演者

夜桜夕凪

第1話

 寸暇であっても賑わう教室。出席番号順の座席が崩れて久しいこの頃。クラスのグループも固定されていた。

 その中で独り、活字を追う生徒がいた。


 花宵翼はなよいつばさ

 ここ数ヶ月、誰かと仲良くしているところは見たことがない。会話も事務的な、感情を挟まないものばかり。無機質、機械のように感じる者さえいる始末。授業で指名されることがなければ、一日に出す声は二十音あるか否か、と言われている。

 そんな彼女とこの度日直を組むことになったのは桜葉快翔おうばかいと

「よろしくな」

「ん」

 HRホームルームの終わりに行われた席替え。快翔には労いの視線が集中した。対する翼はいないものと扱うように帰りの身支度を始める。そして誰も彼女が教室を出たことに気づかなかった。

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