第25話

妹の姿が見えなくなるのを、はやる気持ちを抑えつつ見送る。


肩を落とし、背中は小刻みに揺れていた。


妹の涙が枯れることはないだろう。


高校生の妹が、大人になり、就職した時も、結婚した時も、年老いておばあちゃんになった時も、ずっと真由美の死は事実として付きまとうのだ。


妹の姿が、斎場へ消え入ったのを確認すると、里美はすぐさま握っていた携帯電話を開いた。


真由美好みの男だった。


色白の甘いマスク。黒髪はワックスで綺麗に整えられていた。


「ちょっと! どういうことよ!」


携帯電話の液晶画面に向かって、大声で怒鳴り散らした。


「ここじゃ、ちょっとまずいんじゃない……」


由香に袖を引っ張られ我に帰ると、周囲にいた人たちに、里美はジロリと睨みつけられていた。


斎場入口には真由美を含む3人の名前が書かれている。


別のお通夜に参列した人たちのようだ。


里美は慌てて携帯電話を閉じようとした。


その時、妙な違和感を覚えた。


再び携帯電話を開く。


携帯彼氏はぴくりとも動かない。


「どうして」


里美は由香に携帯電話を渡した。

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