運命のチョコレート

久石あまね

第1話 受験よりバレンタインの方が重要だ

 私は高坂詩音。中学3年生。女子。肩までの黒髪に赤いカチューシャをしている。顔は普通だと思っている。美人でも不細工でもない。背は150センチ。5歳下の妹がいる。妹の名前はルカ。

 

 小6のとき、東京から大阪に引っ越してきた。   

 大阪はちょっと怖かった。最初は話しているとき怒られているのかなと思っていたけど、そういう方言だよということを聞いて、ああそうかと腑に落ちた。それからはそんなに大阪に対して怖いイメージを持たなくなった。むしろ大阪人の気の良さは好きだが、たまに顔を覗く計算高さや冷徹さ、極端なお節介にはまだ慣れていない。


 中学3年生の2月になった私に受験とバレンタインというイベントが控えていた。


 正直受験なんてどうでもよい。どこの学校でもやっていける自信もあるし、志望校にも私の偏差値的に合格しそうだ。


 問題はバレンタイン。


 私には好きな男の子がいる。


 元野球部の山崎卓也君だ。


 バレンタインまであと3日。


 でも、山崎君には彼女がいるらしい。


 誰かはわからないけど。


 私は山崎君の彼女が誰か知りたい。なぜがみんな山崎君に彼女がいることを知っているが、その彼女が誰か知らないのだ。私はそのことが不思議だなと思っていた。


 そして私は山崎君と彼女を別れさせたいと思っている。


 私の頭の中は完全に受験より山崎君のことでいっぱいだった。

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