第41話 抱擁と計画と依頼 1
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月曜、洋二は又高校を休んだ。
土曜の夜に、自分の身体が〈作り物〉になったと知って、腹をくくった。
その後、数時間で、得られる情報を得て、自分のこの複製生体で可能な能力を全部試した。
なにしろ眠らなくてよい身体なのだから。
この時に編み出したのは、超常の力、具体的には、5メートル以上の跳躍力や秒速30フィートといった能力を活用する時は、普段のように意識せず複製生体を使うのではなく、例の病室内にある、傷ついた身体に戻り、そこで流体物質の上で、コクピット内にいるように操縦スタイルを取ることがそんな能力を十二分に使えると気づいた。
あれから用意したアクセサリーを最適化し、両手下にはその手用の小型キーボード-コンソールがある。
360度スクリーンに、大型ディスプレイと実にコクピット然としているが、小型化された自分の脳から繊維状のケーブルが出ており、それが複製生体のメインコンピューター(自立型AI-シンクエ・クレゼンサとほぼ同じもの)と直結しているため、そのような操作は必要ないのだが、洋二はまだまだこの現実が受け入れ難く、いや、実際に、彼は普通に暮らしていて、現実を複製生体で過ごし、瞬間、傷ついた身体に戻り、操縦席で運転するような状態に意識を移動させることをた易くできるようにしたのだが、このコクピットにいないと超常の力を発揮できないクセがついていた。
つまり複製生体という嘘の身体の時が洋二の現実の生活なので、それで能力を使おうとしても、心理的にストッパーがかかる。
そのためスーパージャンプやスーパーダッシュの際には実際の自分の身体、傷ついて・謎の力で縮小され・ほとんど動けず・時間さえもほぼ止まった身体に戻り、ロボットをコクピット内で操縦するように動かさないとそれらの能力は使い辛い。
例えば、昨日日曜に藍に会った際に洋二はドローンのレンズと右目を同期させて、レンズの見るものを右目でダイレクトで見られるようにしたシーンがあったと思うが、それは複製生体に脳で命じたのでなく、一度その脳内コクピット内に戻り(いや、絶えずそこにいるので、意識を移したというべきか)、コンソールを叩いて、同期させたのだ。
なにしろ、ベッドのようなトコの身体の半分くらい臥せていて、意識を変えれば、実際に歩いて・街を歩いたり、電車に乗っているので、それは現実を夢の中にするような体験であった。
ちなみに日曜の夜のに電車から藍のスマホに安奈と早苗のキャットファイト動画を送ったのは、その脳内コンソールでコクピットに戻ってやったことではない。
そのくらいだと例の爪や髪の毛を変化させて生成させるチップを差し込み、思念でそのように操作させる。
コクピットに乗りっ放し状態にすると、いちいち巨大ロボットを動かすようなものなので、運転気分であり、精神的に疲れるのだ。
その点、複製生体のトレースは完璧だと思われる。
だんだんコクピットモードと複製生体モードの差がなくなるような気が洋二にはしていた。
だが今のところはメリハリが欲しかった。それは等身大ヒーローの〈変身!〉の合図のようなもの。
洋二が複製生体から脳内コクピットに意識を移す両手を目の前で組んで、ぽきぽきと指の関節を鳴らすとそうなるようにしている。
逆に脳内コクピットから複製生体で送る日常に戻る時は、流体物質のベッド上で、首の骨の関節を鳴らすようにした。
これらの動作をしなくとも意識の移動は可能だが、こういうきっかけというか変身のサインがないとどちらが現実だから判らなくなるのではないかという、洋二としての予防策であった。
現在の洋二の権力は、一国の支配者や世界規模の巨大企業のCEOには遠いが、広域暴力団やテロリスト組織くらいの力はあるのだ。
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