元(?)愛犬の為なら地球侵略もやぶさかではない
高山あきの
第一話 光る玉との邂逅
(眩しっ!)
気が付いたら真っ暗闇の中に一際強い光を放つ白い玉の様なナニかが目の前にある。
(何だこれ?ここはどこだ?俺は何をしていたっけ?)
『目覚めたか?』
低い声が頭の中に直接響いてきた。
『分かりやすく単刀直入に言うと、汝は死んだ』
すごく軽いノリで死を告げられた気がする…
そしてどうやら俺には体がないのか、手を動かす事も体を起こして自分で自分を見る事もできない様だ。
(声は出るのか?)
「あ、あぁ、出た。と言う事はここは死後の世界ですか?」
『その様な所だ。通常、人は死んだ後、我と対話する事もなく魂は浄化され輪廻転生に送られるが、我のいる世界に汝を強く求める者がおるから呼び止めたのだ』
(誰かに呼ばれたから俺はよく聞く異世界転生するって事か?
っていうか俺はどうやって死んだんだ?トラックに轢かれた記憶も過労死した記憶もないんだが…)
「えっと、まず、俺は誰に求められているんですか?」
『深い情をもって求める者もいれば強い恨みをもって求める者もいる』
(何か上手くはぐらかされた気がするけどとりあえず俺を求める人は何人かいて、善意の人もいれば悪意の人もいるって事か…)
『さて、ここまで威厳を見せる為にこんな話し方をしていたが疲れたから普通に話すぞ?
儂はお主が生前しゃべっとった関西弁?ってのが好きやからどこか使い方を間違っとったら教えてくれ』
(!?)
『と言う事でやな、儂の世界に転生させるにあたって記憶の継承だけやとちょい不憫やな思うて、特別な能力を一つだけ与えたろう思うんやけど自分何か得意な事とかあるか?』
(何かいきなりめっちゃ関西弁のマシンガントークが来た…
しかも結構流暢やし…)
「それはどんな能力でもいいんですか?
例えば、あらゆる魔法を使える様に、とか…
まぁ魔法が実在する世界なのか分かりませんが…」
『確かにこれから転生してもらう世界に魔法と言うものはあるが儂も万能の神って訳やないから生前の行いや性格、得意な事に関連した能力が限界やな』
「なるほど…」
生前の俺はずっと不動産業の営業一筋でやってきた。
不動産業という業種は会社毎に業務内容が違っており、色んな経験を積む為業界内で何度か転職もした。
賃貸売買の仲介や転売、さらには一般的にイメージの悪い地上げや不動産担保融資にも関わった。
これらの経験から大事な事だと常々思っていたのは人脈であり、それを築く為のコミュニケーション能力であり、その為の…
「空気をよむ、という事を常に意識した人生でした」
『ふむ…空気をよむか…』
(幼少期は剣道を習ってたけど魔法がある世界みたいやしせっかくなら魔法関係に結び付きそうな能力が欲しい…)
『空気に関連するとしたら風系統の魔法能力か?
いや、でも予定している転生先の種族は風系統との相性が悪いからなぁ…
うーん、空気やなくて字面が近い空間を扱う能力とかか…?』
「ではそれでお願いします!」
色んな可能性があって面白い能力になりそうな気がしたから前言撤回される前に食い気味に承諾をした。
『分かった、ほな自分に《空間掌握》の能力を与えよか。
あぁそれと、転生後いずれどこかでまた儂と再会する事になる思うけどその時は儂も力になるから期待しときいな』
「はい、有難うございます」
『最後に、転生する世界の事を少しだけ説明しよか。
自分の目や耳で実際に見聞きするのも楽しみやろうけど赤ん坊に転生するから世界の事を何も知る前に死んでまうかもしれんしの』
(それは確かに辛い…)
『まず、星の名前は【トートシン】言うて、言語は世界共通で【トートシン語】が公用語になっとるから頑張って覚え直ししてくれ。
で、トートシンには八つの大国があって、内七か国は七種の種族がそれぞれ種族毎に国を統治し、中央に多種族が暮らす永世中立の国が一つある。
まぁどんな種族がいるだとか国名だとかはどうせ今言うても覚えられんやろうから興味があったら自分で調べてくれ。
あぁそれと、地球に比べて重力が軽いから地球では物理法則上架空の生物群だったものが普通におるから色んな出会いや体験ができるぞ』
「それはドラゴンの様な生き物もいるって事ですか?」
『おう、その様なものもおるな』
「そのドラゴンは擬人化したりするんですか?」
『残念ながらと言うべきか、擬人化して美少女になったりはせんから安心して敵対したら討伐しろ』
(この光る玉、地球のサブカルチャー知り過ぎやろ…)
『ちなみに、ドラゴンだけでなくその他、知性が低い魔獣なんかも各地におるから危険地帯に行くなら死なない様頑張りいな』
「なるほど、よくある中世ヨーロッパのファンタジー世界って感じですか?」
『電力等のエネルギーが魔力に変わっただけで、技術レベルは地球の科学技術とそう変わらんから想像しとる様なナーロッパとはちゃうで』
(ナーロッパて…この玉、実は結構日本のオタクでは…?)
『まぁ簡単な説明はこんなもんかな』
「はい、後は転生後自分で見て回りたいと思います。何から何まで色々と有難うございました」
『おう、ほなまた来世でな!』
その瞬間光の玉は弾けた様に激しく辺り一面を照らし、俺は光に包まれながら徐々に意識が薄れていった。
薄れゆく意識の中、俺は悪意で俺を呼ぶ者の当てを思い巡らせたが…正直、仕事柄善行ばかりの人生でもなかったので思い当たる節があり過ぎて考える事を放棄した。
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