第14話

「はあ、大変だった・・・・」

「そなたには心底同情する。」

 コルの方を見ると、確かに同情の目で見ていた。あれから、越境のための申請をしていたが、役所の方が話を聞かないし、密輸を取り締まる人の態度がひどいし、女性二人は窮屈だと言ってるしで大変だった。そして、コルはほとんど手伝ってくれなかった。本当に、もうちょっと越境関係をしっかりしてくれ!って思ったし、頭を攻撃されていないのに頭痛がひどかった。あと、日本が恋しくなった。

「同情するなら次は手伝ってくれ。」

「すまん、女性二人をなだめるのに忙しくて・・・・」

「・・・・結局人手が足りないな。」

 俺は疲れているし、多分コルも疲れている。おかげで二人そろってため息が出てしまった。

「それにしても、今はアドリア様が平民の服を着ているが、いい服を着ているときよりアドリア様の目が輝いて見える気がする。」

「まあ、お転婆みたいだからな。」

 ここ数日会話して思ったことがある。もしかしてアドリアは死ぬことを知っているのではないか、という仮説だ。そうなると、アドリアは未来が見える能力があることになるが、どうなのだろうか?判明していないことは多い。

「明日には出発するが、コルはどうするんだ?」

「どうする、とは?」

「アドリアをレアルタに戻す選択肢もあるだろう。コルはついていくのか?」

「アドリア様が行く場所にはついていきますとも。」

「わかった。この道は過酷だが、本当にいいんだな?」

「このコルラード・ベギスには心の揺るぎなどありませぬ!」

「ならわかった。」

 野営などには慣れていなさそうなコルには一応忠告しておいた。ただ、この忠誠心なら本当に地獄の果てまでついてきそうだから大丈夫そうだ。それと、次に越境するときはしっかり手伝ってもらわねば。

 俺はコルをまっすぐ見た。ボトルグリーンでスパイラルマッシュの髪にフォググレーの瞳が印象的な顔だ。

「どうした?俺の顔に何かついてるか?」

「いや、何も。それより、寝るぞ。」

「おう。」

 明日には出発だ。ついに国を出る。冒険ができるという高揚感であまり寝れなかった。


「おはよう!」

「おはよう。出発するぞ。」

「わかったわ!」

「じゃあ、一言掛け声でも。行くぞ!」

「「おー!」」

「お、おー。」

 コルさんが若干置いてけぼりだが、越境はすることにした。


 越境するときには馬車に乗っていくのだが、ある意味当然こちら側に行くために馬車に乗っている人もいる。そう、この男女のように。

「マーラ、着替えは忘れてないよな?」

「え?どうかな・・・・あ、あった!」

「やっぱりか。」

 盗み聞きしておいてなんだけど、着替えを忘れることってある?もしかして天然な人?あと、やっぱりって言ってるってことは忘れることを予測してたってこと?意味がわからない。

「すみません、時間がかかってしまって。」

「あ、大丈夫です。」

「・・・・イケメン」

「「「「???」」」」

「ああ、それはよかったな。」

「「「「?????」」」」

 ちょっと何言ってるかわからない。イケメンって言ってるけど、なんでその一言だけなのか、相槌にしか聞こえない一言もただただ意味がわからない。この男女は誰なのだろうか?どういうこと?

「あ、準備できましたよ。」

 入れ替わりで俺たちも入ったら越境許可証明書が床に落ちていた。多分困ると思うので拾って男性の方に渡す。

「すみません、これ忘れてますよ。」

「あ、ありがとうございます。妻が持っていたのですが、落としてしまったようで・・・・」

「・・・・・・・・」

 こんな重要な書類をしまっておかないとかそういうことってある?とりあえず乗ることにした。

「とりあえず数時間はかかるらしいから、景色を楽しんだりしよう。」

「うん!」

 他の人も全員乗ったので馬車が動き出した。ちなみに、景色を見ているだけでかなり楽しむことができたが、他の人がどうだったかは記憶にない。

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