異世界で宿屋経営をしていたらいつの間にか帝国一の冒険者ギルドになってました。
@kikikuki
1章
第1話
客が来ない。
俺はつい最近竣工した自身の宿屋の前に立って溜息をついた。
ようやく建物が完成し内装工事も終わって宿泊業を初めて一月がたったがいまだに客は一人も来ない。
それも仕方がないか…
俺は周囲を見渡す。
俺の住むこの街は大陸一の都市だ。
しかし、俺が宿屋を構えたのはその都市でも最も貧しい地域だ。
俺の宿の周囲には小汚い飯屋が一件あるくらいであとはあばら家が点在している。
こんな場所で商売をしようなんてのはよっぽどの偏屈野郎だろう。
俺の宿の様な安宿の利用者は旅人や巡礼者、冒険者と呼ばれる連中だが、主要施設から遠いこの場所に来るものなどいない。
本来ならもっと立地の良い場所に建てるつもりだった。
土地も押さえていた。
しかし、様々なトラブルがあり結局はこんな辺鄙な場所に我が城を構える事となった。
ほぼ捨て置かれたこの地域のお上に上納する土地代なんぞ極小なのでランニングコストは大したものではないがこれでは宿屋経営をする意味がない。
異世界に来てから10年。
日本に帰還する事を諦めてから5年。
この都市に来て宿屋業をする為に都市中央のホテルに丁稚として奉公を5年間。
日本に帰るという目的を失ってから生まれた宿の主になるという夢。
ようやくの始まった夢が早くも潰えようとしていた。
まあ、嘆いても仕方がない。
そろそろ日も落ちる。
街の中央部に行って仕事帰りの連中に客引きをしに行くか。
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破綻宿屋経営者の男が中央部に向かって進み始めた頃。
都市中央部の冒険者ギルドの受付にて騒ぎが起きていた。
「金の受け取りが出来ないとはどういう事だ!」
「違ェよ。受け取りが出来ないんじゃなくてそもそもまだ無いんだよ。」
受付で面倒くさそうに対応しているのはこのギルドの会計係だ。
対するのは体に傷と乾いた血の跡が目立つ女だ。
いや、それ以上に目立つのはスカート状の装備から垂れ下がっている細長い尻尾と頭から生えている先端が白い黒い角だろう。
観客は女の方に嫌悪の目線を向けており一見すると騒いでいる彼女に問題がありそうだ。
しかし、そうではない。
「の、納品依頼の報酬は納品から即時払いのはずだ!」
彼女は所々破れかけているボロい冊子を取り出す。
それは確かにこのギルドの紋章が記された公式の冒険者との契約項目が記されている。
会計係はそれを見て彼女を嘲る様に鼻で笑う。
「はっ!よく見ろ。しかし特別な場合を除くと書いているだろう。例えば買い手が付きづらく高額な品物は場合によっては取引が成立してこちらに金が入ってからの支払いになるんだよ。」
「クリスタルバタフライの翅は前にも納品したが即時払いだったぞ!それに買い手が付きづらい事はないだろう!高級美容オイルの素材として重宝されているはずだ!」
彼女はまた懐から小汚い小さなメモを取り出して反論する。
その言葉に会計係は面倒くさそうに舌打ちする。
実際、加工に手間が掛かるがクリスタルバタフライの翅は富裕層や貴族の間で美容品価値が高い美容品の素材となる。
会計係が支払いを遅らせる合理的理由はこの場においては無い。
「とにかく、支払いは遅れっから出直せ。今度はその獣臭い体を洗ってからな。」
「そんな馬鹿な話があるか!これは違法だ!秤に掛けるぞ!」
秤に掛ける、とはつまり司法に訴え今回の不当な対応を法の下で裁くという脅しだ。
彼女の行いは全うな物だ。
明らかに会計係の対応は契約違反であり、このギルドはこの都市の法律によって裁かれていくらかの罰金を取られ彼女には慰謝料が支払われるだろう。
そう、彼女が魔族でなければ。
彼女の脅し文句に会計係。いや、騒ぎを聞いていた他の者達も大声をあげて笑った。
「ははははは!くっくっくっ…」
「な、なにが可笑しい!お前の言っている事は明らかに…」
「そ、そりゃ、お、可笑しいだろ、いやいや、ぐっ、ふふ、ぎゃはははは!!まさかお前みたいな畜生がそんな事言うなんてな。ああ、いいぜ。是非、は、秤に掛けてくれよ、うっぷ、ひひひ。俺も見てみてぇよ、なあ、お前が間抜け面で人間様の神聖な法廷の場で立ってる姿をな、ひっひひひ…」
畜生。そう侮辱された彼女は顔を真っ赤にする。
思わず会計係に掴みかかろうとしたが大きな手が彼女の肩を掴んでその場から彼女を乱暴にどかした。
「そんな光景、あんたが100万回生まれ変わったとしても見れやしねぇよ、ザナーク。」
「何をする!まだ私の要件は…」
「うるせぇよ、野良犬。さっさと裁判所に行って来いよ。秤に掛けるんだろ?」
彼女をどかした冒険者は心底見下した目で彼女を一瞥するともう興味を失った様に会計係と話し始める。
その様子を見ていた他の者達も滑稽な彼女を嘲笑ったり、彼女をネタに馬鹿笑いを仲間内でするだけで誰一人彼女の側に立つ者はいない。
彼女は自身の滑稽さ、そして孤独から恥辱に震え、涙すら出そうになった。
しかし、それがただまた彼らの笑いのタネになるだけだと理解していたので唇を噛みしめて涙を耐えて無言で冒険者ギルドを出ていった。
彼女は魔族。
この人間の生活圏において彼女に人権はない。
いくら不当な扱いを受けようと彼女を助ける者などいないのだ。
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「お兄さん方、冒険帰りかい?疲れているだろう?今なら新規開店キャンペーンで一晩帝国銅貨3枚だ。それで暖かい飯と、あったかいお風呂が楽しめるよ。」
「ほー。やっすいな。悪くない。」
「ギルバット、変な客引きに構わないでよ。疲れているから早く休みたいんだけど」
「まあ、そう言うなって。宿はどこにあんだ?」
「ここからちょいと2、3時間歩いた所かな。」
「ふざけろ」
おそらく100人目の冒険者への客引きが失敗した俺は噴水前広場のベンチに座って溜息をつく。
辺りは暗くなり通りを歩く冒険者達も少なくなってきた。
ここから更に遅い時間に戻ってくる冒険者達こそ宿に困っている可能性があり客引きの大チャンスという前向きな考え方も出来るかもしれない。
しかし、一度実行してみた所、数も少ない上に宿の当てを出発前に決めており意味はなかった。
しかも衛兵に不審者としてしょっ引かれそうになって散々な目にあった。
うん、帰ろう。
今日はこれ以上粘っても意味はないだろう。
俺は腰を上げて帰る事にした。
うーん、一番のネックはやはり中央部からの距離か。
送迎用に馬でも買うか?
俺はふと足元を見る。
中央部から離れる程に路面状況が悪くなっていくこの道で快適な馬車の送迎が出来るだろうか。
地を踏まず、空を踏む馬も存在するが俺の今の資金では購入は不可能だろう。
「…ん?」
宿までの道中で道の端に誰かが倒れているのが見える。
もう俺の宿から近いこの地域は街灯もない。
至近距離に近づいてようやく倒れた人物の詳細が見えた。
服装からして冒険者だろう。
そして服からまろびでている尻尾が彼女が魔族である事を表していた。
「珍しいな…」
魔族は人間の生活圏まで出てくる事は滅多にない。
この世界の歴史はあまり詳しくないが俺の知る限りでは魔族と人族は明確に生活圏を分けており人の往来も非常に少ない。
この国も魔族と戦争しているわけではないが5年住んでいる俺でもこの街で魔族を見たのは数える程しかない。
なぜ彼女がこんな所で行き倒れているか不明だが彼女は冒険者でどうやら宿無しみたいで、丁度よく意識が無いみたいだ。
俺は彼女を抱き抱える。
「お客様一名ご来て~ん。」
こうして、俺はようやくお客様第一号を誘拐によって獲得する事が出来たのだった。
地面で寝るよりはマシだろう。
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客をようやく迎える事が出来た次の日の朝。
俺は宿のフロントの奥にあるキッチンで食事を作っていた。
俺の朝食はいつもクズ野菜で出汁を取ってブロック状に切った燻製肉を入れたスープとその時々で具を変えたサンドウィッチだ。
鼻歌を歌いながら我ながら手際よく作っていく。
この世界って割かし調味料とかも豊富で飯は美味いんだよなぁ
などと思っていると客室の方から大きな音がした。
もしかして寝具から落っこちたかと思いそちらに目を向ける。
手を洗い部屋に向かおうとしたがその前に客室の扉が開かれた。
「お~、起きたかい。おはよう。」
和やかに声を掛けたが彼女は気迫が籠った目をしながら俺を指さす。
「お前は何者だ!ここは何処だ!」
やっぱ誘拐的に客を連れてくるのは不味かったかな?
俺は少し後悔しながらも彼女を刺激しないようにより穏やかな声色にして彼女に説明する。
「俺はオオヤ。ここは俺の宿だよ。昨日夜中にあんたが道で倒れているのを見かけてね。地面で寝るよりはマシだろうと思ってここまで連れて来たんだ。」
「え…?」
彼女は周囲を見渡す、そして俺が言う通りここが宿屋である事を認識してくれたみたいだ。
そして彼女は明らかに怪しんだ風でこちらにまた問いかけてくる。
「つ、つまり助けてくれたって事か?」
「ん?ああ、まあそうかな。でも気にする必要はないよ。客が全然いなくて、部屋は余ってたんだ。」
信じられないといった顔で彼女は口を開けてポカンとしていた。
俺が右手を動かして風呂のある方を指さそうと動いただけで彼女は肩をビクつかせた。
「とりあえず、風呂に入ってきなよ。体が気持ち悪いだろう?サッパリしてきな。………あと腹は減ってるかい?」
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風呂からあがり、体を綺麗にした彼女は今フロント前にあるテーブルの一つに着席している。
俺はそのテーブルに料理を並べる。
「悪いね、大した物じゃないが…味は美味しいと思うよ。」
「あ、ありがとう…」
彼女は震えた手でスープを一口。
したかと思えば彼女は目を見開いて掻き込む様に食べ物を口に放り込み始めた。
当然そんな食べ方をすれば喉を詰まらせてせき込む。
「ほら、水。あまり急いで食べるもんじゃない。特に朝食はね。」
「ん、ぐぐぐ。す、すまない。」
「まあ、そんだけ気持ちよく食べて貰えたら作ったこっちも嬉しいけどね。」
彼女は顔を赤くして今度はゆっくりと食事をし始めた。
数分後、彼女は綺麗に食事を平らげた。
皿にはカス一つ残っていない。
「さて、落ち着いた所で聞きたい事があるんだけど…。詮索する様で悪いけど、なんで昨日あんな所に倒れていたんだ?君って冒険者だろ?」
「あ、ああ。実は…」
彼女の話はそれは酷い物だった。
冒険者ギルドに納品後に支払いを拒否されたそうだ。
路銀は多少それでも残っていたみたいで安宿を回って泊まれる所を探したが全て宿泊拒否された様だ。
そして、ある宿屋に宿泊拒否された時に言われた様だ。
この貧困地域にお前みたいな野良犬が寝るのに丁度良い犬小屋みたいな宿屋がある、と。
一縷の望みをかけてそちらに向けて歩いている途中に冒険の疲れもあって倒れこんでしまったとの事だった。
「酷い話だ…」
「…だが仕方があるまい。私は魔族なのだから。」
彼女は俺の同情に対して探る様な目つきをしながらそう言い放った。
「?、魔族だとそんな扱いされるのが当然なの?」
「ぬ、い、いや私自身はそうは思わないが、一般的には人間の支配地域では魔族の扱いは似たようなものだ。」
「ふーん、そうなのかい。いずれにしても酷い話な事には変わりはないけど。」
「と、というか私が魔族である事を知っていたのか。」
「ん?ああ、そりゃ尻尾が見えているからね。あまり見た事無いけど魔族の特徴ってのは把握している。」
「魔族と知ったうえで私を助けたのか?」
「ああ、そうだけど?なんかダメだった?」
俺の言葉に目を見開く彼女。
なんか不味かったのだろうか。
もしかして魔族の価値観では人に助けられるのは恥とかなのだろうか。
日本の漫画で培った魔族への偏見から考えるとありそうだ。
彼女は数秒押し黙った、そして急に涙を流し始めた。
えっ、涙流す程の恥辱だったのか?
「うわわ、ご、ごめん。助けちゃ不味かった?」
「違う!す、すまない。少し、待ってくれ。」
違うらしい。
俺はとりあえず皿をテーブルから回収してキッチンまで持っていく。
先ほどの話の通り彼女は昨日随分酷い扱いを受けたみたいだ。
精神的に弱っているのだろう。
彼女が落ち着くまで俺は皿を洗ったりする事にした。
「オオヤ。」
「おっ、落ち着いたかい?」
「う、うむ。すまない。見っともない所を見せた。」
「別に全然構わないさ。」
「朝食、とても美味しかった。それに暖かいお風呂もありがとう。………そしてスマン!」
彼女は頭を下げて両の掌をこちらに掲げた。
あまりの気迫に肩が跳ねる。
彼女の掌には銅貨が数十枚と銀貨が一枚あった。
「今、手持ちはこれだけしか無いんだ!だ、だが必ず足りない分はギルドから報酬を受け取ったら払いに戻ってくる!」
彼女は何を言っているのだろう。
というかこれだけのお金があって何処の宿屋にも泊まれなかったというのは本当だろうか。
俺は苦笑して彼女の掌から銅貨を3枚拝借した。
「毎度あり~、また来てよ」
「えっ…?」
「こんな安宿に銀貨が必要な訳ないでしょ?それに今は新規開店キャンペーン中だからね。銅貨3枚で十分だよ。それよりさ、ここって立地が悪いけどまた来てよ。サービスするからさ。」
「………」
「どぅわ!?」
彼女はまた、いや先ほど以上に涙を滂沱のごとく垂れ流し始めた。
泥等で汚れてしまった彼女が寝ていたベッドを洗濯するといって聞かない彼女に丁重に断りを何度もいれてようやく彼女を外まで見送れる所まで行った。
「ほ、本当にありがとう。この恩義は必ず返す。」
「君はちゃんとお金を払ったんだから、この宿の正式なお客さんなんだ。むしろこっちがありがとうございました、だよ。」
「それでもだ。」
彼女は背筋を伸ばしてこちらに向く。
「私の名前はナクティス・シャドウフレア。何か困った事があれば必ず言ってくれ。私の力は非力だが必ず助力させてもらう。」
「だから大げさだよ。でも気持ちはありがたく頂くよ。」
「う、うむ。あ…、それとこれを。」
「ん?」
彼女は懐から包みを取り出して渡してきた。
「これは?」
「マンティコアの毒針だ。」
「ええっ!?」
マンティコア。
人を喰らう凶悪なモンスターだ。
尻尾には毒針があり、その毒は人間をたやすく死に至らしめる。
遭遇する事も稀なモンスターだ。
「クリスタルバタフライを探している途中に遭遇した。小さな個体だったので何とか退ける事が出来た。その時に手に入れたんだ。」
「ほえー、君って凄い冒険者なんだねぇ。でもこんな貴重な物貰えないよ。」
「いや!貰ってくれ!今の私に渡せるのはこれぐらいだ。それに、前にそれを冒険者ギルドに納品したが値段が付かないと言われたんだ。」
値段が付かない?
マンティコアの毒針が?
単純に考えても武器の素材になるし、他にも使い道はあるはずだ。
加工や売り先に苦労はするかもしれないが値段がつかないとは信じられない。
俺は少し考えて受け取る事にした。
「そう?そう言うなら、ありがたく頂くよ。」
「ああ!是非活用してくれ!ギルドには値段がつかないと言われたが武器の素材になったり他にも色んな使い道が…」
「ああ、大丈夫知ってるよ」
「あ、ああ。そうか。う、うむ、では名残惜しいが迷惑だろうしそろそろ…」
「ナクティスさん。ナクティスさんが所属している冒険者ギルドって自由の盟約だったっけ?」
「えっ?ああ、そうだ…。所属というか私の相手をしてくれるギルドがそこしかないのだが…。それがどうかしたか?」
「…成程。いや、何でもないよ。ナクティスさん、またこの街に来た時は絶対に来てね。」
「あ………、ああ!勿論だ!ぜっっっっったいに来る!」
「凄い気迫だ…」
俺は彼女が視界から消えるまで見送った。
時折、後ろを振り向くので手を振るとブンブンと振り替えしてくれてなんだが微笑ましかった。
軽く伸びをして宿の中に戻り、初めて宿屋業で稼いだ金を、たった銅貨3枚だが金庫に閉まった。
【自宅警備スキルが派生し自宅運営スキルを獲得しました。】
「ん?」
頭の中で謎のアナウンスがした。
いや、これはこちらの世界に来た時に同じものを聞いた覚えがあるな。
自宅警備スキル。
馬鹿みたいな名前だがこの世界でお世話になったかなり強力なスキルだ。
もしかして、初めてのお客さんを獲得した経験で派生したのか?
まあ、スキルの確認は後で良いだろう。
俺は彼女から受け取ったマンティコアの毒針を一瞥する。
彼女が所属する自由の盟約という冒険者ギルドは大陸中に拠点がある巨大なギルドだ。
犯罪者だろうが異教徒だろうが誰でも歓迎するスタイルで大きくなったギルド。
所属するハードルが低いので所属している冒険者の数は大陸一だ。
お行儀が良くないギルドと言えるが商売において重要なのは信頼関係だ。
本来なら彼女が不当な扱いを目立つ形でされるのは考えづらいが…。
「魔族、か…」
俺はマンティコアの毒針を持って外に出かける準備をした。
そして俺がこの後する選択が俺の人生を大幅に変える事となった。
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【ナクティス視点】
「オオヤ…」
彼と別れてから2時間たったが彼とのひと時を思い出してつい彼の名前をつぶやいてしまう。
隣に座っている老婆がジロリとこちらを睨む。
私は体を縮こませる。
今、私は乗り合いの馬車に乗っていた。
離れていく都市を眺める。
私の住居は都市から高速馬車で半日程走った町にある。
私はお金等など様々な問題があり都市に住む事は出来ない。
一番の理由は魔族だからだ。
だからこうして馬車に乗って都市に月に数度行って冒険者としてお金を稼いでいる。
私はあの時、オオヤに私の手持ちを全て提示した。
この馬車に乗る為の絶対に使ってはいけない銀貨も含めて。
私は彼に私に出来る最大級の感謝を示したかったのだ。
しかし、彼は私の掌から相場から考えても法外に安い銅貨3枚しか受け取らなかった。
私が魔界では暮らしていけなくなって、人間界に来てもう8年になる。
そしてあんなに暖かい対応をされたのは初めての経験だった。
思わず感情があふれ出て涙を流してしまった。
彼はまた来てくれと私に言ってくれた。
その事を思い出すだけ胸の内から出てくるぽかぽかとした熱が全身まで伝達する。
私は内心苦笑する。
家にいる仲間達に良い報告を出来ない散々な結果だったにも関わらず私の心は満たさていた。
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