第52話 バカが義体でやってくる 2


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「あー、ダル」

「ホント、ダルいっスね」

桜木と林田である。

「大森はどうした?」

洋二がクラスのディスプレイに兼崎たちが制作した動画を投射し、それを見せないように努力した、兼崎の取り巻き二人、その一人が林田で、もう一人が大森だった。

「他校から来る5人を向かえに行ったよ」

「ふーん、忠犬だね」と桜木。

「桜木さんだって、そうでしょう」と林田。

「いやー、酒や煙草やらないし、女もやらない、もういいよ、兼崎、もういいわ」

「そうっスね。コレじゃあ、イジメが付いているチー牛の集団でしかないっスよ」

兼崎抜きの時は寄ると触ると、寺田も大森も含め、兼崎の陰口をたたくのが常套であった。

「だがな、林田。これから来る5人。オレらエリート校と違って、底辺校の少年院上りが5人らしいぞ」

「マジですか、桜木さん!」

「ああ、どうやら、兼崎のお坊ちゃんぶりを見破って、自分らが兼崎に成り代ろうと接触を持ってきたらしい」

「桜木さん、どうしてそんなことを知っているんです?」

「バカな連中だから、ヤツらの校名言って、カマかけてやったら、直ぐに吐いた。それで内通者がいた方がよかろうと持ち掛けたのさ」

「天才っスよ!」

「兼崎のバックグラウンドと装備のうま味をねっとり語ってやった。そしてオレらには女紹介してくれると確約してくれた。林田、おまえも頭の弱いカノジョ欲しいだろ?」

「でも兼崎さんはどうするんです? 漫画と違って、転校させるワケにはいかないから、乗っ取った後も校内にいるのはどうも」

「アイツは顔出しで、江野のイジメ役を全面に出させる。大森も既にこの件には乗り気だ。寺田のバカはどうでもいいとして、林田、おまえはどうする?」

「頭の弱いカノジョ、欲しいっス!」

「そう、その活きだ」

実は少年院上りというのは話を盛ったものだが、確かに先導する大森に付いてくる五人の男子高校生は素行が悪かった。

しかしあと五人、彼らの仲間がいて、今回の出方次第で、この学校に追加投入される予定である。

その後乗り五人のうちに他9名を束ねるリーダーがいて、彼だけ、夜間部の年上だった。

彼は他9名にコードネームを付けた。

現在いる五人のみ紹介していく。


・デカゴン、大森と隣にいる17歳、武器に十角ヌンチャクを使うことから、そう命名された。

先発チームのリーダー的存在。

・ウォーターミル、そのヘクさんの後ろに付いてくる二人のうちの一人、16歳。

水車で修行した少林寺の使い手のため、そう呼ばれる。

特に特徴は無い。

・ラビリンス、そのヘクさんの後ろに付いてくる二人のうちの、もう一人、15歳。

自分は敵に催眠術をかけ、精神のみ第八次元の迷宮に送ることができると主張している。

その主張を否定するとキレる。

・ピグマリオン、皆の最後尾からついてくる、20歳。

留年が続いたために、この年齢で、しかも身長は180。

だがいつもミルク飲み人形を持ち、その人形を取り上げられるとキレる。

・タイム、皆とこれからの襲撃に備え、距離を取ってついてくる、18歳。

時間差攻撃の使い手で、この中の誰よりも強く、後発チームのリーダーも彼だけには恐れに近い感情を抱いている。


「大森さん、ここいら、いいトコっスね」

とデカゴンが云う。

「ええ、今度昼間に来て下さいよ」

と大森が答える。

「ドローンとかエアガンとか、オレらに扱えるんですかね」

「簡単ですよ。直ぐ慣れます」

大森は桜木と共に、この連中を実行部隊にしようと画作していた。

もし問題があらば、この下等な連中が善良な自分らをたぶらかしたと学校や警察に証言するつもりだ。

そしてその中には首謀者であり、スポンサーでありながら、近々顔出しで江野に続くスケープゴートになる予定の兼崎も入っている。

デカゴンたちの思惑は、駅前で自転車をパクったり、コンビニで万引きしたため、地元にいづらくなったから、遊び場を求めていたのだった。

後発隊のリーダーが、昔取った杵柄から、「ブルジョワの子弟から資本や動産を奪取し、自分たちの自由のために役立てるのだ!」と云ったので、話を付けてくれたその理論的指導者の言葉に乗り、こんな東京の城西地区まで、城北地区からやってきたのだった。

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