると思った」
「そらな!まぁ自分が隠す気ないんなら他の奴がおる前でも声で話しするわ!」
「まぁ別に隠す事でもないしいいんじゃないかな」
「分かった、ほな秘密の会話をする時だけ魔力念話で話すから自分もコツを掴んどいてくれよ?」
「はいよ、それと今の俺の名前はサンノって名前だけど俺は何て呼べばいいんだ?」
「サンノやな、リョーカイ!
儂は古い蛇やらヒトを惑わすものやら言われてきたから特に名がなくてなぁ…」
「何だそれ…じゃあ蛇から取って【ニョロ】って名前はどうだ?」
「おう、ほなニョロって呼んでくれ!」
「あっさりしてるな…
まぁじゃあ改めて、宜しくニョロ!」
「おぉ!」
そう言いながらニョロは俺の胸にコツンと当たってきた。
「じゃあとりあえず朝ご飯を食べるか」
そう言って部屋を出てリビングに行くと父が朝食の準備をしていた。
「おはよう父さん。
昨日は有難うね」
「おぉ、おはよう!朝食できたからとりあえず食おうか!
ん!?玉が浮いてるぞ!?」
俺の肩の上をフワフワと追従してきたニョロを見て驚いた様だ。
「あぁ、うん、この玉、自分の魔力で勝手に飛ぶみたいなんだ」
「おはよう、サンノの親父さん、儂はニョロっちゅう名前ですわ」
「んあっ!?」
ガチャンッ
父が声にならない声でびっくりして手に持っていたマグカップを落とした。
「おま!それ!しゃべるのか?」
「そうなんだ父さん、俺もびっくりしてる…
あ、ニョロ、このヒトは俺の父でベッコウって名前」
「ベッコウさん宜しくな!儂の事は気軽にニョロって呼んでもろてええからな!」
「よ、宜しく…何か独特な喋り方する玉さんだね…?
これは魔石の一種なのか…?」
「ま、まぁとりあえず父さんがせっかく作ってくれたご飯温かい内に食べよ?」
まだ少し混乱している様だがとりあえず食卓につき朝食を始めた。
食事中は普段の通り、今日は仕事に行くだとか、俺はダンサリハマと魔法の練習をしに行くだとかの会話をし、食事を終え席を立つ直前、
「ではニョロさん、今後共息子の事宜しくお願いします。
俺が一緒の時は何があっても俺が守るけど俺がいない時はどうか俺に代わって息子を守ってやって下さい」
そう言って父はニョロに深々と頭を下げた。
「おう、任しとき!」
父はその言葉を聞いて満足したのか、後片付けを俺に託して足取り軽く家を出て行った。
食卓を片付け、身支度をしてしばらくしたらダンサとリハマが家を訪ねてきた。
二人共ニョロとの初対面では父と同じ様な反応をし、壁外に向かいながら選考会からの一部始終を話しした。
ニョロの紹介が一通り終わった頃、いつもの練習場に着いたので普段通り練習し、昼休憩に入った。
「にしても武器が玉ってのも面白いよな!
やっぱ竜人族だからなのか?」
「いや、たぶんそんな事はないと思う…
父さんも初めて見る武器種って言ってたから…」
「ふーん、俺も明日選定会に行く予定だから楽しみになってきた!」
「ダンサは明日行くんだ?
私は結界士目指してるし、武器はやっぱり誰かを傷付ける道具だから持つの怖くて行かないけど…」
「まぁ、俺やダンサは早くから武器を使った戦闘訓練もするから選定会に行くけど、リハマは武器を持つとしても魔力を高める為の杖とかだから大人になってからでもいいんじゃない?」
「そうそう、たぶん私は軍学校に入った時とかかなぁ」
そんな話しをしつつ、昼からの練習も終えて家路に着いた。
翌日はダンサが選定会の為練習はお休みにして、さらにその翌日三人で集まった。
前日の選定会でダンサは爪の武器に選ばれた様で、この日から俺とダンサは武器を使った戦闘訓練も始めた。
そんなある日、夕飯を終え部屋で魔法書を読んでいると、
「あぁ、せや、大事な事言うの忘れとったわ!」
「ん?なに?」
「実は儂、元々竜人族の城の宝物庫におったんや」
「え…」
「で、物盗りが儂を盗み出して店に売ってその店が選定会に出品したっちゅう感じやな」
「え、じゃあ盗品って事…?」
「んーまぁ元盗品って感じやな!
武協の店を経由してちゃんと買ったから捕まったりはせんけど、価値を知る奴が見たら盗もうとするかもしれんから気ぃ付けろよ!」
「気を付けるって…」
「まぁ箱にさえ入れられんかったら儂は誰かに捕まったりせんからもう箱なんかに入れるなよっちゅう事や」
「それを言いたかったのか…
まぁ大事な相棒を盗られない様気を付けるよ」
「そうそう!大事な相棒やからな!」
何か上手く言いくるめられた気がするけど、転生前に再会するって言われて実際に再会したし運命的な何かなのかなと考える様にした。
この時は二年後にもっと運命的な再会をするとは知らず…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます