第一章・復讐の始まり

ソグノにて

第1話

「そろそろ旅に出たらどうだ?」

「師匠、いいんですか?」

「ああ、そろそろ教えることも少なくなってきたからな。」

「よっしゃー!」

 俺はオスカル・アルバネーゼ。今年20歳になった。5歳のあの日から今日この瞬間まで師匠からみっちり剣術を教わっており、今ようやく冒険者として旅立つことができることになった。

 小さいころから立派な冒険者になることが夢で、その夢を親に語りまくっていたら、母親に”もうお師匠様に弟子入りしちゃったら”という意味の言葉を言われ、そのまま師匠に弟子入りした。両親とはしばらく会っていないが、どうでもいい。

 ようやく冒険者になれる。そんな感情でいっぱいだった。

「じゃあ、紹介所に行こう。」

「わかった!」

 紹介所とは、冒険をしたいが一人ではできない冒険者同士が集まる場所だ。冒険を始めたいと思ったら、まず紹介所に行ってパーティーを組むところから始める。

 ついに始まる冒険に心が躍った。


 今は師匠がおらず、15年ぶりのおひとり様だ。

「どんな方をお探しでしょうか?」

「ヒーラーを探している。」

 俺は回復魔法を使えないので、一番必要なのはヒーラーだ。他はまだなんとかなる。ちなみにヒーラーは”需要”が多く”供給”がちょっと少ないので、見つかるかはわからない。

「ヒーラーでしたら候補が1人います。」

「見せてくれ。」

 ちなみに紹介所に登録するときには”戦闘タイプ”や”募集している戦闘タイプ”、”どれぐらいの強さか”などを書いておく必要がある。俺もさっき登録した。一人しかいないのは不安だが、とりあえず見てみることにした。

 名前はテクラ・タヴァーノで、戦闘タイプは探している通りヒーラー。強さも同じぐらい、バフデバフもできるようだ。性別は女性。正直、女性と冒険するのは避けたかったのだが、仕方ない。彼女ほど適任の人はいないようだ。

「この人に連絡を取ってくれないか?」

「わかりました。」

 まあ、連絡の方法が”次に紹介所に来たときに伝える”ということだから、数日はかかるだろうが、人間に限らず大抵の生き物はパーティーの人がそろうまで毎日来るだろう。どれぐらい時間がかかるかわからないが。

 手数料のお金を払ってとりあえず帰ることにした。


 今後のことを考えながら帰り道を歩いていた。なのに、どうしてこうなったのだろうか。

 襲われているわけではない。いや、襲われているわけではないからこそ不気味か。今、この町の近くにはいない種類のモンスターに穴が開くほど見られている。そして、何かのスキルを使われているが、何も危害がない。これ、どうすればいいんだ?

 とりあえず走って帰ることにした。明らかに俺よりモンスターの方が強いし、触らぬ神には祟られないし、少なくともヒーラーが仲間になってから片づけたい。


 次の日にまた紹介所に来てみた。

「連絡の返事が来ました。」

「聞かせてくれ。」

「”ぜひ会わせてください”だそうで。それで、2日と5日と9日が予定が空いているそうですが、予定が空いている日はありますか?」

「じゃあ、2日にここの紹介所で待っていると伝えてくれ。」

 そういいながら妙だと思う。普通、予定を伝えるときに日付の候補は1つだ。3つも伝えるということは、よほどこの出会いを逃したくないように感じる。それに、テクラという女性の強さを考えるとそれなりに仕事ももらえるぐらいだ。パーティーの加入に焦る必要はない。

「この女性は、なんでここの紹介所にいるんだ?」

「タヴァーノさんって、ずっとパーティー加入の誘いを断っているんですよね。」

 なぜ、誘いをずっと断っているのだろうか。謎は深まるばかりだ。まるで特定の誰かを狙っているようだが、狙われるようなことをした覚えはない。

 疑問に思いながら紹介料を払った。


 2日に紹介所で待っていたら、女性が来た。多分この人がタヴァーノだろう。

「タヴァーノか?」

「はい、テクラ・タヴァーノです。どうぞお見知りおきを。」

 思わず立ち尽くしてしまう。頭に大量の情報が浮かんでくる。何の情報かを頭の中で必死に整理していた。

 これは俺の前世の記憶。前世で俺はここでいう異世界人だった。そう、向こう・・・・現代日本にとっての異世界転生が起こってここにいる。タヴァーノの前で少しづつ、前世の記憶を整理していた。

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