第6話 魔女デルタ

意外と性格器用で頭の良い僕は、すぐにその場に合わせた。ここが異世界であること。

僕は冒険者で海底ダンジョンに挑んでいること。そのダンジョンのボスキャラが深海の大ダコ。たぶん僕が現実世界で見た氷川丸の先端にいたあの大ダコだ。

そしてこの異世界での僕の家は

『バル・海ねこ』の看板。

港でレストランを営む、ママと姉貴のレナと3人暮らし。父親は僕と同じく冒険者で海底ダンジョンへいったきり行方不明。

設定上よくあるパターンだ。

それと僕がこの異世界でも、なんとか平常心を保っていられるのは場所のせいかもしれない。

海があり。坂もある。家々もある。港もある。

この場所は間違いなく横浜。山下公園。

目の前に氷川丸、マリンタワーこそないが、

間違えなく同じ地形だ。

ただし、ここは別世界だ。異世界だ。

しかし、何か現実世界と接点があるなずだ。

早く見つけて帰りたい。

「カイ!もうお店、閉めるわよ。表の看板、

中にしまって。」ママの声。

「はーい。」僕は外に出た。港が近い。夜の海は真っ暗だ。停泊中の船の明りがきれいだ。

僕は山手を見た。段々に並ぶ家の明りが見えた。

山手?坂道。外人墓地?あっ!思い出したぞ。魔女。魔女デルタ。大ダコを知っていた。

知りたければ会いに来い。ドアはいつでも開いているって言ってな。

明日でも行ってみよう。ここは異世界だが、あの坂道の上に三角屋根の魔女の家がありそうだ。いや、絶対あるはずだ。

僕は看板を店の中に運ぶ。

「ママ、レナ、悪いけど眠い。先に寝る。おやすみなさい。」僕は部屋のベットに、また倒れこむように寝てしまった。

翌朝、僕は起きた。

いつもの癖で愛車の自転車Bを探した。「あるわけないか。」

店前のはき掃除をしていたレナが「カイ。何を探しているの?今日もダンジョンへ行くの?」

「いや、今日は魔女。いや間違えた。山手に行こうと思ってる。」

「えっ?山手。あそこは、魔女が住んでいるって噂よ。気をつけなさい。」

「魔女?」やっぱりいるんだ。

「わかったレナ。」

「カイ。あなたの自転車、あそこにあるわよ。」

「あっ!僕の自転車Bだ。」「カイ、何をうれしがってるの?」

「いいんだ。気にしないで。じゃあ、行ってきます。」

僕はペダルをこぎ坂道を登り切った。右に曲がる。このあたりかな?

あった!三角屋根の家。

玄関ベルを鳴らす。誰も出てこない。ドアをまわす。開いている。

僕は家の中へ。「ようこそ、冒険者カイ。」

魔女デルタが僕を手招きする。

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