あの夏に戻れたら

クライングフリーマン

あの夏に戻れたら

 あの夏に戻れたら

 そんなことは無理。絶対出来ない。

 そんなことは分かっているが、何百回思っただろう。

 私の高校の母校は、母と同じだ。

 母の実家からも遠くない。

 時々、学校帰りに、母の実家に行き、泊まった。

 大好きな従姉に会いたくて。

 従姉の部屋。

 町内の盆踊りの打ち合わせとかで、従姉は遅く帰ってきた。

 私は、浴衣に着替えて、じっと待っていた。

 少し、従姉と話をして、従姉はさっさと寝た。

 何時間だったろうか?

 寝返り打つ従姉の脚が露わになった。

「誘っている」。何となく感じたが、どうしていいか分からない。

 夜明け近くまで悶々とした。股〇のうずきは収まらなかったからだ。

 目覚めた時。従姉はもういなかった。

 最初で最後で最高のシーンで、しくじった。

 私はただ、従姉の側に行けば良かったのだ。

 そうすれば、もっと早く『大人』になれたのに。

 もう、従姉はいない。その後、結婚して3人の子供を産み、教師のまま殉職した。

 早死にしたのだ。悲しみは、長く続いた。

 あの夜のことを、「笑い話」にして語るのは、あの世に行ってからだろう。

 心筋梗塞で生死を彷徨っていた時、従姉は現れた。

 まだ、その川を渡ってはいけない。帰りなさい。必死に叫ぶ従姉の言葉は聞こえなかったが、心にそう感じた。

 死後の世界ではなく夢だろう、と人は言う。

 それでも構わない。私は、従姉に素直に従った。

 4つ違いのおねえちゃんは、死ぬまで「おねえちゃん」だ。

 下の名前で呼び、おねえちゃんとは呼んでいなかったが、私には永遠におねえちゃんだ。

 ―完―

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あの夏に戻れたら クライングフリーマン @dansan01

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