第38話

「あ、里美さん休憩の時間じゃない?」


絵里に言われて時計を見るともうお昼を回っていた。


「じゃ、先に休憩入ってってくるね」


里美は透明のビニールバックを片手に、店を出た。


店内を移動する時は、所定の透明バック以外は禁止されていた。


従業員が物を盗むケースがあるからだ。


退社時は、出口で持ち物検査も行われ、厳しくチェックされる。


里美は従業員通路に繋がる扉を開け、エレベータに乗り込んだ。


休憩所と社員食堂は5階にある。


社員食堂は100席はあるかというほど広く、メニューのほとんどが500円でお釣が来るリーズナブルさだ。


日替わりCランチを注文して席につく。


――リクに電話しといた方がいいかな?


今朝ラブゲージは45に減っていた。


ダウンロードした時は、50からのスタートだった。


昨日までは仕事を休んでいたので、そこそこリクの相手をすることができたが、今日からは仕事中はかまうことができない。


里美は透明バックをあさる。


携帯電話が見当たらない。


どうやらレジの下に忘れてきたらしい。


取りに戻るのも面倒くさいので、里美はそのまま昼食を取り、少し早めに店に戻った。


レジの下から携帯電話を取り出し、トイレに向かう。


個室に入り、すぐさま携帯電話を開く。


開いた画面に――リクの姿はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る