覗き魔、異世界転生する~スキルに『覗く』があるんですけどもう心変わりしたんです!~
えちょま
第1話 覗き魔、異世界転生する
「さて、今日も人類の神秘を見にいざ行かん!」
そう自分を奮しながら、俺こと
俺はその間にもバレるかもしれないというスリルを味わいながらよじ登る。
俺は磨かれた壁登りスキルで滑りやすいタイルで出来た壁を順調に登っていき、縁に手を掛けた。
「さてさて、今日はどんな秘境が待ちわびt───」
その瞬間、男風呂の入口がガラガラッと勢いよく音を立てて開けられた。俺は縁に手を掛けたまま入口に振り返る。そこには1人の青年がこちらを睨みながら立っていた。如何にも正義の塊のような青年だった。
「そこの男!そんな所で何してやがる!早く降りてこい!」
おかしいな……この時間帯はあまり男風呂には入ってこないはずなんだが。そんな事を考えていると、青年はこちらに向かってき俺の両足を掴んだ。
「ちょ、おい離せ」
「うるさい!早くそこから降りてこい犯罪者!」
「犯罪なんて事分かってこっちはやってんだ。早く離せよヒーロー気取り」
俺は足をバタつかせながら、青年に少々棘のある言葉を投げ掛ける。
というか今の俺の体勢、非常に危ないのをこいつは分かって俺の足を掴んでんのか?
右手は縁に、左手は滑りやすいタイルの隙間に少々引っかかっているくらい……両足は青年に掴まれて宙に浮いてる。それにここから床まで結構な高さだ。落ちたらただじゃ済まないだろう。
多分、目の前の悪事のことしか眼中に無いのかもしれない。俺も痛い思いはしたくないし、このまま素直に降りて警察に捕まるかね……これまでの覗きの償いとして。
決意の固まった俺は、青年に声を掛けた。
「おいヒーロー気取り、手を離せ。ここから降りるから、早く」
「いや、俺は騙されないぞ!そう言って逃げるつもりだろ!絶対にそんなことはさせない!知らない内に男に裸を見られた女性達の為に!」
更に俺を引き摺り降す力を強める青年に、少しイライラし始める。ちっ、こいつ話が通じねぇ……まぁ、少しこいつが落ち着くのを待ってからにするk───
「早く降りてッ!こい!」
「あ」
勢いを付けて、青年は俺の足を引っ張った。その反動で俺の縁に掛けられていた手はずれ落ち、俺は床に向かって頭から真っ逆さまに落ちる。
床に頭から着地する瞬間、首から嫌な音が鳴った。頚椎が折れたのだ。数秒の内に俺の意識は刈り取られ、意識は深い闇に落ちていった。
「はずだったんだけどな。で、アンタは誰だ?」
俺は目の前にいる女に話しかける。キトンのような服を身に付け、この世の者とは思えない美しすぎる顔に豊満な肉体。片手には何やら分厚い本を持っており、正に女神といった感じだった。
「こんにちは刀坂來須さん。私は女神というものです」
「当たりかよ……まぁいいや、こんにちは女神サマ。で、どうして俺はこんな空間にいる訳?」
俺は辺りを見回しながら女神サマに質問する。
何も置かれていない真っ白な空間。ここが天国ってやつか?じいちゃんが天国は綺麗じゃぞーとか言ってたけど、ただ殺風景なだけじゃん。
「いえ、ここは天国ではありません。『審判の間』と呼ばれる場所です。天国は別にあり、ここでは生前の行いを清算し、次の生…つまり転生で、どんな待遇で生きるのかを決めるのです」
「へぇ、そりゃすげえな。……でも俺にとっちゃ最悪だな。で俺の結果は?」
清算の中には俺の覗きも入っていることだろうし、待遇にはあまり期待できない。忘れている善行を含めても、良くなるかどうか……
俺はドキドキと、スリルを感じながら結果を女神サマに聞く。
自分の生き方を決められるという、覗きとは比べもにならない程のスリルを感じた俺は、次の生の事なんてどうでも良くなっていた。
俺は女神サマの言葉を唯ひたすらに待っていた。そして、女神サマが口を開く。
「刀坂來須、貴方の次の生が下された。17年間の行いを清算した結果は……無罪。普通の生を授ける…だそうです」
「ッ?!……いやいや、俺は女風呂を覗いてたんだぞ?それって普通に悪事なんじゃ……」
俺は予想外の答えに狼狽えた。そう、俺が犯した覗きという犯罪行為は、覗かれた女の子達に精神的苦痛を与えたかもしれないのだ。
なのに何故……?
困惑している俺を落ち着かせるように、女神サマは答えた。
「私よりも上位の存在、審判を下す神が言ったのです。『男の子ならそういう時期もあるもんねー!それとこれまでの人生でまぁまぁいいことしてるし無罪だよ!貴族とかには出来ないけどね!』、と」
「…………」
ウンザリしたような表情をしながら、女神サマは伝えてくれた。
これまた予想外。それでいいのか神よと思ってしまった。いやありがたいはありがたいんだけどぉ……
ぐおぉっと覗きに対する罪悪感を抱えながら頭を抱えている俺に対し、心配そうに女神サマが声を掛けてくる。
「ま、まぁ。罪悪感を感じることはいい事です。特に被害も出ていなかったようですし……兎に角、貴方は普通の生を送れます。これからの生を頑張って下さい!」
「……分かった。で、俺はいつ転生するんだ?自分のタイミングか?」
「そうですね。貴方が転生する覚悟が決まったタイミングで大丈夫です。あ、まだ出来そうにないならお茶でもして勇気でも付けますか?」
どこからともなくテーブルと椅子を用意し、女神サマは俺に微笑む。もう覚悟は出来ているので、美女からの有難いお誘いをお断りして、心の中で念じた。
(俺は、転生する!)
そう念じた瞬間に、俺の意識は遠のいていくのだった。
-----------
えちょまです。
久しぶりに書いたから少しおかしいところがあるかも……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます